放送研究と調査(月報) - 目次

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

放送界の動き

中国,直接受信用放送衛星の打ち上げに成功

中国初の直接受信用放送通信衛星「シノサット2号」が10月28日,四川省西昌からの打ち上げに成功した。シノサット2号は標準画質で200以上のテレビチャンネルを伝送でき,直径45センチの受信用アンテナを設置すれば視聴することができる。中国では都市部を中心にケーブルテレビが1億世帯以上に普及しているが,直接受信用衛星が打ち上げられたことで,今後は農村地域でも教育番組などの多チャンネルサービスや,遠隔医療などへの利用が期待されている。しかし中国では一般市民が外国チャンネルを受信するのを防ぐ目的で,1993年に衛星直接受信を原則として禁止する規定が公布されており,国家ラジオ映画テレビ総局では,この規定の見直しに取り組んでいる。

中国,携帯向けテレビ放送の独自規格を発表

中国国家ラジオ映画テレビ総局は10月24日,携帯向けテレビ放送のための中国独自の技術規格を発表し,国内のすべての携帯電話事業者に規格の使用を義務づけることを明らかにした。規格の名称はStiMi(Satellite Terrestrial Interactive Multi-service Infrastructure)で,他国の規格が地上波を利用するのに対し衛星を使う点が特徴となっており,広大な中国の各地にあまねくサービスを提供できるメリットがあるという。中国はデジタル放送の技術規格については,海外への規格使用料の支払いを避けるため,地上デジタル放送についても8月末に「GB20600-2006」という中国独自の規格を採用すると発表している。

香港,非合法ラジオ局を摘発

香港で通信行政を所管するOFTA(電気通信局)は10月18日,香港の繁華街ワンチャイ(灣仔)で違法なラジオ放送を行っていたとして,立法会の梁國雄議員(通称ロング・ヘアー)ら「市民ラジオ」局の関係者を逮捕した。「市民ラジオ」は,以前から当局に対しラジオ放送のための周波数割り当てを要望してきたが,当局がなかなか応じないことから,「財閥だけにラジオの周波数を割り当てるのは不公平」などとして,しばしば繁華街で地下放送のデモンストレーションを行っていた。デモ放送では香港の大富豪李嘉誠氏の系列下にある新城電台(Metro Broadcast)の周波数帯域を使用,新城電台では当局に対応を要請していた。

インド,初のIPTV商用サービスが始まる

商都ムンバイで,10月21日,インド初のIPTV商用サービスが始まった。国営通信会社MTNL(Mahanagar Telephone Nigam Ltd.)とIOL(India On Line)Broadband社が提携し,MTNLのブロードバンドサービス利用世帯(現在約18万)を対象にサービスを提供している。利用料金は月額 199ルピー(約530円)で,チャンネル数は10月末現在100チャンネル。しかしこのMTNLのIPTVサービスに対し,監督機関TRAIが「ケーブルテレビ・ネットワーク規制法」違反と指摘しており,成り行きが注目される。インドでは,もう1つの国営通信会社BSNL(Bharat Sanchar Nigam Ltd.)が2007年からデリー,ムンバイ,コルカタ,チェンナイ,バンガロール,その他の都市でIPTVサービスを展開する計画を進めている。

韓国,IPTVの試験事業者が決まる

韓国ではIPTV の試験事業者として,Cキューブとダウム・コミュニケーションの2コンソーシアムが最終的に選ばれた。IPTVの試験事業を共同で進める情報通信部と放送委員会が,10月13日,明らかにしたもので,2つの事業者は試験サービスの対象となる世帯の募集や装置の設置などの準備期間を経て,11月から12月にかけて試験サービスを実施する。KT(コリア・テレコム)が主導するCキューブにはハナロ・テレコム,SKテレコム,KBS,MBC,SBSなど52社が参加している。一方,ダウム・コミュニケーションにはKBS, 連合ニュースなど10社が参加している。試験業者選定に当っては,学界,研究界など通信や放送分野の専門家8人からなる評価チームが,事業申請していた6 つのコンソーシアムを対象に書類審査と資産査定を実施していた。韓国ではこれまでIPTV の法的規制の主導権をめぐって,放送委員会と情報通信部の対立が続き,進展が大幅に遅れていた。