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シリーズ地域医療を考える③

全国初!公立と民間病院の建物が連結&役割分担
  • 2023年11月27日

医療現場の現状や新たな取り組みをお伝えするシリーズ「“地域医療”を考える」。
最終回は11月1日にオープンした米沢市立病院と三友堂病院についてです。
公立と民間の病院の建物がつながっていて役割分担をして運営するのは全国で初めてです。
病院の老朽化や医師不足などが県内の医療現場で課題となっている中、新たな取り組みが注目されています。

シリーズ地域医療を考える③
ー全国初!市立病院と民間病院がつながり連携ー

人口7万6000の米沢市。
中心部に新たな形の病院がオープンした米沢市立病院と民間の三友堂病院。
公立と民間の病院が共有部分でつながっている全国でも珍しい病院です。

米沢市立病院と三友堂病院をつなぐ廊下
米沢市立病院
渡邊孝男
病院事業
 管理者

ベッドのまま移ることも可能なように広い廊下になっています。患者はベッドあるいはストレッチャー、場合によっては車いすで、そのまま三友堂側に移ることができます。非常に患者や家族に優しい構造となっています。


なぜ、こうした病院を建設したのか?

米沢市立病院は、昭和40年に建設、築58年。三友堂病院は、昭和49年に建設、築49年。
2つの病院はともに老朽化していました。
さらに、医師不足という課題。
効率的な病院経営も求められ、一緒に建て替えることになりました。

いよいよオープンの11月1日

オープンした11月1日。
古い病院から入院患者の引っ越しが行われました。
三友堂病院は2キロ余り離れていたため福祉車両で搬送。
市立病院は、隣の古い病院からストレッチャーや車いすで移動しました。

新病院はどんな病院?

この2つの病院は、これまで救急を含めた総合病院でした。
新たな病院では役割分担をします。

【米沢市立病院】
救急対応や手術などの急性期医療を担います。
11月からは米沢市内の救急患者を集約して受け入れています。
新たに高度な治療も行える集中治療センターを設置。
また、最新のCTやMRIといった検査機器を導入。

【三友堂病院】
リハビリや地域包括ケアなど回復期医療を担います。
新しい透析室では1度に50人が透析を受けることができるようになりました。

今回の取り組みで課題のひとつだったのが「電子カルテ」。
三友堂病院が市立病院のシステムに切り替えました。
これで転院などスムーズにやりとりができるようになります。

三友堂病院
仁科盛之
理事長

医療連携をするには電子カルテの共通化するということが一番だと思います。市立病院の医療情報が三友堂病院でも見られる関係。逆に三友堂病院の情報が市立で見られるということでネットワークが構築できます。


注目の新病院 課題解消は?

市立病院が期待していた医師の確保ができていません。

2つの病院が役割を分けたことで、市立病院では救急や外科などの医師を増やそうと考えていました。
しかし、20人を目標にしていましたが、増えたのはわずか5人。
大学に戻ったり、他の病院への勤務を希望したりしたということです。

米沢市立病院
渡邊孝男
病院事業
 管理者

残念ながら、すべての三友堂病院で急性期を担っていたドクターがこちらに移ったという形ではない。救急はまだまだ不十分なところがありますので、その分は特に力を入れて医師の確保に今、努力をしているところです。


市立病院と民間病院による全国初の取り組み。
新たな連携が、地域医療の現場をどのように変えていくのか注目されます。

役割分担を明確にするということが今後の地域医療のあり方に一番大切。
将来的には絶対それが不可欠になる。

全体的に見れば市民のみなさんのニーズに答える形になっていると思っておりまして、適切な医療がお互いに提供できるようにしっかり頑張っていきたい。


新病院がオープンしましたが、市立病院の医師不足という厳しい状況は続いています。
そこで、開業医などで作る地元の米沢市医師会が協力することになりました。
医師会は平日夜間と休日の外来診療を、これまで別の場所で行っていました。
12月からは市立病院の救急室で診察することになり、救急で搬送された比較的軽症の患者は医師会の当番医が診察します。
そして、手術が必要など症状の重い患者を市立病院の当直医が受け持つことでここでも役割を分担することになりました。

地域単位で医療機関などの役割分担を、いかに効率化していくか早急に進めることが必要です。
この2つの病院は今後、他の医療機関や福祉施設などとも連携をしていくということです。
病院の老朽化や医師不足は各地で共通した課題です。
将来に向けて私たちの健康や命に関わる地域医療をどのように維持していくのか、行政や医療機関、そして地域で暮らす私たちも考えていく必要があると思います。

 

【動画はこちら】

  • 金敷匡史

    NHK山形 米沢支局

    金敷匡史

    音声マン、契約記者を経て2014年入局。
    2020年に山形局に赴任し、2023年8月から米沢支局を担当。

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