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大相撲志す2人 同じ夢追う松井とソソルフー/鳥取城北高校出身

~「仲間」、そして「ライバル」として~
  • 2024年02月07日

「ライバルだけど兄弟みたい」
2人は互いのことをそう語ります。
“大相撲で活躍する”という同じ夢を追いかけ、切磋琢磨してきた19歳の2人。
去年の春、鳥取城北高校を卒業したあとも鳥取に残り、母校で稽古を続けてきました。
また鳥取から大相撲の土俵をわかせる力士が誕生しそうです。
(鳥取局記者 中田歩見)

母校の土俵で

去年11月。
鳥取城北高校相撲部の道場を訪ねると、高校生に交じって、少し大人びた雰囲気の2人が稽古で汗を流していました。

“押し”の松井奏凪人さん

松井奏凪人(かなと)さんは福岡県出身。小学4年生の時に相撲を始めました。
力士を夢見て、中学卒業後に鳥取へ。
身長1m70㎝、体重120㎏。相撲の世界では決して体が大きいほうではありませんが、低い姿勢から前に攻める「押し相撲」が強みです。
高校3年生のとき、全国高校総体の個人戦で準優勝。団体戦では大将を務め、優勝に輝いた実力者です。

松井奏凪人さん
「自分もいつか力士になりたいと思って、ようやくここまで来たので、楽しみ。
 強くてみんなから愛される力士になりたい」

“技”のソソルフーさん

一緒に母校で稽古に励むモンゴル出身の※ソソルフーさん。
中学1年生の時、大相撲に憧れて、鳥取へ移住。
鳥取城北高校では2年のときに全国高校総体の個人戦で3位。団体戦でも、2連覇に貢献しました。
ソソルフーさんも身長1m77㎝、体重115㎏と体格は大きくありませんが、相手のまわしをとってで勝つ相撲が得意です。

アルタンゲレル・ソソルフーさん
「ふだんは(松井さんに)『ライバルだよ』と口に出さないけど、そういう気持ちはある。
 夢は“いい男”になること。みんなが喜んで盛り上がる相撲を取れる人になりたい」

(※名字はアルタンゲレルですが、ソソルフーの方が周囲から親しまれているため、記事では「ソソルフーさん」とさせていただきます。)

幕下付け出し資格を得て

2人は去年10月の国民体育大会に鳥取県代表として出場。
そろって上位に入る活躍を見せ、大相撲で十両のひとつ下、「幕下」からデビューできる資格を得ています。

※「幕下付け出し資格」・・・▼全日本相撲選手権、▼全国学生相撲選手権、▼国体の成年の部でベスト8以上となった場合、幕下60枚目の最下位格付け出し資格が与えられる制度。

ソソルフーさん

2人で『1年間残ってよかったな』と言葉をかけあった。ここからが勝負だなという気持ちになった

松井さん

(番付が)上から始まるので、もっと力をつけてしっかり稽古しないと勝てない。入門するまでしっかり追いこんでいきたい

“もっと強くなってから大相撲へ”と考え、1年間かけて力を蓄えた2人。
強く意識している“目標”があります。
 

先輩の背中を追う

大相撲で活躍する伯桜鵬(本名・落合哲也さん)。高校の1つ上の先輩です。
2人と同じく卒業後も母校で稽古を続けたあと、幕下付け出しでデビュー。そこから一気に番付を駆け上がりました。
昭和以降で最速に並ぶ所要3場所で新入幕
歴代最速の初土俵から4場所目での三賞受賞。
角界に旋風を巻き起こしました。

2021年12月 高校時代の伯桜鵬と松井さん(右)

こちらは当時高校3年だった伯桜鵬。トレーニングに付き添っているのが松井さんです。

公私ともに、一緒に過ごすことが多かったという松井さん。先輩の努力する姿を間近で見てきました。

松井さん

すごくかわいがってもらって、人一倍厳しくもしてもらった。憧れの存在だし、これから“超えたい”と思う存在でもある。

2022年9月 入門前の伯桜鵬とソソルフーさん(右)

ソソルフーさんは、鳥取西中学校のときから1学年上に伯桜鵬がいました。
来日してまもない時期に、日本語や相撲の基本を教えてくれたそうです。

ソソルフーさん

やっぱりバケモンでしたね、先輩は。追いかけて食らいついていこうと一生懸命考えてやっていた。

先輩が残した足跡をたどるように、角界入りを志す2人。
“自分たちはこのままでは通用しない”
そう考え、卒業後も、母校の土俵を借りて相撲に集中する時間を過ごしてきたのです。
 

“ライバル”として

稽古やトレーニングでは互いに競い合います。
ソソルフーさんが重りを15回持ち上げると、松井さんは負けじと16回。

2人で相撲を取るときも、互いに「負けたくない」と熱が入り、稽古の時間が終わるまで何度も何度も取り続けたことも。

そして、稽古後は“ちゃんこ”。
体重を増やすことが課題という2人にとって、ごはんを食べるのもトレーニングのひとつです。

いつもどれくらいおかわりするのか、聞いてみると…

ソソルフーさん

2杯か3杯くらい

松井さん

自分は4杯くらいいきますね

ここでも張り合う2人。
高校に入ってから、松井さんはおよそ40kg、ソソルフーさんはおよそ25kg体重を増やしました。

“仲間”として

2人は卒業後も高校の寮で暮らしています。
同じ夢を見る2人は、高校時代から同じ部屋。

松井さんの枕元にはたくさんのぬいぐるみ

めっちゃいびきがうるさいんですよ。いびきした瞬間に枕を投げるのが俺のひとつの楽しみで

ソソルフーはいたずらが好きなんで。それに自分がつきあってる感じです

毎日一緒にいる2人。
「1人部屋か2人部屋、選べたらどっちがいいですか?」と尋ねると。
 

自分はソソ(ルフー)と2人部屋にいきます

ありがとね

松井さん
「1人だったらしんどかったと思うけど、仲間がいると心強い。
 ソソ(ルフー)がいなかったらここまで来られていないと思う」

ソソルフーさん
「松井は頼りがいがあるし、気が合う。
 ライバルとして一緒にいてくれたことに感謝したい

 

入門を前に 力を試す

令和5年12月3日 東京・両国 国技館

“自分たちが大相撲で通用するのか、力を試したい”。
去年12月。2人はアマチュア相撲日本一を決める「全日本選手権」に初めて出場しました。
舞台は、東京・両国の国技館です。

取組の直前、お互いに肩をたたき、気合いを入れ合います。

 松井さん 決勝トーナメント1回戦

ともに予選を勝ち進み、挑んだ決勝トーナメント。
松井さんの1回戦の相手は、自分より身長も体重も上回る大学生です。

得意の押し相撲から相手の懐に入って、寄り倒し。
会心の相撲で、勝ち上がります。

 

ソソルフーさん 決勝トーナメント2回戦

ソソルフーさんは1回戦はシードとなり、2回戦から。
こちらも大学生との対戦。1m96cm、170kgとひときわ大きな相手です。

果敢に足技をしかけて体勢を崩します。

内掛けで勝利。
しかし、ソソルフーさんはなかなか立ち上がることができません。

土俵に倒れ込んだ際に、頭を強く打ちつけて脳しんとうを起こしてしまい、ソソルフーさんはベスト16で無念の棄権となります。

ソソルフーさん
「負けたのではなくて、勝って終わるのが一番悔しい。
 でもちょっと自信にもなった。
 大相撲の舞台でもっと強い人と戦ってみたい」

 

松井さん 決勝トーナメント2回戦

松井さんの2回戦の相手も大学生。

相手に組み止められ、上手投げで敗退。
前に押し込むことができませんでした。

松井さん
「負けて気合いが入った。
 入門するまでに、もうひとつ力をつけて、大相撲に挑んでいきたい」

 

夢へ向かって さらに

大会で、パワー体格の差を突きつけられた2人。

鳥取に戻ってから、さらに地力をつけようと、自分を追い込みます。

同じ屋根の下、同じ釜の飯を食い、同じ夢を追いかけてきた2人。

固い絆で、どんな時も高め合ってきた2人。

夢の舞台が近づいています。
 

ソソルフーさん
「高校時代からライバルでもあって、家族でもある。それは大相撲に行っても変わらない
 いずれ戦うことになるのでその時が楽しみ」

松井さん
「これから戦う場面もあるかもしれない。そのときにお互い全力で戦えたらいい
 土俵に入ったらお互い真剣勝負。精いっぱいやりたい」

 

【追記】
松井さんは、2月1日の日本相撲協会の理事会で「幕下付け出し資格」が承認され、元横綱・白鵬の宮城野親方が師匠を務める宮城野部屋に入門することが決まりました。
3月の春場所にデビューする予定です。
高校の先輩の伯桜鵬と同じ部屋に入門することになった松井さん。
夢みてきた大相撲の舞台で、どんな相撲を見せてくれるのか楽しみです。

  • 中田 歩見

    鳥取局 記者

    中田 歩見

    鳥取県出身
    令和5年入局
    ふだんは警察やスポーツを担当

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