NHKスペシャル

病の起源 第4集
心臓病 ~高性能ポンプの落とし穴~

シリーズ「病の起源」第4集は、世界保健機関WHOが発表した世界の死因の第1位の病「心臓病」。日本でもこの30年間に発症率がおよそ3.5倍に増え、深刻な事態となっている。心臓は、一生の間に30億回も拍動し、休むことなく全身に血液を送り続けている臓器。その働きに異常をきたすことは命に関わる。私たちは、なぜ心臓病になるのか。その答えは、進化に隠されている。およそ2億2千万年前に誕生した哺乳類は、心臓の筋肉を強力にし、その筋肉に血管を張り巡らせたことで、高い運動能力を手に入れ繁栄を勝ち取った。しかし人類は、700万年前に独自の進化の道を歩み始めたことで、みずからの心臓を翻弄させる事態を生み出した。まず直面したのは、直立二足歩行による重力との闘いだ。足に血液がたまりやすくなり、脳が血液不足になるのを防ぐために、心臓は負担を強いられるようになった。さらに、250万年前頃から始まる脳の巨大化は、人類に高度な知性と文明化をもたらしたが、一方で心臓の血管が詰まる心筋梗塞のタネを生み出してしまった。脳の進化に関わったと考えられる「ある変化」が、皮肉にも心臓に張り巡らせた血管を痛めやすくしていたのだ。進化の代償として抱え込んでいた心臓病の宿命に、どう向き合い防いでいけばよいのか、進化を手掛かりにその答えを探っていく。