首都圏情報ネタドリ!

  • 2024年5月24日

墓じまいトラブル 費用や人間関係の落とし穴 相場は?遺骨はどうする?“離檀料”求められるケースも

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15万1076件。
これは、いわゆる「墓じまい」などで、墓から取り出した遺骨を別の場所に移す「改葬」の件数です(2022年)。この10年で2倍近くに増えています。

しかし、墓じまいを進めようとした人から、「反対する親族と大げんかになった」「寺から離檀料(りだんりょう)が500万円かかると言われた」など、困難に直面したという声が数多く寄せられています。トラブルを回避するためのポイントは?

「墓じまい」を特集する「首都圏情報ネタドリ!」はNHKプラスで配信します。

▲画像をクリックすると、配信で見られます▲
(配信期間:5/24(金) 午後7:30~5/31(金) 午後7:57)

墓じまいに立ちはだかる困難

墓じまいをしたいが、思うように進まないと悩んでいる人がいます。

横浜市で木工製品の職人として働く、稲田孝史さん(59歳)です。

稲田さんの先祖代々の墓があるのは、父親のふるさとでもある愛媛県です。

奈良県に住む父親は、就職を機にふるさとを離れたあとも、墓の管理を担ってきました。

ところが、5年ほど前に父親の体調が悪化。稲田さんは父親に代わって、愛媛県まで通うようになりました。

稲田さんと父親

稲田孝史さん
「おやじに、墓を見に行ったよって言ったら、やっぱり喜ぶんでね。おやじも、自分で墓の管理ができないことをすごく気に病んでいて」

しかし、遠方に墓参りに出向く負担は大きく、稲田さんは父親に墓じまいをしようと相談しました。

すると、父親から「自分が住む奈良に墓を移して世話をしたい」と言われ、戸惑ったといいます。

「奈良に墓が残されると、一緒じゃないですか。奈良も結局、俺が墓じまいすることになりますよ。『その負のバトンはやめよう、よく考えてくれ』と言ったら、父親と大げんかになりました」

1年にわたる話し合いの末に、家族の気持ちはまとまりました。

墓じまいをして永代供養することにしたのです。

永代供養とは、費用を支払うと寺院や霊園が一定期間、管理や供養を担ってくれるものです。

しかし、いざ実行に移そうとすると、また、壁が。

先祖の多くが土葬されていることが判明。寺の住職から遺骨を掘り出すのは簡単ではないと言われたのです。

「2メートルぐらい掘って、そこに棺おけを入れて埋めているので、土葬のお墓を掘るだけでも大変らしいんです。

手を合わせる気持ち、ご先祖様に感謝する気持ちはありますけれど、でもやっぱり生きている者には生きている者の生活があって、手を合わせたい気持ちを上回って負担になる気持ち、これ、何なんだろうと」 

費用のトラブルも

墓じまいを選ぶ人が増える中、費用をめぐる悩みを抱える人も少なくありません。

都内で墓や供養に関する相談にのっているNPO法人。最近、増えているのが不明瞭な費用をめぐる相談です。

70代の男性は寺に墓じまいをしたいと伝えたところ、離檀料という名目で500万円を求められたといいます。

いわゆる離檀料とは、謝礼として納めることがあるお布施ですが、近年高額を要求されるケースが目立っています。

墓じまいには行政への届け出が必要で、墓の管理者である寺などに書類を書いてもらう必要があります。

そのため疑問に思いながらも応じてしまうケースが少なくないといいます。

NPO法人 終活サポートセンター  水上由輝徳理事長
「お寺さんの中では、出ていくための、お別れするための手切れ金みたいなイメージで、果たして適正な金額なのかというところですね。

墓地の使用規則に”出ていくときにはいくら払ってください”と書いてあれば分かるのですが、書いていないのに一方的に請求してくるので、どうなのかと問題になることがあります」

“墓じまい”の費用やうまく進めるためのポイントは

住職でジャーナリストの鵜飼秀徳さんによれば、「こうした高額な離檀料を要求するケースは実際にあるものの、あくまで一部」だということです。

国民生活センターも注意を呼びかけています。

「離檀料に明確な基準はなく、金額に納得がいかない場合は基本的には寺などと話し合うことになる。わからないことがあれば、住んでいる自治体の消費生活センター(消費者ホットライン188)などに相談してほしい」としています。  

「墓じまい」には、どのような費用がかかるのでしょうか。鵜飼さんによれば、墓のある地域や宗教・宗派、墓地の管理者によって異なるものの、以下の費用が目安になるということです。

都内でおこなわれた墓じまいの様子

・墓石を撤去してさら地にする費用が1平方メートル・平地で20万~30万円程度

・墓石撤去の際に供養してもらう儀式の費用が1回分のお布施と考えると3万~5万円程度

・遺骨を取り出して新しい場所に引っ越す「改葬」で、例えば都心の納骨堂に入れ一定期間管理や供養をしてもらう場合は1体につき70万~80万円程度

・お墓が遠隔地にある場合、上記に加え交通費も

(※仏教の場合)

墓じまいを行う際のポイントについて、お墓や弔いの方法に詳しい日本葬送文化学会の長江曜子会長に聞きました。

日本葬送文化学会 長江曜子会長
「まずは、お墓の話をタブーにせず、墓に入る可能性のある親・きょうだいと話し合って、意向を確認すること。そのうえで寺や墓の管理者と十分にコミュニケーションをとることが重要です。

多額の費用がかかる場合もあるので、複数の見積もりをとってください。墓じまいが難しければ、墓参りの代行サービスなどの選択肢もあります。

墓は単なる遺骨の置き場ではなく先祖に手を合わせる場所でもあり、先祖を弔うことは生きている人の人生にとって重要なことです。家族や寺、墓の管理者などが、新しい弔いのしかたを探ってほしいと思います」

様変わりしているお墓のニーズ。「お墓のサブスクサービス」など、新たな弔いのかたちを選択した人たちを、後編の記事で紹介します。

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