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知ってる?「アップサイクル」香川の企業で広がる取り組みとは

  • 2023年07月31日
知ってる?アップサイクル

「アップサイクル」という取り組みをご存じでしょうか。あまりなじみがないかもしれませんが、本来捨てられていたものを再活用して新たな価値ある商品を生み出そうというもので、リサイクルより一歩進んだ取り組みとも呼ばれています。これが香川県内の企業の間で徐々に広がってきています。(高松放送局記者 竹内一帆)

アップサイクルで食品ロス削減!?

お菓子を製造する工場

お土産用のお菓子を作る高松市の企業の工場です。その製造過程ではお菓子が割れるなどして食品ロスが発生。その量は生産量全体のおよそ2%にのぼるといいます。
 

工場で捨てられているこうしたお菓子を活用して開発されたのが、チョコレートクランチ。廃棄されるお菓子のサクサク感を生かすことができ、食品ロスの削減につながります。

ツジセイ製菓営業部 大住怜央さん

『捨ててしまうものを使っていた食べ物なんだ』とか、意識せずに受け入れられる形や売り場を作っていけたらなと思っています。こうした商品をきっかけに、他にもおいしいお菓子がいっぱいあるので、そこを知ってもらえたら一番嬉しいと思っています。

廃棄されるお菓子をチョコレートクランチに生まれ変わらせるー。このような取り組みは「アップサイクル」と呼ばれています。分別した廃棄物を資源に戻してから再活用するリサイクルとは異なり、本来なら捨てられているものを活かして付加価値をつけることで新たな製品に生まれ変わらせるというものです。

アップサイクルで地域貢献も

捨てられる素材の特徴をデザインとして生かす「アップサイクル」もあります。高松市中心部の雑貨店で販売されている肩掛けの帆布バッグ。その黒い縁の部分の素材として使われているのは、地元で行われている競輪の廃タイヤです。

競輪選手たちのタイヤは、レース前にキズが入っていないかなどの検査が必ず行われます。多いときは3か月に1度のペースでタイヤ交換が行われ廃棄されているため、これを再活用したのです。実際のタイヤが使われていることは競輪好きな客に対するアピールポイントにもなります。バッグの色は、赤や青、黄色など9色。実はこれ、レースに出場する際に競輪選手が着る服の色にあわせたものなんです。

このバッグを製造する行成大祐さんは、地域にも貢献しようと、近くにある障害者の就労支援施設にタイヤの裁断などの作業を委託しています。新型コロナの影響で仕事が減った施設の新たな収入源にすることが狙いで、原材料費を除いた売り上げは、すべて施設に寄付されます。

Cargo Ship
行成大祐さん

売り上げの半分近くは寄付に回る特殊な商品ということを、お客さんが知ることで、『社会貢献の一員なんだ』『社会貢献をしている』というのをわかってもらいたい。持ち帰った後にさらにハッピーになるということも感じてもらいたい。

アップサイクルをビジネスチャンスに

一方、アップサイクルをビジネスチャンスととらえ、本格的に取り組もうとしている企業もあります。高松市で女性3人がおととし起業した企業では、女性向けの革のバッグなどをアップサイクルで販売しています。

バッグの革には、東かがわ市にある別の会社がバッグを製造する際に廃棄していたものを活用しています。この工場では1枚の革から型抜きをするため、およそ3割が廃棄されているといいいます。

廃棄される革を活用して環境意識が高い人などに売り出せばビジネスチャンスになると考えました。今後、主力ビジネスとするため、販路拡大を模索しています。

合同会社higoto
梶原麻美子さん

女性視点の商品企画とか、ウェブで空間や紙系のデザインといった軸もあるんですが、このアップサイクルブランドを軸にしていきたい。これまでの事業の利益も生かしながらブランドを成長させていけたらと思っています。

企業で広がるアップサイクル 専門家も期待

企業の間に広がるアップサイクルが持つ可能性について、香川大学経済学部の古川尚幸 教授に話を聞きました。古川教授は、「廃棄物の量には限りがあるので、アップサイクル商品は大量生産には向いていない」としつつも「小ロット生産のようなスモールビジネスとしては、十分可能性がある」と指摘。その上で、持続可能な社会の実現に向けて、アイディアやデザイン、それに技術を生かしたさまざまなアップサイクル商品が開発されることに期待を寄せていました。

古川教授

本来まだまだ使える原材料でも捨てられているものがあると思っているので、県内でそういったものを活用してスモールビジネスを始めようという方が増えてきたということは、本当に素晴らしいこと。これからもまだ香川県内でもたくさん可能性がおそらくあると思いますから、さらに広がってほしい。

  • 竹内一帆

    高松放送局記者

    竹内一帆

    北海道各地で6年勤務後、高松に赴任し現在3年目。経済・交通などを取材。

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