保育園・幼稚園・こども園は、子どもがお家以外で多くの時間を過ごす場所です。でも、園や保育士との関係をどう築けばいいのか、悩むママ・パパもいます。どこまで園に求めていいのか、連絡帳に何を書けばいいのか。そんな、園とのつきあいについて、専門家と一緒に考えます。

専門家:
野澤祥子(東京大学大学院 教育学研究科 准教授)

園の連絡帳に何を書けばいい?

保育園の連絡帳に何を書けばいいのか悩んでいます。例えば、こんなことを書いています。
「昨日はおうちに帰る途中に公園によって、靴をはいて歩いてみました。地面におろすと怖くなってしまったのか、ハイハイで移動していて笑ってしまいました」
「最近、夜泣きが多く、夜中に3回ほど起きる日が続いています。眠たいのか、きのうは7時半には寝てしまいました。早く朝まで眠る日が来てほしいです」

毎日、何か見つけ出して書くのは難しく、いつも同じような日々だと感じます。園が何を知りたいのかもわかっていません。夜泣きのことも「前も書いたかな?」と気になったり、「靴がイヤ」と書いても「それは先生が知りたいこと?」と思ったりします。
ネットでは横澤夏子さんの連絡帳が話題で、フリやオチがしっかりしていて、すごいと思いました。そこまで書く必要はないと思いますが、何かおもしろいことを書いたほうがいいのかなとも思います。連絡帳には、何を書けばいいのでしょうか?
(お子さん1歳3か月のママ)

鈴木あきえさん(MC)

横澤夏子さんはプロの芸人ですからね。私も夏子さんのSNSをフォローしてよく見ていますが、情景が浮かんでクスっと笑えます。わたしたちは彼女のエンターテインメントを楽しませてもらいましょう。

横澤夏子さんの連絡帳

私の場合、最初のころは連絡帳に我が子の今の状態をできるだけ多く書こうと思っていました。

―― 番組アンケートには、ほかにも「連絡帳に何を書いていいのか悩む」という声が届いています。

コロナ禍で連絡帳の重要度が増している

野澤祥子さん

コロナ禍で対面のコミュニケーションが薄くなっているとき、連絡帳がこれまで以上に重要なコミュニケーション・ツールになりました。園にとっても保護者にとっても、大事になっている現状があると思います。

連絡帳 我が家のスタイル

悩みの種にもなる連絡帳。ママ・パパたちはどう書いているのか、すくすくファミリーに「我が家のスタイル」を聞きました。

短く、簡潔に

最初は子どもが心配で、家での様子などを日記のように書いていましたが、今は、短く、簡潔に書くようにしています。体調やお迎え時間など、いちばん伝えたいことを書くほうが、先生も保育がしやすいだろうと思ったんです。先生から「すごく分かりやすい」と言ってもらえました。

イラストで時短?

イラストを描いています。文章だと子どもの動きを伝えるのが難しいのですが、絵だと一目瞭然です。最初はパパが描き始めて、今はママも描いています。文章だと、丁寧な言葉づかいや起承転結を気にしてしまい、かえって大変なんです。

子どもの「やっちゃった」もネタになる!

子どもがとんでもないことをやらかしたときも、「連絡帳に書くネタになるからいいや」と思うようにしています。例えば、コガネムシを口に入れたときも、「連絡帳に書くおいしいネタがあった!」と思えます。

クスっと笑えるネタを書く

家で起きた「ちょっとクスッと笑えること」などを、連絡帳に書いてます。例えば、テーマパークで「ジェットコースターを5回も乗りました!」と書くと、そのネタをきっかけに先生と話しやすくなります。

1行のところに2行分書いている

心配症なので、1行のところに2行分書いています。例えば、家で子どもがけがをしたとき、それを園でできた傷だと心配させないよう、「家でできた傷です」と書きます。「必要かも」と私が思うことは全部盛りです。

―― 野澤さんは、連絡帳をどういうふうに書いていましたか? 

本当に伝えたいことがあるときは書いていた

野澤祥子さん

2人の子どもを保育園に預けていたころは忙しかったですね。連絡帳は「元気です」のひと言で終わらせるような余裕のない日々で、本当に伝えたいことがあるときは書いていました。みなさんの連絡帳はすてきですばらしいと思いますし、「今日も元気です、お願いします」だけにする日があってもいいと思います。

―― そもそも、連絡帳を受け取る先生たちは、どんなことを知りたいのでしょうか?

食事や睡眠、体調は大事。たくさん伝えてくれることもうれしい

回答:野澤祥子さん

食事や睡眠など、その日の生活や体調を伝えることは重要だと思います。例えば食事や体調などで心配なことがあるときは、口頭でも伝えておくとよいでしょう。
また、自由記述欄で、いろいろな思いや、あった出来事などをたくさん伝えてくれるのは、先生にとってうれしいことだと思います。

―― 番組には「書き過ぎると迷惑にならないか」という意見も届いていますが、園の先生はうれしいのでしょうか?

回答:野澤祥子さん

うれしいと思いますよ。一生懸命に子育てしていることが、すごく伝わると思います。


園の先生は、連絡帳をどう生かしてる?

園の先生は、おうちの方からの情報をどのように保育に生かしているのでしょうか。
ある保育園を取材しました。

東京の認可保育園

1歳児クラス、朝の送りの時間です。次々に園児が登園してきます。

ここで保育士は、保護者に「体調変わりないですか?」のように声をかけます。体調など、重要なことは口頭で直接聞いているのです。

朝の対応が落ちつくと、保育の合間に連絡帳の内容を確認します。子どもたちの体調や朝起きた時間、熱や機嫌などを見ているそうです。
後から出勤した保育士も、連絡帳に目を通します。

この日、連絡帳の起床時間を確認すると、ある園児が遅めに起きていました。そこで、昼寝がスムーズにできるように、運動量を少し増やすような活動の調整をすることにしました。保護者の連絡帳から、保育内容を変更することもあるのです。

クラスの活動とは別にしっかり体を使って遊んで、お昼寝もぐっすりできました。

保育士は、お昼寝の時間に、あらためて連絡帳をじっくり読むそうです。

連絡帳にはどういうことを書いてほしいのでしょうか。
保育士に聞きました。

朝の送りの時間は余裕がなく、細かいことまで話すのは難しいと思います。連絡帳に家でのエピソードが書いてあると、「こういうやりとりを、おうちでしてくれたんだな」と共有できます。家でのちょっとした様子を知ることが、保育の大事な手がかりになります。
「元気です」のような短いコメントのときは、「今日は忙しかったのかな」など、想像するようにしています。
(保育士)

また、園での様子を、あえて連絡帳に書かず、口頭で伝えることもあるそうです。

例えば、お昼寝がうまくできるか心配している保護者には、お迎えのとき「今日は、成功しましたよ」と伝えます。大事なことや、保護者が気にしていることは、できるだけ直接言葉で伝えて、気持ちを共有するようにしています。
連絡帳はどうしても文章のやりとりになるので、肌で感じる部分も大事にしたいと思っています。
(保育士)


鈴木あきえさん(MC)

連絡帳の情報をしっかりキャッチしてくれているんですね。親としてありがたいです。

保護者とのコミュニケーションは、園や地域によって違いもある

野澤祥子さん

取材に応じてくださった園は、保護者とのコミュニケーションをしっかりとられていると思いました。ただ、園によっては感染予防対策のほうに尽力している場合もあります。園の方針や地域の状況にもよります。今まさに、どうしていくか手探り状態のところもあり、園によって違いがあると思います。


すくすくファミリー

園の先生の言葉に、とても励まされた経験があります。当時、長女のイヤイヤ期と赤ちゃん返りが激しくて困っていたんです。そのとき、「嫌い・イヤを自分の言葉で伝えられるのはいいことです」と言われて、困ったことではなく、むしろ成長の一歩なんだと捉え直すことができてホッとしました。

鈴木あきえさん(MC)

私も、娘の手が出やすい時期に落ち込んでいたことがあり、そのときSOSのように連絡帳に書いてみたんです。すると、「わかりますよ」と、まず共感してもらえました。「みんなこういう時期なので、もう少し過ぎると大丈夫だと思います」「こういうふうにしたらどうですか?」など、いろいろ話してくれました。先生の言葉に救われますよね。

園と先生は子どもを一緒に育てるパートナー

野澤祥子さん

保護者にとって、園は子どもを共に育てるパートナーです。それを感じるエピソードでしたね。園には、保護者を支援する役割もあります。先生たちも、保護者からの相談に乗りたいと考えていると思います。ぜひ気負わずに相談してみてはいかがでしょう。


連絡帳がないとき、園とのやりとりはどうしたらいい?

息子が2歳児クラスに進級してから、連絡帳がなくなり少し困っています。息子はよくしゃべるほうで、「今日〇〇した」と言ってくれるのですが、それが本当かどうか、確証が持てません。例えば、「お友だちのおもちゃにごっつんした」と話してくれても、どんなことがあったのか細かいところまでわからないんです。連絡帳がない場合、園とのやりとりは、どうしたらいいのでしょうか? 
(お子さん3歳のママ)

園の方針で連絡帳がなくなり、一斉配信や掲示板で活動を伝えることも

回答:野澤祥子さん

子どもが0〜2歳ぐらいは、子どもの個人差が大きく、子育ての悩みも多いと思います。そのため、多くの園は連絡帳で子どものことをやりとりしています。
ただ、連絡帳を使う決まりがあるわけではありません。園の方針で、2~3歳から連絡帳がなくなり、一斉配信や掲示板でその日の活動を伝えることもあります。

園での様子を聞くことは、子どもの伝える力に

回答:野澤祥子さん

連絡帳がないときは、園での様子を子どもに聞くなど、子どもと話をしてみましょう。そのことが、子どもの伝える力を伸ばすことにもつながると思います。このとき、子どもとのやりとりを楽しむことも大切です。
また、子どもの話の中で気になることがあれば、園の先生に直接聞いてみてください。

―― すくすくファミリーのみなさん、連絡帳以外でのアイデアはありますか?

  • 朝、保育園に行ったときの様子を見ることを大事にしています。例えば、すこし早めに園に行くと、まだ誰もいないので全部のおもちゃが使える状態です。そこで子どもが最初に飛びつくおもちゃがこの子のブームだとわかります。少しの間ですが、先生と話もしています。
  • 連絡帳がなく、先生と話す時間もないので、先生に聞きたいことを付箋紙に書いて、毎日提出する体温表に貼っています。
  • いざというときは、担任の先生に手紙を書きます。以前、子どもが0歳のとき、かみつきで悩んでいて手紙を書いたことがあります。先生から返事があり、とても励まされました。

園では、どうやって子どもの安全を保っているの?

保育士の数が足りないといわれていますが、園の水遊びや散歩などの活動は、どのように工夫して安全を保っているのか気になっています。そこまで聞くと「うるさい親」と思われないか心配で、聞くに聞けません。
(お子さん1歳3か月のママ・パパ)

安全管理は園にとって当然のこと。積極的に聞いていい

回答:野澤祥子さん

園の安全管理は心配なことなので、積極的に聞いていいと思います。安全管理は、園にとっていちばん大事なことで、確実にやらなければいけないことです。ただ、園にとっては当たり前のことで、あらためて保護者に伝えることをしていないのかもしれません。だからこそ、保護者の不安な気持ちを伝えることは、園側も「発信しなければ」と考える機会になると思います。不安をためこむよりはぜひ聞いてほしいと思います。

水遊びでの安全管理について

親として、安全管理は気になりますよね。保育園で水遊びの様子を取材しました。

園での水遊び

黄色いベストを着ているのは、監視役の先生です。

水遊び活動の国のガイドライン

国のガイドラインでは、水遊びの活動では、保育者とは別に、監視に専念する職員を必ず1人配置するよう示しています。
園は安全管理を必ずしなければいけません。もし心配なことがあれば、通っている園に聞いてみてください。


こどものホンネ
園でいちばん楽しい遊びは?

子育てでわからないことは、子どもに直接聞いてみよう!

「こどものホンネ」に迫るコーナーです。今回は「園でいちばん楽しい遊び」について、保育園、年長さんの子どもたちに聞いてきました。

―― 園でいちばん楽しい遊びは?

  • 水遊び。
  • 朝しか水遊びできないから、スペシャル。
  • サッカー。
  • メッシになりたい。
  • 僕もサッカー。日本代表になりたい。
  • 世界代表になりたい。

―― 先生と一緒にサッカーやりたいと思う?

  • 思わない。
  • もっと本気を出してほしい。
  • 先生が本気でやったらさ、俺たちも本気になってさ、先生が泣くもん。
  • 泣かないよ。

そして、自分たちで考えた「遊び」を教えてくれた子もいました。

  • ウィーごっこ!
  • (子どもたち)ウィー!
  • ウィーってずっとやってたら、お友だちになった。
  • 泣いたときとか、ウィーって言ったら機嫌がよくなって。
  • ケンカしたときも、仲良くなれる。
  • 秘密の合言葉、ウィー!

さらに、子どもたちからはこんな答えもありました。

  • お友だちと遊んだら元気になるよ。悲しい気持ちが吹っ飛んじゃう。
  • みんな仲良しなのだ。
  • 仲良しなだけでいいのだ。
  • 絶対に忘れない友だちです!

そして、「いちばん楽しい遊び」で、いちばん多い答えは「ミニブロックで遊ぶ」でした。

みんなで遊ぶのも、ひとりで遊ぶのもどっちも楽しいですよね。


最後に

―― すくすくファミリーのみなさん、自分にとって園はどんな存在ですか?

  • 一緒に子育てをしてくれるたくさんの親たち、プロ集団。
  • 一緒にタッグを組んで育児をしている相棒。

―― 野澤さん、みなさんの話を聞いていかがでしたか?

野澤祥子さん

あらためて、園とのコミュニケーションについて、保護者の方が真剣に考えていることがわかりました。今回の番組を、ぜひ園の先生にも見ていただきたいと思います。園の先生も、おうちの方の相棒として一緒に子育てしていけることが、心強く、頑張っていける気持ちになるのではないかと思います。

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです