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梅酒や梅干しなどに人気!徳島県阿南市の明谷梅林が存続の危機

  • 2023年07月11日

県内有数の梅の名所、阿南市の明谷梅林。いま梅林の管理が難しくなり、梅の木が減っています。長く親しまれてきた大切な風景をこれからも残したい。地元の人々の思いを取材しました。

梅の名所 明谷梅林

阿南市の明谷梅林

阿南市長生町の明谷梅林。毎年春には白やピンクなど色とりどりの可憐な花が咲き誇り、県内外から多くの観光客が訪れる梅の名所です。梅林を管理しているのは地元の梅農家の人たち。5月から6月にかけて収穫される青梅は梅酒にもなるなど地域の名産です。

後継者不足で存続の危機

しかし、この梅林がいま存続の危機を迎えています。

朽ちてしまった梅の木

梅農家の高齢化や後継者不足で手入れする人が減り、梅林の荒廃が進んでいるのです。かつてこの明谷梅林には20軒あまりの梅農家があり、青梅や梅干しの出荷が盛んに行われていました。しかし梅の需要の減少による単価の低下、農家の高齢化などで、梅の木を管理する農家は4軒にまで減少。

シカなどに葉が食べられた梅の木

農家が引退し、動物よけのために設置していた電気柵が撤去されたことで、シカやイノシシなどが入り込むようになりました。これらの動物は、梅の葉や木の皮を食べてしまうため、梅の木は弱って枯れてしまいます。最盛期には4500本あった梅の木は、現在は半分以下の2000本弱になってしまいました。

去年200本以上ある梅林の管理をやめた男性は、斜面の梅の木の管理ができなくなり、後継者もいなかったことから管理を諦めざるを得なかったと話します。

去年、梅林の管理をやめた男性
昔はこの一帯が観光のメインの場所で多くの人が来ていたが、足が弱って山に上がれなくなってしまったので、もうやめるけじめをつけた。それでも、やめたあともだいたい毎日梅林へ来ている。来て、こうやって梅を眺めては帰るということはあるので。自分ではやっぱり心残りはあるけどね。

梅林を未来へ 梅農家の思い

厳しい状況のなか、それでも梅林を引き継いでいこうと模索している人もいます。

梅の選果をする入江さん夫婦

会社員の入江和幸さんと、妻の初美さんです。初美さんの実家は長年明谷梅林で梅を作り続けてきた農家。初美さんたちはそれまでほとんど梅林には関わってきませんでしたが、5年ほど前に父親が病気で梅づくりが難しくなったことをきっかけに携わり始めました。

入江初美さん
入江初美さん

梅も手伝わないよって、そんなに梅の木を植えても私は知らないよって、親には言っていました。けれども、いざ梅林を管理できないとなったら、せっかくこんなにきれいなのにと、やっぱり放ってはおけなくなってしまった。

2人とも平日は別の仕事をしながら、5月から7月の時期は、毎週末、梅林を訪れて作業します。管理している100本ほどの梅の木から取れる実はおよそ2トン。収穫から選別まですべて手作業です。

収穫した青梅
入江和幸さん

やるぞっていう時もあるんやけど、ああもうしんどいなっていう時もある。梅の単価が下がっていて、梅干を作ったとしても農家だけで食べていくのは大変なので難しいところ。

きつい仕事ですが、2人にはそれでも梅づくりを続けたいと思う理由があります。

梅を買いに来た客と話す初美さん

梅を買いに来てくれる人たちの存在です。長年買いに来る地元の人や、県外からも足を伸ばして来てくれる人もいます。この日は午後だけで10人を超える人が訪れ、多い人で50キロもの青梅を買っていきました。話を聞くと「もう何年か続けてお願いしている。ここの梅はきれいだし、安く分けてもらえる」とか「おいしいです。梅干しにしても全然味が違う」などと話してくれました。

入江初美さん
「やっぱりものすごい励みになる。お金では買えない何かがあると思います」

2人を支えてくれている人はほかにもいます。

梅林で収穫作業をする同僚家族やボランティア

この日、入江さんの梅林で梅の収穫作業をしていたのは、入江さんの同僚家族や、長年ボランティアで収穫を手伝ってくれている人たちです。梅を買いに来た人たちも収穫体験に加わり、みんなで作業をしました。

収穫作業が終わった梅林では、こんなシーンも。

収穫を手伝った男の子

おっちゃん、またいっぱいな、梅な、作っておいてよ

入江和幸さん

うん。頑張る。また来年ももぎにきてよ

入江和幸さん
「また作っておいて」と、あんなこと言われたら本当にね。普段仕事をしてるなかで、そういうことってなかなか少ないと思うんですよね。やっぱり周りの人にそうやって励まされながら、喜んでもらえたらいい。できる範囲で、自分の体が続く範囲で、周りの人にも助けてもらいながらできるだけ、梅林の未来を先まで伸ばしたいなと思ってます。

農家の後継者不足に苦しみながらも、今まで当たり前にあった美しい風景を残したい。携わる人たちは支えあいながら、梅林を存続させる道を模索しています。

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