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青森県産のホタテ 国内取引にも影響

執筆者諸冨泰司朗(記者)
2023年12月01日 (金)

青森県産のホタテ 国内取引にも影響

東京電力福島第一原発の処理水の放出が始まり、中国が日本産水産物の輸入を全面的に停止してから3か月あまり。
中国向けが大半を占める青森県産のホタテの輸出に大きな影響が出ていますが、取材を進めると国内向けのホタテにも深刻な影響が出ていることがわかりました。

中国輸入停止の影響は国内向けホタテにも

倉庫内にうずたかく積み上げられた段ボールの中身はすべて、冷凍ホタテです。

工場長
「どこの冷蔵庫ももういっぱいになってきて、入らない状況になってきているので、困ります。パンクしてしまいますね」

中国による日本産水産物の輸入停止措置のあと、会社の倉庫には、輸出向けだけでなく、国内向けもたまるようになり、現在、約1000トンものホタテが行き場を失っています。

商社は値下がりねらい買い控えか

岩谷孝さん

青森市の水産加工会社の代表、岩谷孝さんです。
会社では青森県・陸奥湾のホタテを中心に毎年1万2000トンの冷凍ホタテを製造していて、そのうち7割あまりが国内向けとなっています。
岩谷さんは、国内向けのホタテが動かなくなった背景には売り先となる商社などの思惑があるといいます。

岩谷さん
「いままで輸出にいっていた荷物が輸出にいかない。おそらく『国内であふれるよ、安くなるのを待っていましょうか』という感じですよ」

冷凍ホタテ

輸出向けのホタテが国内の市場に流れ込み、国内のホタテの価格が下がることを見込んだ商社などが、従来の価格での取り引きを控えるようになったというのです。

陸奥湾のホタテ

陸奥湾のホタテの水揚げは、毎年8月ごろまで行われ、岩谷さんの会社でも今シーズンの買い付けがほぼ終わっていました。しかも今年はホタテの生産量減少の影響で去年より3割あまり高い価格での買い付けでした。当初は安値で売らずに様子を見ていましたが、先が見通せないなか、いつまでも待っていることはできませんでした。

安値でも売らざるを得ない厳しい現状

冷凍ホタテをトラック積む様子

この日は約20トンの冷凍ホタテを、大手回転ずしチェーン用に出荷しました。
しかし、価格を当初の予定より2割下げての販売です。
その差額による損失は、この日だけで1000万円ほどにのぼったといいます。
それでも会社の資金繰りのために、安値でも売らざるを得ませんでした。

岩谷さん
「銀行から運転資金も借りていますから。何月にいくら返済するかを約束していますから。本来であれば年末を控えているから逆に値段上がっていくんですけど、待っていられない」

現状打破で新たな顧客開拓へ

現状をどうにかして打開したい岩谷さんはまず、輸出先の開拓に乗り出しました。
取引先の銀行の助けのもと、新たにシンガポールのレストランに出荷することになり、この日はインターネットで現地とつないで、オンライン試食会が行われました。

レストランのシェフ
「香りの強さとうまみの強さが、青森産のホタテはすごく強かった」

試食の結果、現地のシェフらからの評判は上々でした。

都内のスーパーマーケット

さらに岩谷さんは、国内の新しい販路開拓にも取り組みます。
その結果、県産ホタテの支援に取り組んでいる都内のスーパーマーケットにホタテを扱ってもらうことに成功しました。
しかも、久々に当初の予定どおりの価格で出荷です。

すしなどに加工された

すしなどに加工され、買い物客の反応も上々でした。

「色がとても透明感があって、おいしそうだなと思いました」

「風評に負けずに頑張ってほしいと思います」

スーパーの担当者
「向こうの事情を知りながら販売させていただくということは、われわれにとっても販売に力が入る。非常においしいホタテなので、おいしさを伝えるという意味で、消費者のかたにご案内できればと思います」

寿司を手にとる客

岩谷さんはこうした支援をきっかけにさらなる販売を進めていきたいとしています。

岩谷さん
「青森ホタテを応援しようという気持ちは十分ありがたい。それを大事にして育てて行くし売っていくし、営業かけていく。ピンチをチャンスに変えていかないといけない」

【取材後記】
青森県漁連によりますと、ことし9月末の時点で、県内20ほどの水産加工会社では、国内向けのベビーホタテの在庫をあわせて7000トン以上抱えている状態だということです。今回取材した会社では、処理水の放出前から「放出されたら国内向けも危ない」と危機感をもっていたということですが、それでもいざこうした状況に直面すると、国内向けのホタテへの影響の大きさに戸惑っているように感じました。
ところで、都内のスーパーマーケットでの取り扱いを取材したあと、個人的にホタテのにぎりずしを購入させていただきましたが、とても濃厚な味わいで感動するくらいおいしかったです。現在、ホタテの加工業者にとって大きな逆風が吹いているのは間違いないですが、これを機に国内の多くの人にこのホタテのおいしさが改めて伝わり、「ピンチがチャンスに」なることを願ってやみません。

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