放送研究と調査(月報) - 目次

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

放送界の動き

英BBCトラスト,「キャンバス」承認

イギリスの公共放送BBCを監督するBBCトラストは6月25日,執行部から提案されていたプロジェクト・キャンバスの公共的価値の審査を終え,最終的に承認した。「キャンバス」は,BBCと地上商業テレビ,送信事業者のArquiva,通信事業者のBTなど7社によるジョイント・ベンチャーで,インターネット接続テレビの共通プラットフォームを提供する。これによって,視聴者はPCだけでなくテレビを通じて番組の7日間キャッチアップサービスのBBC iPlayerを利用できるようになる。

仏TF1,地デジ2局買収

フランスの商業放送最大手のTF1は6月11日,地上デジタル放送の2局を買収することで相手側と 調印したと発表した。TF1が買収するのは無料放送のTMCとNT1の2局で,買収のコストは合わせて1億9,200万ユーロ(約210億円)にのぼる。独立規制機関CSA(視聴覚高等評議会)は3月,番組の多様性や多元性を確保すること等を条件にTF1による買収認可の決定をした。これに対してライバル局M6が「買収認可はTF1の業界での支配的な地位を認めるものだ」として決定の差し止めを求める申し立てを行っていたが,最高行政裁判所にあたる国務院は4月22日これを退けていた。

仏CSA,地デジ新規に3局の免許公募開始

フランスの独立規制機関CSA(視聴覚高等評議会)は5月4日,新たに3チャンネルの有料テレビ地上デジタル放送の免許公募を6月から開始することを決定し周知した。フランスでは2011年11月に全土で地デジ放送に切り替わりアナログ放送が終了する予定で,新たに免許公募する3チャンネルにはこのアナログ放送終了で空く周波数帯を割り当てるという。フランスでは現在,無料18チャンネルと,有料9チャンネルの地デジ放送があり,毎年視聴シェアを伸ばしている。

独地上デジタルラジオDAB+,2011年開始へ

ドイツの公共放送の財源需要審査委員会(KEF)は6月25日,公共放送ARDとドイチュラントラジオに対し,凍結していたDAB+方式によるデジタルラジオ放送のための予算の使用を認めた。ただし,全国放送のドイチュラントラジオの送信地域の拡大展開については,商業ラジオ局とARDと協調して段階的に行うこと,また両公共放送は今年9月にはアナログラジオ放送の終了時期について見通しを立てることが条件となる。今年1月に始まったDAB+方式による全国向け周波数の公募には7社の商業ラジオ事業者が応募しており,今回公共放送の参加が認められたことで,2011年に一斉にサービスを開始できる見通しとなった。

伊AGCOM,新デジタル周波数計画を決定

イタリアの独立規制機関AGCOMは6月15日,新しい地上デジタル放送の周波数計画を決定した。 これによってアナログ放送終了後,イタリアでは全国放送21,携帯端末向け放送4つの計25の多重周 波数帯(MUX)による地上デジタル放送が行われることになる。このうち,公共放送RAIには放送用4,携帯端末向け/ DVB-T2などの新技術開発用1,の5つが確保されている。また,携帯端末向けの1つを含む6つのMUXを,年内に行う入札により,新規事業者にも割り当てるとした。このほか,地域毎に最低13以上のMUXをローカル放送局に確保する方針などが盛り込まれた。

ギリシア,TV広告新規課税に批判

ギリシアの国会では5月6日,包括的な財政再建法案が承認されたが,このなかにはテレビの広告収入に対してさらに20%の新規課税を7月から上乗せすることが含まれている。ギリシアの放送事業者は23%の付加価値税とジャーナリスト年金の基金としての21.5%の広告収入税をすでに納税しており,新規課税が加わるとと64.5%の高額納税となる。これについてヨーロッパ商業放送連盟のロス・ビッガム会長は6月8日,ブリュッセルで開かれた連盟の年次総会のあと,「ギリシア政府の措置はEU法に違反している可能性が極めて高い。それにこれでは誰もギリシアのメディア市場に投資しなくなる」と批判した。ギリシアの放送事業者の間では,「経済危機で収入が減る厳しい事態の中でこれ以上の納税では経営が成り立たない」という声があがっていた。