放送研究と調査(月報) - 目次

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

放送界の動き

韓国,2010年ケーブルTVのデジタル転換完了へ

韓国ケーブルTV放送局協議会は6月21日,「デジタル転換推進計画」を発表,2010年に加入世帯すべてのデジタル転換を完了してアナログサービスを終了することを明らかにした。デジタルケーブルTVのチャンネルはすべてHDとなり,2011年以降もアナログTV使用が予測される加入世帯には来年から段階的に低価格のデジタル・セットトップボックスが無料で供給される。現在,デジタルケーブルTVはSD(標準画質)で放送されており,HD放送への全面的な切り替えは大きな方針変更となる。その背景には,ケーブルTVのデジタル転換が進んでいないことや,地上デジタル放送,IPTVなどとの競争への危機感がある。ケーブルTVのデジタルサービスは昨年2月から始まっているが,アナログサービスとの間にチャンネル構成や画質に大きな差がないため,加入世帯はケーブルTV加入世帯全体の1%に満たない10万程度と低迷している。

韓国,問題を残した地上デジタルMMS試験放送

放送委員会は5月30日,地上放送各社から申請のあった地上デジタル放送のMMS(マルチモード・サービス)試験放送を,サッカーW杯の期間中(6月5日~7月10日)首都圏に限り認可した。 MMSは,デジタル放送用の1チャンネル帯域でHDTVの他にSDTVやデータ放送,ラジオなど多チャンネルサービスを提供するもの。しかし試験放送開始後,視聴者から「HDの画質が落ちた」とか「誤作動が起きた」といった抗議が相次ぎ,放送委員会は6月14日,MMS試験放送の期間と放送時間を短縮し,チャンネル構成も主チャンネルHDTV+副チャンネルSDTVのみとする方針転換を余儀なくされた。MMS試験放送を許可した放送委員会の決定については,ケーブルTV業界側から「地上波中心の偏った決定」として即時撤回を求める声が出ていた。一方,放送委員会の方針転換に地上放送各社は強い反発を示している。

シンガポール,HDTV試験放送始まる

シンガポールで6月18日,地上デジタルTV とケーブルTV で,HDTV の試験放送が同時に始まった。試験放送を行っているのは地上放送のメディアコープTV とケーブルTV のSCV で,試験対象となる1,000世帯に向けて,午後7時から11 時までの間に週14時間のHD 番組を送信している。試験放送は年末まで続く。また,放送行政を管轄しているメディア開発庁(MDA)は,IP方式によるパソコンへのHD 放送の実験を,早ければこの8月にも開始するとしている。

香港,外資がPCCWの買収に関心

香港の通信最大手で, 有料放送のNOWBroadband TVを傘下に持つPCCWが,オーストラリアの投資銀行Macquarie Groupや,アメリカの投資ファンド TPG-Newbridgeとの間で身売り交渉を行っていることが6月中旬に明らかになった。香港では外資の通信事業者に対する株式所有規制がないため,法的な問題は生じないが,PCCWに約20%出資している中国の通信大手「中国網通」(China Netcom)は外資への株式売却に反対しており,中国政府も同様の意向と見られている。またPCCW傘下のNOW Broadband TVにはNewsCorpのRupert Murdock会長も関心を示している。

台湾,野党党首“襲撃”発言でラジオ局摘発

台湾南部のラジオ局が6月上旬に放送した聴取者参加番組の中で,野党国民党主席への“襲撃”を示唆する発言があったとしてメディアで大きく報道され,捜査当局は6月15日,高雄市の「打狗英雄聨播網」など4つのラジオ局を捜索,番組の司会者3人を拘束した。しかし高雄地方検察署の調べによると,番組の司会者が“襲撃”を扇動した事実はなかった。番組では聴取者の一人である中年の女性がラジオ局にかけた電話で,国民党の馬英九主席が台湾南部を訪問する際に「鋤の柄を持って世話をする」とホーロー語(台湾語)で話したところ,台湾の各メディアが「刺馬」(馬主席を刺す)発言として問題視したものだった。しかし台湾の関係者によると,ホーロー語の「鋤の柄を持って世話をする」は教訓を与えるという意味で殺害するといった意味はなく,野党色が強いとされる台湾のメディアが過剰反応したものとして批判の声があがっている。