放送研究と調査(月報) - 目次

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

放送界の動き

英BBCトラスト,執行部に盗聴事件報道自粛を要請か

イギリスの公共放送BBCを監督するBBCトラスト会長は11月13日に,マスコミ編集人協会の年次大会で講演し,「公共資金で運営される放送事業者として,我々にはことのほか慎重に報道すべき領域がある。また,新聞やオンライン・ジャーナリズムにとっては適切な方向であっても,それにならうことに躊躇すべき分野さえある」と述べ,キャメロン首相が委託した電話盗聴事件調査委員会開始を前に,BBCの報道に自粛を求めたと受け止められる意見を述べた。なお,BBCのインターネットのニュースサイトで「電話盗聴事件(Phone Hacking Scandal)」の特集面は第1面から後退している。

英メディア調査委員会 聴聞会始まる

英大衆紙の盗聴事件の解明を進めるため,関係者から話を聞く聴聞会が11月14日に始まった。キャメロン首相が設置したレベソン委員会が行っているもので,初日には,ニューズ・オブ・ザ・ワールド紙(7月廃刊)を中心に,少なくとも28人の記者が盗聴に関わっていたことが明らかにされた。委員会では,連日,少女殺人事件の遺族や人気俳優,作家など盗聴の被害者を呼んで話を聞いており,こうした証言がメディア規制にどうつながるのか警戒する声も出ている。

英Ofcom,Press TVに罰金10万ポンドを科す

イギリスの放送通信分野を規制監督するOfcom(Office of Communications)は12月1日,イラン政府が運営する国際ニュースチャンネルのPress TVに対し,番組ガイドライン違反により10万ポンド(約1,180万円)の罰金を命じた。Press TVは,2009年7月にNewsweek記者のバハリ氏の獄中インタビューを放送したが,この報道は記者の同意を得たものではなく,記者が覆すことのできない環境で行われたもので公正さに欠けると判断した。

仏ラジオ国際放送,合併反対でスト

フランスの公共放送で,ラジオ国際放送を行っているRFIの労働組合は, テレビ国際放送のFrance24との合併に反対して11月28日午前0時から無期限のストライキに突入した。政府はフランスの国際放送を統括するAEF(フランス海外放送会社)のもとに,2011年12月中にAEF傘下にあるRFI とFrance24を組織統合する方針だ。これに対してRFIの労働組合は,「合併によってラジオ国際放送の編集権が失われるばかりか,財源難のテレビ国際放送の財源を確保するためのラジオの死につながる」と反発している。

独地上アナログラジオ放送2025年まで継続

ドイツの下院にあたる連邦議会は10月27日,電気通信法の改正を可決した。2004年に成立した現行の電気通信法の規定では,地上ラジオ放送の完全デジタル化を見込み,2015年までにアナログのFMラジオ放送用の周波数割り当てを廃止するとされていた。しかし,ラジオ放送のデジタル化が進んでいないことから,今回の改正で,FMラジオ放送の周波数割り当ては2025年まで延長できることになった。またラジオ放送事業者は,2016年から送信業務を行う事業者を自由に選べることになった。この後,法案は連邦参議院(上院)で審議される。

伊Mediaset,デジタルで24時間ニュースを開始

イタリアの大手民放Mediasetは11月28日,新規の無料ニュース専門チャンネル「TgCom24」を開始した。TgCom24は,地上デジタル,無料衛星プラットフォームTivùSat,インターネットでストリーミングされるほか,タブレット型端末やスマートフォン向けの専用アプリ経由でも視聴できる。

伊RAI経営委員会が8,500万ユーロの特別削減案を承認

公共放送RAIの経営委員会は11月28日, 約8,500万ユーロ(約88億円)にのぼる特別予算削減案を承認した。この削減案はRAIの「2012~2014年3か年事業計画」の一環として組み込まれ,今年5月に決定した約7,000万ユーロ(約73億円)の予算削減案と合わせて実行する。今回の削減案では,現在15か所あるRAIの海外支局を9か所程度へ減らすほか,国際放送「Raitalia」の制作費縮小,非運用の不動産の売却などが含まれている。