伯桜鵬 新入幕場所へ 立ち合い磨いて「12勝」目指す
- 2023年07月07日
倉吉市出身の落合改め伯桜鵬。デビューから所要3場所での新入幕という記録的なスピード出世を果たした。今、目指すのは師匠が新入幕場所で記録した“12勝”。持ち味を磨き、大相撲最高峰の舞台へ挑む。
鳥取城北高校時代から取材を続ける鳥取局・南幸佑記者が、名古屋場所直前の伯桜鵬に迫った。
伯桜鵬の稽古に密着
取材初日の6月30日。名古屋場所の初日まであと9日。愛知県豊田市にある宮城野部屋の稽古場は熱気に包まれていた。
午前8時半、伯桜鵬が稽古場に姿を現す。
先に稽古を始めていた幕下以下の力士の申し合いを見ながら、体を入念にほぐす。
力士19人が所属する宮城野部屋で、伯桜鵬はすでに北青鵬に次いで2番目に番付が高い。高校時代に比べて表情がたくましくなり、幕内力士としての迫力、風格を感じる。
午前9時、すでに気温が30度近い蒸し暑さだ。伯桜鵬は額に大粒の汗を光らせながら四股を踏み、すり足で下半身を鍛える。ほかの力士と比べても、太ももの太さが際立つ。
午前9時半、いよいよ伯桜鵬も土俵に入り、申し合いに加わった。
立ち合い、頭から激しくぶつかり、相手の体勢を崩して前に出る。
低い!
目を引いたのは伯桜鵬の立ち合いの体勢が、とにかく低いこと。
身長が20センチ以上低い、新十両・輝鵬との稽古。
ぶつかった瞬間の頭や腰の高さが、小兵力士の輝鵬とほぼ同じ。
下から、下から、鋭く当たって懐に入り、一気に寄り切った。
低く鋭い立ち合い。
これまでの3場所で手応えをつかんだ自分の持ち味に、さらに磨きをかけている。
稽古を終え、汗だくになった伯桜鵬。立ち合いへのこだわりを聞いた。
立ち合いはすごく難しい。至近距離から大きい相手とトップスピードで当たるという、危ないもの。
その中で、角度やスピードというのは自分の持ち味なので、稽古場からどんどん出していきたい。
目指すは師匠と同じ “12勝”
新入幕の名古屋場所、伯桜鵬の強く意識しているのは、師匠の宮城野親方が現役時代に残した足跡だ。
師匠が現役時代に新入幕で12番勝っているので、自分も12番勝ちたい。
歴代最多、45回の優勝を誇る元横綱・白鵬の宮城野親方。伯桜鵬と同じく、十両をわずか2場所で通過。新入幕も同じ19歳のときだった。
幕内デビューでいきなり12勝をあげて敢闘賞を受賞。千秋楽では、当時、朝青龍と優勝争いをしていた北勝力に勝って、土俵をわかせた。
伯桜鵬の新入幕の会見。師匠は自らの背中を追いかける伯桜鵬をこんな言葉で鼓舞した。
10代で活躍できなければ、師匠(私)が持つ結果に近づいていくのは難しいかな。
一つ一つ目標を立ててモチベーションを持ち、夢を持ってやっていくことが大事。それをしっかりクリアできるのが伯桜鵬だ。
憧れの師匠と自分を比べながら、師匠が残してきた成績を自分もクリアしていくんだという思いを持って、毎場所やっている。
師匠という一人の大きな存在が、自分を強くしてくれる。
“2歩目”を意識して
師匠と同じ12勝。その高い壁を超えるため、伯桜鵬が追い求めるものがある。
それは、立ち合いからの“2歩目”。
ぶつかった後、その勢いのまま力強く2歩目を踏み込む。
動きを止めず、スピードに乗ったまま、先に攻め続ける相撲が理想だという。
意識しているのは、1歩目当たってから2歩目をいつどう出すかということ。
立ち合いというのは“2歩目が本当の立ち合い”だと思っている。
取材を行った2日間で、あわせて30番以上の申し合いを行った伯桜鵬。
部屋頭で、番付が11枚上の北青鵬にも胸を借りた。
北青鵬は身長2メートル4センチ。
圧力に負け、2歩目を前に踏み出すことが出来ない。
足が止まってしまった落合。宮城野親方から「まわしを取れるまで走れ!」とアドバイスを受ける。
その後、再び北青鵬に挑むも、またしても押し返されて、なかなか2歩目が出せない。
それでも諦めないのが伯桜鵬。
この日、最後の申し合い。北青鵬との4回目の稽古。
立ち合いで低く当たって北青鵬の上体を起こし、2歩目3歩目と、足を前に踏み込んだ。
立ち合いで攻め勝った伯桜鵬。体格で上回る北青鵬を前に押し込むことができた。
低く鋭い立ち合いから、2歩目を強く踏み出して、前へ出る。
大相撲最高峰の舞台でも持ち味を貫く伯桜鵬は、さらに上を目指す。
新入幕できてうれしいという気持ちもあるが、まだまだ上の番付がいっぱいある。変わらず強くなっていかないといけない。
幕内は相手も強くなるし、そう甘くない。内容、勝ち方にもこだわって、気迫を前面に出してやりたい。
まだまげを結えない鳥取出身の19歳。
大相撲の世界に飛び込んで半年。幕内でどんな成長した姿を見せてくれるのか、楽しみだ。
(鳥取局記者・南幸佑)