ウクライナと山形

 

「ウクライナと山形」シリーズ 一挙公開

 

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NHK山形放送局では、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻から1年となった2月24日にあわせて「ウクライナと山形」をテーマに3本シリーズでお伝えしました。

 

ウクライナから遠く離れた山形。

山形で生活していると、世界のメディアはどこか他人事になってしまいそうな問題です。

しかし、日本を含む世界のメディアは、連日大きく伝えていて、侵攻から1年たっても、まだまだ“世界のトップニュース”なんです。

 

こうした中、山形では、来日して県内で生活することを決めたウクライナ人や、ウクライナを支援したいと奮闘する人もいます。

ウクライナと山形のつながりを掘り下げます。

 


 

戦禍のウクライナ人芸術家の思い

山形局記者・山元康司

 

【動画はこちらから】

 

 

山形市で1月に開かれた展示販売会。

会場にはウクライナ人の芸術作家の作品13点が並びました。

展示販売会を主催した画商の山地克紀さんはウクライナの美術館が破壊されて芸術作品が失われたというニュースをきっかけにウクライナ支援の取り組みを行いたいと考えたそうです。

 

作品を購入することがウクライナ支援につながるこの取り組みはもちろんですが、ウクライナ人芸術家の作品に触れるという機会は、今も恐怖におびえながらウクライナで生活している人たちのことを考えるきっかけになるかもしれません。

 

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軍事侵攻で傷ついたのは人だけでなく、歴史の中で築かれてきた建造物や芸術作品も同じです。

ウクライナの芸術家は、芸術家としての立場で国に貢献しようと、ウクライナの勝利を願い、ロシアへの非難を表現した作品を発表しています。

 


 

ウクライナと山形 研究者の絆

米沢支局記者・永田哲子

 

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空襲警報が鳴り響き停電も相次ぐウクライナでは、学術分野にも影響が出ています。大学で研究を続けたくても続けられない状態です。

去年12月、ウクライナからきた研究者が戦禍を逃れ、山形で研究を続けられている背景には、共同研究を続けてきた山形大学の教授との絆がありました。

 

【動画はこちらから】

 

 

【“ウクライナ人の

   研究者が来日します”】

 

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「ウクライナ人の研究者が来日します」。

私がそう吉田教授からメールを受け取ったのは、去年12月でした。

同じ時期に山形大学はウクライナ人学生が山形大学に留学することを発表していましたし、全国で避難者の受け入れが広まりつつあった時期でした。

 

県内での取材を通じてウクライナ人が山形に来るということの難しさは容易に想像できました。

2人が長年続けてきた研究の歩みを止めてはならないという危機感を抱え、避難者としてではなく研究者の立場で来日することこそが必要だと考えていることを知りました。

国境を越えた研究者の強い絆を感じながら、取材しました。

 

【2人の絆が生む“新しい研究”】

 

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吉田教授とウクライナ人研究者のオレグさんが知り合ったのは、およそ5年前。共同研究を行ったのがきっかけでした。

予定されていた2年間の共同研究は新型コロナの影響で中断されましたが、その間、論文を発表したり、オンライン会議したりして、可能なかぎりやり取りを続けてきたといいます。

 

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吉田教授はオレグさんの研究について

「ウクライナ人の研究テーマは素朴なものが多い。実用性の有無を考えずに行われる基礎研究は、日本の研究者が挑戦することは難しいが、日本人研究者とは異なる視点を持つオレグさんと一緒だからこそ新しい研究に踏み出せる」

と話していて、新たな研究成果につなげたいとしています。

 

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一方、オレグさんはこれから日本で行う研究について

「平和な日本で専門的な研究を続け、自分の研究レベルが将来のウクライナの経済改革に役立てばと思っています。

吉田教授には心から感謝しています。

日本にいる間には、日本社会、そしてウクライナ社会にとって必要な新しい知識を作り出したい」

と意気込みを語っていました。

 

【戦禍でも学びや研究を止めてはならない】

 

芸術やスポーツなど、戦禍でその活動が止まることを危惧する発言をよく耳にします。

研究や学びについても同じで、子どもたちは学校での授業を中断してシェルターに避難したり、研究者も停電などの影響で活動を中断せざるを得なかったりする状況です。

文化活動や学術研究それに学びなどが止まらないよう、対策が求められるとともに、1日も早く軍事侵攻の終結を願っています。

 


 

使い捨てカイロで支援~小さな善意が大きな支援に~ 

山形局記者・山元康司

 

【動画はこちらから】

 

 

 

ロシア軍によるウクライナの発電所などインフラ攻撃の影響で暖房が使えず厳しい寒さの中での生活を余儀なくされている人たちに使い捨てカイロを送って支援しようという取り組み。 山形市と福島市に拠点を置く市民団体の呼びかけで、全国各地から集まった使い捨てカイロの寄付は31万個を超えました。

日本人の冬の生活になじみ深い使い捨てカイロを寄付するという取り組みは、使い道が見えづらい現金ではなく、

「厳しい冬の寒さに凍えるウクライナの人たちに暖を」

という明確な用途での支援になったと思います。

 

「ふだん使っているカイロがウクライナで苦しむ人たちに役立つのであれば」と、寄付した日本の人たちは多く、31万個を超える寄付は市民団体の想定をはるかに上回る量でした。

子どもが数個のカイロを持ち寄ったこともあったということです。

ウクライナ支援の輪は、山形から始まり、全国各地に広がりました。

日本人の小さな善意が大きな支援につながっていく一部始終に立ち合うことができるという、貴重で歴史的な瞬間を目の当たりにしたと感じています。

 



記者特集     

山形局記者 | 投稿時間:15:08