放送研究と調査(月報) - 目次

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

放送界の動き

韓国,KBSが2009年度の経営評価報告書を発表

KBS の理事会は5月29日,KBSに関する「2009事業年度経営評価報告書」を発表した。この報告書はKBSの理事会が,放送法第49 条第1項第6号に基づき,毎年専門チームを作ってまとめているものである。報告書は,KBS の放送するニュース番組の視聴者品質評価指数の平均点数が,MBCやSBSよりも低かったことを明らかにし,「KBS1は受信料という財政上のメリットを持っているにも拘わらず,商業放送のSBSよりもニュース番組の品質が低いのは深刻な問題である」と警告した。また,KBS予算が2年ぶりに黒字転換となったことについては,行き過ぎた黒字は望ましくないとの見解を示し,番組制作費を大きく削って利益を確保することは,最高の品質を目指す公共放送の目標を損なうおそれがあると指摘した。

中国,人気の「即席恋愛番組」を当局が批判

中国では今年,互いに未知の男女がテレビ番組の中で,司会者の質問に答えながらカップル誕生を目指す「即席恋愛番組」が全国的に流行している。中でも全国向け衛星チャンネルで放送している江蘇テレビの「非誠勿擾」(本気でなければお断り)はケーブル多チャンネルが普及した中国ではかなり高い4.23%の視聴率を記録した。

これに対し,国家ラジオ映画テレビ総局は6月2日以降,相次いで即席恋愛番組に関する通知を出し,内容の“低俗化”を強く批判した。通知によると,こうした番組では,一部の出演者が自分の経歴についてほらを吹くなど問題が多く,司会者も出演者の拝金主義や虚栄心など,不健康な結婚・恋愛観を放任しているなどと批判している。

今回の通知を受けて,各局は相次いで番組への管理強化を行う意向を表明した。しかし,全国向け衛星チャンネルに広告収入の大半を依存する地方テレビ局は視聴率競争に必死で,今後も同様の番組が出てくる可能性が指摘されている。

フィリピン,地上デジタル放送で日本方式採用へ

フィリピンの国家電気通信委員会(NTC)は6月11日,同国の地上デジタルテレビ放送の規格として日本方式(ISDB-T方式)を採用する規則に署名した。これによりフィリピンは日本以外ではアジアで初めて日本方式を採用する国になる。NTCは,日本方式がHDTV 放送と同時に移動端末向け放送サービスを提供でき,干渉に強く移動中の車内や山に近い地域でも良好に受信できることを高く評価している。フィリピンは 2015 年までにデジタル放送への完全移行を計画しており,日本政府も同国における日本方式の円滑な導入に向け技術協力や人材育成などの支援を予定している。海外では,これまでにブラジル,ペルー,アルゼンチン,チリ,ベネズエラ,エクアドル,コスタリカ,パラグアイの中南米8か国が日本方式の採用を決めている。

インド,放送部門の外資規制に新たな勧告

通信と放送の規制機関TRAI(電気通信規制庁)は6月30日,現在それぞれ49%と20%とされている衛星放送事業とFM 放送事業へのFDI(外資直接投資)の上限をそれぞれ74%と26%まで緩和する勧告案を情報放送省に送った。ケーブルテレビ事業では,州レベル以上の大規模ネットワークを持つMSO については現行のFDIの上限49%をデジタル化推進などの条件の下で74%まで緩和する一方,小規模なローカルケーブル局(LCO)については現行の FDIの上限49%から26%に規制を強化する勧告となった。また,IPTVと携帯端末向けTV 事業のFDIの上限については74%を勧告した。

UAE,中東初の3D TVサービス始まる

アラブ首長国連邦(UAE)を拠点とする電気通信サービスプロバイダーEtisalatとduは,6月1日,UAEで同時に中東初の3D TVサービスを開始した。Etisalatは,同社のケーブルテレビE-Visionとトリプル・プレー・サービスeLifeの加入世帯に当面追加料金なしで3D TVのサービスを提供するとしており,顧客はAl- jazeera Sportsチャンネルを通じ3DでFIFAワールドカップを観戦することが可能となっている。一方duは,同社のdu TVとduTV+の加入世帯すべてに当面無料でファッション,アート,旅行,スポーツ中心の3D TVチャンネルchannel 699を提供するとしている。