放送研究と調査(月報) - 目次

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

放送界の動き

英新聞界,マードックのBSkyB買収に反対

イギリスの日刊紙Daily Telegraph やthe Guardianなど新聞界の代表らが10月11日,ルパート・マードック氏が所有するNews Corporationによる衛星放送BSkyBの完全買収計画に反対する連名の書面をビジネス・イノベーション相のヴィンセント・ケーブル宛に送った。これには,新聞界だけでなく公共放送のBBC会長や通信事業者のBT社長らも名前を連ねた。この買収によって,マードック氏はイギリスの新聞・出版・テレビの支配権を確立し,民主的な議論を損なうおそれがあると訴えている。一方マードック氏は,競争問題を扱うEUの欧州委員会に対し,11月3日正式に BSkyB買収の審査を申請した。

英BBC,経費削減方針で執行役員会を縮小

イギリスの公共放送BBCの執行役員会会長マーク・トンプソン氏は10月13日,執行役員会の役員数の削減を発表した。これまで執行役員の数は10人だったが,2011年4月以降,副会長および広報・マーケティング局長,人事局長の3つのポストが削減され7人に減少する。また,管理職数も2011年末までに18%削減することも決まっている。執行役員と上級管理職の給与は2009年1月から凍結されており,執行役員の給与凍結は2013年8月まで継続される。

フランス24,24時間アラビア語放送開始

フランスの公共放送で,2006年から国際放送を行っているフランス24は,中東・北アフリカ向けのアラビア語放送を,10月12日から24時間放送に拡大した。放送は,ホットバード,アラブサット,ナイルサットの3つの衛星を使って行われ,カバーエリアではおよそ3億人が視聴可能だという。ドバイで会見したフランス24のアラン・ド・プージラック社長は「アングロ

サクソンの競争相手(BBCやCNN)とは違った,フランス的な視野で,多様な意見を伝えたい」と抱負を述べた。

独各州首相,受信料制度改革の最終法案で合意

ドイツ各州は今年6月,受信料制度改革の方針で合意し,放送受信機の所有に関わらず,全世帯一律に支払い義務を課す「放送負担金」制度を導入する方針を決めていたが,各州首相は10月21日,これまでの草案に若干の修正を加えた最終法案で合意をした。主な修正点は,19名以下の従業員をもつ事業所の負担額を下げたこと,また,営業用の自動車の1台目は免除としたことである。
これまで経済界から,中小企業の負担が大きすぎるという批判があがっていた。法案は,12月に正式な調印が行われた後,各州議会の批准をまって,2013年1月に発効する予定である。

伊RAI,2012年末に赤字額急増で社屋売却も

イタリアの新聞大手「Corriere della Sera」は,10月20日付けで,公共放送RAIの経営が危機的な状況にあると報じた。同紙によると,RAIの赤字額は2010年末で約1億2,000 万ユーロ(約132億円)程度と見込まれるが,今後2年で急激に拡大し,2012年末には約6億ユーロ(約660億円)となって,資本金の5億5,000 万ユーロ(約605億円)を上回る。そのため,銀行などの信用機関からの借り入れが不可能となる。現在RAIの執行部は,来年以降の事業計画の策定会議を重ねており,その中には,ローマの本部社屋や放送設備などの大規模な不動産売却案や全職員の約1割に当たる1,000人規模の人員削減案なども含まれているという。

スペイン,通信事業者への課税をめぐるEC決定に反論

EC(欧州委員会)は,9月30日,スペインの公共放送の広告廃止に伴う財源補てん策としてスペイン政府が通信事業者に課している新税について,EU規則に違反するという決定を下したが,これに対して,スペインのモラティノス外相は,「課税対象の通信事業者は,放送サービスも行っている事業者のみで,すべての通信事業者ではない」として,他業種の事業者への課税を禁じたEU規則には違反していないと述べた。スペインでは,今年の1月から公共放送RTVEの広告が廃止されており,すでに,商業放送事業者と通信事業者から今年上半期分として,総額1億2,800万ユーロ(約143億円)が支払われている。