放送研究と調査(月報) - 目次

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

放送界の動き

中国,元幹部の長老らが言論の自由主張

中国共産党の元幹部で改革派の長老達が10月12日,検閲や出版統制の廃止を求める公開書簡を インターネットで発表した。

これは毛沢東の元秘書で党組織部副部長を務めた李鋭氏や中国共産党の機関紙「人民日報」の胡績偉元社長ら高齢の長老23人が連名で全国人民代表大会に宛てた書簡で,党や政府の細則により出版や言論の自由を保障した憲法第35条が空文化していることについて,「世界の民主主義史上の醜聞だ」などと批判している。そして,現在党中央宣伝部が担当している,「メディア統括」の機関を廃止することや,中国全域での自由な取材・報道の容認,ネット上のサイトや書き込みの削除禁止などを要望している。

また,10月14日には中国共産主義青年団の機関紙「中国青年報」や南方グループ系の「新京報」など9紙が政治改革を求める記事を掲載するなど,当局の報道締め付けの中で改革を求める声も高まっている。

台湾の旺旺グループ,大手ケーブル買収へ

台湾の中国テレビや中天テレビを経営する食品事業者の旺旺グループが10月26日,ケーブルテレビ大手の中嘉網路を買収する契約を交わしたことを明らかにした。旺旺グループは2008年11月,経営状態が悪化していた中国時報グループから,中国時報・中国テレビ・中天テレビなどの各メディアの経営権を一括して譲り受け,メディア事業進出を本格化させていた。これに対し有識者の間からは,メディア事業の経験を持たない旺旺グループが大手の新聞とテレビについてクロスメディア所有を行うことに懸念の声も出ていた。今回旺旺グループが,ケーブルテレビの普及率が85%に達すると言われる台湾でのケーブルインフラ事業に手を伸ばしたことで,「言論集中化」への批判がさらに高まることも予想され,買収事案を審査するNCC(国家通信放送委員会)の対応が注目されている。

韓国,「青少年視聴保護時間帯」を拡大

韓国では有害な放送から青少年を守るための「青少年視聴保護時間帯」が10月1日から拡大された。これは,扇情的なシーンや暴力シーンなどから青少年を保護するための「青少年保護法施行令改正案」の決定を受けて施行されたものである。これによって従来,平日13時から22時まで運営されてきた同時間帯は,平日7時から9時までと13時から22時までに,また土・日・祝日と学校の休み期間中は7時から22時までに拡大された。

インド,Videocon d2hの加入件数200万を突破

インドの有料衛星放送としては6 番目で最後発のVideocon d2h が,10月28日,加入件数200万突破を明らかにした。インドでは衛星放送への加入が急速に進み,10月末現在の加入件数は,最先発Dish TVが860万,6社全体で2,600万に達している。

エジプト,Nilesatが12衛星chの伝送停止

エジプト情報省は10月19日,放送免許違反を理由に商業衛星テレビ12チャンネルの伝送停止を衛星運営会社Nilesatに命じた。情報省は違反の内容として,宗教の侮辱,狂信的騒乱の扇動,ポルノ放送,無認可医療品の販売促進などを挙げている。処分を受けたチャンネルには宗教(イスラム)チャンネルが多く含まれているが,11月末には議会選挙が予定されていることから,イスラム社会の復興を目指す「ムスリム同胞団」などの動きを封じ込めるのが狙いとの観測もある。ムスリム同胞団は前回選挙で躍進し,今回も候補を多数擁立している。

モロッコ,アルジャジーラの活動を停止

モロッコ通信省は,10月29日,「無責任な報道でモロッコのイメージを歪め,領土保全問題をはじめ国益を損ねた」として,カタールを拠点とする衛星チャンネル「アルジャジーラ」の活動停止と同局職員の取材資格取り消しを発表した。領有権で紛争が続く西サハラをめぐるアルジャジーラの報道が当局を刺激したと見られている。これまでにも同局は,自国メディアを統制下においている中東や北アフリカの国々とたびたび摩擦を起こし,制裁措置を受けている。