子どもたちが、スマホなどのデジタルツールを通して、ゲームやインターネットに触れる機会が増えています。小学校では1人1台、タブレットなどが配備されはじめ、保育の現場でも遊びへの活用が広がっています。しかし、どこまで子どもに使わせるべきか迷うことはありませんか? デジタルツールとのつきあい方について、専門家と一緒に考えます。

デジタルツールと子育て

専門家:
佐藤朝美(愛知淑徳大学 人間情報学部 教授)

今回のテーマについて

鈴木あきえさん(MC)

コロナ禍もあり、子どもが映像やネットに触れる機会が増えた家庭も多いと思います。わが家の子どもたちも動画が大好きです。便利なところがたくさんありますが、目の影響などが心配ですよね。

古坂大魔王さん(MC)

何が正解なのかいろいろと考えますよね。ただ、子どもは好きでしょうがない。

佐藤朝美さん

今は、スマホ、タブレット、ゲーム機、AIスピーカーまで登場して、何がよいのか手探りの状況です。常によい使い方、よいコンテンツの選び方などを考えていくことが必要だと思います。


デジタルツール、おうちでどう使ってる?

まず、デジタルツールをどう使っているのか聞いてみました。

ぐずったときの最終手段

車や電車のとき、どうしても子どもが泣きやまないときの最終手段で、スマホで動画などを見せることがあります。ピタリと泣きやみます。親としては長時間見せたくはありませんが、ぐずったときは絵本などを見せても全く興味を持ってくれません。スマホは魅力的なんだと思います。
(お子さん1歳2か月のパパ)

アプリで学習

長女(5歳)が算数の簡単な計算ができるアプリや、ひらがなをなぞって書くアプリを使っています。例えば、算数のアプリではゲーム感覚で取り組めて、間違えても「大丈夫!できる!」と前向きになっています。全問正解するとランダムでカードをもらえる仕組みで、レアカードが出てくるとうれしいようです。紙媒体の勉強もしていますが、アプリのほうが子どものテンションがあがって、達成感もあると感じます。
(お子さん5歳・3歳・1歳10か月のママ)

AIスピーカーで発音練習? 子どもの撮影もおもしろい

家ではAIスピーカーを使っています。長男(3歳)も、AIスピーカーに運動会で流れていた音楽「〇〇を流して」とお願いすることがあります。はじめはなかなかAIが反応しませんでしたが、最近はよく応えるようになり、息子もよろこんでいます。滑舌がよくなったのも感じられます。
長男は写真を撮るのも好きで、自分でスマホのカメラを起動して、自分が組み立てたおもちゃなどを撮っています。子どもが撮影した写真や動画は大人と目線が違い、意外なものが撮られていておもしろいです。
(お子さん3歳・9か月のママ・パパ)

親が生成AIで調べた情報を共有

例えば、子どもと「どうしたら寝坊せずに早起きできるか」を話し合ったとき、私が対話型の生成AIにも「小学生が早起きするには?」と聞いてみました。すると、「7~8歳なら〇〇ぐらい睡眠が必要、10歳だったら…」のような答えが出てきます。親子だけで話すと言うことを聞いてくれないこともありますが、生成AIが第三者的になって、「ちょっと睡眠が足りなかったかもね、もう少し早めに寝てみようか」など、スムーズに話し合えると感じます。
(お子さん10歳・8歳のママ)

―― 佐藤さん、みなさんの話を聞いていかがですか?

親が見届けながら、うまく取り入れる方法を考えることが大事

回答:佐藤朝美さん

以前は、デジタルツールは使わない・禁止する考え方が多かったのですが、今は使う・使わないの二項対立ではありません。どう生活に取り入れるか、子どもが使うことでどうなるのか、親が見届けながら、その方法を考えることが大事です。小さい子どもであればあるほど、一緒に使って、子どもがすることを見守ってください。おもちゃで遊んでいるとき、絵本を読み聞かせているときと同じように、子どもの育ちをみていきましょう。さきほどの生成AIで調べることも、親子で話すきっかけになるような使い方でよいと思います。
※AIが生成した内容が正確とは限りません。親の管理のもとで使用しましょう

幼稚園でもいろいろな試みが行われている

佐藤朝美さん

小学校では、1人1台端末のGIGAスクール構想が始まっています。幼稚園でも、いろんな試みが行われています。例えば、遊びを豊かにするためにデジタルを取り入れるケースもあります。

幼稚園では、デジタルツールをどう使ってる?

保育の現場ではどのようにデジタルツールを使っているのでしょうか。名古屋市のある幼稚園での使い方を紹介します。

タブレットで動画を見ながら折り紙を折ったり、ダンスを練習したり。

お店屋さんごっこでは、「お客さんをたくさん呼びたい!」と言って、お店のコマーシャルを作りました。

動画を作る中で、子どもたち自身がどのようなコマーシャルにするか試行錯誤しました。


デジタルツールを“見る”だけではなく、一緒に何かを“作る”

佐藤朝美さん

園児たちがコマーシャルを作るとき、最初は「商品がいいので、きてね」というものでした。でも、作っているうちに、もっと商品をクローズアップしたり、「おいしいケーキができています」「紅茶と飲めるセットもあります」とアピールしたり、何を作るかに興味も持って、映像の撮り方も変わっていったそうです。
このように、デジタルツールをクリエイティブに使うと、ポジティブな使い方ができます。家庭でも、見るだけでなく、一緒に何かを作るために活用することを提案したいです。


デジタルツール、子どもの体や育ちへの影響が心配

わが家では、できるだけ子どもにデジタルツールを使わせないようにしています。どろんこ遊びや水遊び、手を使ったお絵描きなど、手への刺激や細かい経験が大事だと感じます。できるだけ、そういったアナログの活動をさせたいと考えています。
(お子さん3歳のママ)

双子の弟が生まれて赤ちゃんの世話に追われて、長男(1歳7か月)にひとりで待ってもらうときに動画配信などを見せることが増えました。集中して見てくれて助かる反面、体や育ちに影響がないか気になっています。だんだん見る時間が長くなっていることも不安です。1歳から見せることによって、目が悪くなる、耳の聞こえが悪くなる、ことばの遅れなどの影響がないか心配です。
(お子さん1歳7か月・双子4か月のママ)

鈴木あきえさん(MC)

私も下の子が生まれたとき、上の子に動画を見ててもらう時間が長くなってしまい、同じことを思っていました。今でも、目への影響は心配です。

デジタルが親のリラックスに機能するなら、結果的によい影響になる

回答:佐藤朝美さん

子育てが大変な状況で、現実的に難しいときもありますよね。ただ、子どもにとって、育てる人の笑顔や心のリラックスがいちばんだと思います。そこにデジタルが機能しているのであれば、結果的に子どもの育ちにいい影響を与えるのではないかと考えています。

映像を見て親子で話す、大きな画面に映して見る

回答:佐藤朝美さん

かつての研究では、テレビを見せ過ぎると語彙の発達に影響があるのではないかと指摘されていました。
でも今は、見たあとで親と映像のことを話すことで、語彙の発達にプラスの影響があるのではないかといわれています。子どもと一緒に見ながら話すことが理想です。
例えば、大きな画面で見せると、子どもが何を見ているのか、赤ちゃんのお世話をしている親の視野にも入ってくるので、あとで見たものについて声かけがしやすくなると思います。

目への影響・視聴方法

監修:仁科幸子さん(国立成育医療研究センター眼科医長)

乳幼児の目は発達の途中にあるため、不適切な見かたをすると、目のはたらきが十分に育たなかったり、近視や乱視をまねいたりする可能性があります。子どもの視聴環境に気をつけましょう。

画面との距離をとる・1回の視聴は30分以内(1~2歳は親と一緒に15分以内)

画面と距離をとってください。テレビであれば2m以上、スマホやタブレットなどは30cm以上が目安です。1回の視聴は30分以内、1~2歳の場合は親と一緒に15分以内を心がけてください。

目を休める・体を使う遊びで目を動かす

子どもは目の疲れを自覚しにくく、自分からうまく伝えられません。視聴したあとは、目を休める、目を動かす体を使う遊びを取り入れるなどしましょう。


親がテレビっ子で、自宅では1日中テレビをつけています。子どもに弊害はありますか?
(お子さん5歳・4歳・2歳のママ)

テレビをつけっぱなしだと、子どもの遊びへの集中がそがれることも

回答:佐藤朝美さん

大人が見たくてつけているテレビは、子どもが見たいわけではないので、子どもが何かをする背景になります。ただ、背景となるテレビがついたままだと、子どもの遊びなどの活動が、ふいに集中が途切れてテレビを見てしまう瞬間があります。理想はメリハリをつけて視聴することです。よいコンテンツを選んでしっかり見るのがいいと思います。


子どものデジタルツール、親がどこまで制限する?

デジタルツールについて、親がどこまで制限するのか、みなさんの話を聞きました。

古坂大魔王さん(MC)

わが家では、「勝手にずっと見ない。見るなら一緒に」というルールで使っています。特に時間などは決めていません。

鈴木あきえさん(MC)

動画サイトは1回30分と決めて、見るときはアラームを30分にセットして鳴るまでにしています。ただ、テレビの大好きなアニメは時間に関係なく見ているので、動画サイトだけの制限に意味があるのかな、と悩んでいるところです。ゲームは、「ひらがなを書いたら15分」といったルールにしています。

すくすくファミリー

  • 寝る前は「スマホを見ないよ」と声かけをして、ときには没収しています。
  • まず、親がアプリを使って、よいと思ったものだけを子どもが使うタブレットに入れています。
  • 平日は30分×2回、休日は30分×3回、見るときはキッチンタイマーで時間を計ります。何度かみんなで話し合って、このルールに落ち着きました。キッチンタイマーは保育園の年中ごろから使い始めて、小学生になると子ども本人がセットする習慣が定着しました。

娘(1歳2か月)は、親と一緒にスマホで動画を見たあと、やめることを嫌がるようになりました。娘が大きくなったら、親子で話し合ってお互いに納得したルールにしたいのですが、みなさんはスマホを何歳から持たせようとしていますか? 家庭でのルール作りや指導について聞きたいです。
実は中学校の教員をしていて、他の教員と話すと「中学生の8割くらいは持っている」という印象です。本音は「高校生から」と考えていますが、いかがでしょうか。
(お子さん1歳2か月のパパ)

すくすくファミリー

  • まわりの環境によりますが、中学生くらいから大丈夫だと思います。家族も一緒にしっかり見守る体制が大事ですね。
  • わが家も「まだ見たい!」と泣き叫ぶことが増えてきたので悩みますね。小学生でも、例えば塾に通って連絡手段として必要になることがあれば、機能制限したスマホを考えると思います。
  • ルールを守れるようになったらと考えています。いつから持たせるかは、周りの保護者とも相談して決めたほうがいいですね。

―― 佐藤さん、みなさんの話を聞いていかがですか?

未就学児のうちにデジタルを自制できる、コントロールできる力を育てる

回答:佐藤朝美さん

みなさんが悩むように難しいことで、ひとつの正解があるわけではないと思います。ルールは親子関係や友達関係、子どもの気質、性格を踏まえて決めることになるでしょう。子どもにスマホをいつから持たせるかも、親子や友だちとの関係性、おかれた環境によって異なるので、家庭で話し合って決めることだと思います。
もしかすると、未就学児のうちにスマホのルールや習慣をしっかり身につけておくと、小学校の高学年から持たせても、はじめてスマホに触れる子どもより心配材料が少なくなるかもしれません。一方で、思春期に入ってから持たせると、親の言うことを聞かなかったり、反抗してきたりすることもあります。未就学児は親の言うことを聞いてくれる時期なので、デジタルを自制できる、コントロールできる力を育ててあげるといいですね。もちろん、親の見守りが大事です。

すくすくファミリー

親の言うことをある程度聞いてくれる時期に、一緒にルール作りや使い方を学んでいくのは目からうろこでした。

鈴木あきえさん(MC)

最初からぴったりはまるルールはなかなかできないと思いますが、何回も話し合う姿勢も大事なのでしょうね。


親がスマホを使う様子を子どもに見せて大丈夫?

ママもパパも、家の中で頻繁にスマホを使っています。朝のアラームからはじまり、保育園との連絡、レシピの検索、家族共有のスケジュール管理もスマホです。何をするにしてもスマホを使います。
でも、親がスマホを使う様子を子どもに見せることで、悪い影響がないか気になっています。
(お子さん3歳・9か月のママ・パパ)

親子で一緒に使う、使う前に声かけする

回答:佐藤朝美さん

小さい子ほど、自分をいちばん見てほしいものです。例えば、子どもが泣いているときにスマホに夢中になっていると、寂しく感じるという研究もあります。親子で一緒に使ったり、スマホを使う前に「お仕事するよ」と声をかけたりすれば、「自分よりスマホが大事なわけではない」と認識できます。

スマホを使う姿を子どもに見せるなら、「見られてもいい使い方」を

回答:佐藤朝美さん

子どもは親の活動をずっと見ていると思います。スマホも、親がどのように使っているかが、将来の子どもの使い方のモデルになります。スマホを使う姿を子どもに見せるなら、「見られてもいい使い方」をするのがよいでしょう。見せてはいけないわけではないと思います。

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです