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青森のりんご畑を守れ!園地継承円滑化システムとは?

執筆者森谷日南子(記者)
2023年07月04日 (火)

青森のりんご畑を守れ!園地継承円滑化システムとは?

継承希望の園地をマッピング!

インターネット上の地図

インターネット上の地図には・・・園地がマッピングされています。実は、この園地はすべて、園主が高齢化や後継者不足などで継承を希望している園地なんです。去年11月、弘前市が立ち上げた「園地継承円滑化システム」という新たなシステムです、詳しく見ていきましょう。

クリックした先の情報

気になる園地をクリックすると、王林やジョナゴールドといったりんごの品種の情報・樹齢などが細かく記載されています。
さらにトイレの有無や傾斜など、園地の設備や状況まで一目で分かるようになっているんです。
弘前市の担当者は、このシステムのメリットについて次のように話しています。

弘前市農政課 三上大輔 係長
「より詳細な項目を公開することで受け手には探しやすくなっています。農地の航空写真つきで場所がわかるようになっています」

このシステムはいったいどんな仕組みなのかというと・・・。まず、情報をみた希望者が市に「買いたい」もしくは「借りたい」と連絡します。すると所有者の連絡先が伝えられ、あとは双方で交渉。まとまれば、園地を継承できるという仕組みなんです。

システムの仕組み

弘前市農政課 三上大輔 係長
「このシステムを使うことで、りんごが次の方に継承されていき、それがりんご畑を守っていく。弘前市の基幹産業のひとつでありますし、りんごを維持していくのが大事だなと考えております」

弘前市では、後継者が見つからないという農家が約7割という調査もあります。
そんななか、このシステムの運用を始めてから半年間でおよそ50件ものマッチングが成功!伐採する予定だったりんごの木を切らずに済んだケースや、新規就農者が園地を引き継いだケースもあるなど効果も出はじめているといいます。

体力不足・・・園地を譲りたい

りんご農家の葛西さん

このシステムを使って、園地を継承したりんご農家に取材させてもらうことができました。弘前市の山あいでりんご農家を続けて56年の葛西廣壽さん(74)です。
葛西さんは、ふじや王林などを2か所の園地で生産してきたベテラン農家。2か所の園地をほぼ毎日、行き来しながら生産を続けてきました。「できるだけ続けたい」と思ってきましたが、去年病気を患ったことから体力に不安を感じました。
十分に管理できなくなる前に、園地の1つを誰かに任せることができないかと考え始めていました。

葛西廣壽さん
「子どもが4人いて、息子が1人います。息子は40近いのだけど、ちょっと辞められない仕事をしていて、たぶん後継はしないと思っている」

後継者のめども立たないことから、葛西さんは、家から遠い60アールの園地を誰かに継承しようと、ことし2月ごろにシステムに登録しました。
すると1か月後には「園地を借りたい」と申し出る人が現れたといいます。

葛西廣壽さん
「期待はしてなかったけど、そうしたらまぁ見つかったと連絡があった。びっくりしました。『じゃあ、いいよ。』ってその人に貸すと決めました」

手をあげたのは、園地を広げたいと考えた2人の20代の若者だったといいます。去年からりんご農家を始めたばかりの新規就農者でした。園地に中にある小屋も使っていいと伝えるとすごく喜んでくれたといいます。

葛西さんの園地

葛西廣壽さん
「控えめないい青年で、人柄が抜群だった。いいシステムだなと思う。体も喜んでいるし、ここへ来る時間を有効に使うことができる。手をかけてきた木をちゃんとした人に引き継ぐことができて安心している」。

大雨で園地が・・・高台の園地を探す若手農家

住吉佑太さん

このシステムを使ってある事情で園地を引き継いだ若手農家の住吉佑太さん(30)にも取材させてもらいました。まず、案内してくれたのは親から引き継いだ園地。
去年8月の大雨災害で、住吉さんの持つ園地の9割が水につかってしまったため新たな園地を探していたといいます。

園地の9割が水につかってしまった

住吉佑太さん
「いやもう、言葉がなかったです、びっくりして。どうしたらいんだろうって」。

農家を継いで5年目。さらに園地を広げたいと思っていた矢先の出来事でした。再起をはかろうと住吉さんは、システムを使って川から離れたところに園地を探し始めました。

園地継承システム

今まで作っていた農家が高齢で管理しきれなくなった70アールの園地を5月から新たに借り入れることができました。住吉さんは借り受けた園地に早速新しい苗を植えていました。

住吉さんの園地

住吉佑太さん
「起点になる園地ができたので前向きな印象しかない。やるぞって感じがします。苗がかわいいです、これからが楽しみですね。再スタートだと思っています」。

 


取材を終えて

森谷日南子(記者)

これまで弘前市でりんご農家に取材をするたびに、「後継者がいない」という声を聞いてきました。そんななか弘前市が生み出した「園地継承円滑化システム」という新たな取り組み。このシステムのほかにも県内では、りんご農家が親族以外の新規就農者に対して研修を行い、園地の継承を目指す取り組みも行われています。さまざまな取り組みを組み合わせることで、日本一のりんご産地の担い手不足の解消につながっていくことを期待したいです。


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