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「墓じまい」経験者 決断の背景と今の思いは? 専門家にポイントも聞きました

シリーズ「人生のしまい方 あなたは」
  • 2024年3月6日

現代日本の「人生のしまい方」について視聴者の皆さんといっしょに考えていくシリーズです。

シリーズ第1弾は「お墓」をテーマに、これまで、「合葬墓」や「墓友(はかとも)」について取り上げてきました。第1弾の最終回は、今あるお墓を片づける「墓じまい」について。経験者の葛藤や決断の背景、今の気持ちについて、詳しくお伝えします。

墓じまいを考える際の考慮すべきポイントについても、専門家の方に聞きました。

「人生のしまい方」、「お墓」、みなさんの抱えている悩みやご意見、体験談などをもとに取材を進めていきます。投稿はこちらまでお寄せください。

(千葉放送局記者・金子ひとみ)

街角で出会った墓じまい経験者

1月下旬、錦糸町駅前でお墓についての街角インタビューをしていたところ、偶然「今、墓じまいの手続きを進めているまっただ中です」という60歳の男性に出会いました。

墓じまい経験した男性(60)

神奈川の遠いところに先祖代々のお墓があるんですが、そこをとじて、都内のすぐ通えるところに移そうとしています。墓じまいをして中に入っているお骨を全部新しいところに移すんです。今はお参りに行くだけでも一日旅行になってしまうんで、電車1本で行けるところに変えたかったんです。

ぼくは娘しかいなくて、次を継ぐ人がいない。どうしたらいいかわからないので、先祖代々のみなさま、ごめんなさいということで、決めました。誰も見る人がいない場所よりは、見る人がいる場所の方がいいかなと思ったんです。ぼくや娘が通えるうちは通って、その後は永代供養です。

この男性、もともとのお墓を整理している最中、思いがけないことが起こったそうです。

お墓に入っていると記録されている人の数よりも、中に入っている骨の数の方が多かったんです。記録では4体となっているのに7体出てきて、なんでこんなにいっぱい入っているの?とわけが分からず、びっくりしました。

この大変な思いを自分以外の誰かにさせたくない。誰も継ぐ人がいなければ、墓じまいせざるを得ないのは当然ではないかなと思います。

「3年ぶりにお墓参りしたら墓石がずれていた」

墓じまいしようかどうしようか迷っている中で、あるきっかけで決断したという人を取材しました。

埼玉県久喜市に住む布川(ぬのかわ)勇さん(75)です。

自宅近くの「白岡霊園」にあるお墓には、13年前に亡くなった妻が眠っています。ここに去年、出身地の山形県村山市にあったお墓から、両親と祖父母の遺骨を移しました。

埼玉県白岡市にあるお墓

コロナ禍で帰省を見送る日々が続き、3年ぶりにお墓を訪ねて目にしたのは、荒れ果てた姿でした。

山形県村山市にあったお墓(2022年9月)
山形県村山市のお墓への道(2022年11月)
布川勇さん(75)

上の背の高い墓石がずれてたんです。雪の重みなのか、雑木なのか、原因は分からないんですが。3年間放置していた状態に近いから、草もぼうぼうだし、近所のお墓の人たちも「布川さんち、大丈夫かな」ということになるだろうし、「これは考えどころかな」と。

墓に眠る父親に「親父、首降っちゃったね」って話しかけて、墓じまいのことを相談したら、「お前の好きにやっていいよ」と言ってる感じがして、具体的に動き始めました。

2歳から11歳離れた4人の姉は、おのおの別の場所に住み、高齢で管理を頼むわけにもいかなかったといいます。姉たちにも相談の上、布川さんは、管理し続けるのは難しいと考え、墓じまいを決断しました。

お墓を撤去してさら地に(2023年9月)

せめて山形の記憶を残そうと、遺骨を移した白岡霊園の墓碑には故郷の地名を刻みました。

この「村山市」というのはなんとしても入れたかったんです。私には子どもはいませんが、おいやめい、次の世代が見に来た時に、「ああ、おじさんが記録したんだな」って分かるでしょ。

これが正解なのかは分からないけれど、私なりの解が墓じまいでした。

先祖代々のお墓は、後を継ぐ者がちゃんと管理・供養していかないと成り立たないんだろうなと思うんです。気持ちの整理というか、安どというか、落ち着きというか、そういうものが得られるところに移すというのが一番いいのかなという気がします。年を取って物理的に遠いところに行くのは大変ですから。

お墓に眠る両親によく聞くんです。「いなかのお墓より狭いけど、大丈夫?」って。「狭くないよ」って言ってくれてる気がしています。

墓じまい含む「改葬」の件数は過去最多に

墓じまいなどで墓から取り出した遺骨を別の場所に移すことを「改葬」と言います。

厚生労働省は毎年、衛生行政報告例という統計のなかで、「改葬」の件数を発表しています。最新の統計によりますと、「改葬」の件数は、昨年度(2022年度)は全国で15万1076件にのぼり、過去最多となりました。

2002年度は7万2040件、2012年度は7万9749件でした。この20年間で「改葬」の数は2倍以上になっています。

今回、布川さんの墓じまいを担当したニチリョク マーケティング本部企画部の細田香奈恵さんに、最近の傾向について話を聞きました。

細田香奈恵さん

墓じまいに関するお問い合わせやご依頼は非常に増えています。弊社でも以前は、墓じまいは支店に所属する課でしたが、昨年からは部として独立させ、担当者も増員しています。

最近は、墓じまいした後、デジタル技術を活用したお墓を利用する方もいます。納骨堂の参拝室にモニターを設置し、クラウド上に保存した家系図や思い出の写真を表示できるようなサービスもあります。

投稿の女性「葛藤もあったけど、墓じまいしてすっきり」

このシリーズ「人生のしまい方 あなたは」の投稿フォームにも、埼玉県に住む50代の女性から「墓じまいを終えてすっきりした」という経験談が寄せられました。この女性とのやりとりもご紹介します。

Q.今回、投稿してくださった理由を教えてください。

50代女性

周りから「どうやって墓じまいできたの?」とよく聞かれるんです。「墓じまいってできるものだよ」っていうのを知らせるのもいいかなと思いました。

Q.経験した墓じまいの概要を教えてください。

私が20歳ぐらいのころから、父に「墓を守るように」と言われ続けてきました。それがすごく負担で嫌で反発して。「自分の子どもに同じ思いをさせたくない」一心で、父母が亡くなった後に墓じまいをしました。納めていた遺骨は、近くの合葬墓に移しました。費用はトータルで90万円ほどでした。

お金はかかりましたが、きょうだいがいないから、私ひとりで決断できたのは良かったです。

Q.墓じまい終えてどのような気持ちですか?

墓じまい後、さら地になったのを見た時に、「ああ、これで私、安心して死ねる」って思いました。それまで「お墓を残して死ねない」と思っていたので。すっごくスッキリしたんですよ。

ただ、同時に葛藤もあって、すごく親不幸なことをしているような気がして、知人に相談したら、「荒れ放題になったり無縁墓になったりしている人がたくさんいる中で、きちんと整理して、あなたはちゃんとしているいい人なんだよ」って言ってもらえて、すごく救われました。

小谷みどりさんに聞く 墓じまいのポイント

墓じまいについて、墓や終活に詳しいシニア生活文化研究所の代表理事、小谷みどりさんに聞きました。
Q.なぜ、墓じまい(改葬)の数が増えていると考えますか?

小谷みどりさん

先祖の墓が自分が住んだこともない遠いところにあるという方が増えていて、維持が難しいということでしょう。ライフコースが変化して、出身地にずっと住み続ける人が少なくなりました。墓参りに行きたくても家族全員で行くと交通費がばかにならないという事情もあるでしょう。

お墓が近い場合でも、傾斜地で掃除するのも一苦労で、高齢になると大変というケースもあり、墓じまいや改葬の増加につながっていると考えられます。

Q.国民生活センターによると、墓じまいをめぐる、寺院や工事業者とのトラブルの相談が増加傾向にあるということでした。寺院や業者とのやりとりで注意すべきことはありますか?
 

お寺さんは今までお墓を管理してくれていたわけですから、いきなり「墓じまいします」って言うとお寺さんもびっくりされます。まずはごあいさつに行った時に「今までお世話になりました」と、内々のお礼をお渡しして感謝の気持ちを伝えればよいのではないでしょうか。

業者とのトラブルは、想定以上にお金がかかったというものが多いと思います。それを避けるためには、細かく見積もりを取ることが重要です。もともとの墓をさら地にするのにいくらかかるのか?重機が入ることでいくらかかるのか?一方、新たな墓への引っ越しや納骨にいくらかかるのか?細かく確認することをおすすめします。

Q.墓じまいに関して、家族間で意見が異なる際には、どうすればよいでしょうか?

親族みんな同じところに墓地があって、その親族が出て行った方のお墓を守っていたのに、出て行った方が勝手にお墓を移そうとすると、よく思われないことはありうるでしょう。実行する前にしっかり話し合うことが重要でしょう。

また、必ずしも、お墓を移すということだけが選択肢ではありません。お墓をその地に置き続けるためにはどうしたらいいのかを考えるのも一案です。例えば、シルバー人材センターにお願いすれば墓参り代行してくれるところも多いですし、ふるさと納税でも多くの自治体が墓参り代行のサービスを提供しています。お金は必要ですが、お寺さんに永代供養を頼む方法もあります。

Q.墓じまいに関して、一般の方へのメッセージをお願いします。

お墓をしまうことに抵抗を持っている方、自分の代で先祖の墓が継承できなくなって申し訳ないという思いを持っている方は、たくさんいらっしゃいますが、お墓のあり方が今のライフスタイルや家族のあり方にミスマッチしてきているのであって、決して個人の問題ではないということを言いたいです。

お墓は遺骨を納める場所であり、残された方が死者と向き合う場でもあるわけです。お参りするのは残された方なので、残された方にとってお参りしやすい場所かどうかという観点でお墓を考えるということも大事だと思います。

「首都圏ネットワーク」での放送内容は、3月13日午後6時30分まで「NHKプラス」でご覧いただけます。

ご意見・ご感想をお寄せください

現代日本の「人生のしまい方」について視聴者の皆さんといっしょに考えていくシリーズ。

ご意見も募集しています。投稿はこちらからお願いします。

取材後記

私(金子)の実家近くのお寺には、先祖のお墓が20ほどありました。ひとりひとつのお墓を持つ慣習があったために、お墓の数が多かったとのことでした。祖父母が亡くなってしばらくたった2018年、墓じまいではないですが、親がお墓の整理をしました。今回、父に感想を聞いてみると、「管理もしやすくなって気持ちもすっきりした」と話していました。

お墓に関して一歩踏み出すのは勇気がいるかもしれませんが、「今後のことを踏まえて、今あるお墓に変化を加えた方がいいのではないかと考えてみる、立ち止まってみる」という姿勢をまず持つことは大事なのではないかと思いました。

  • 金子ひとみ

    千葉放送局 記者

    金子ひとみ

    千葉を離れることになりました。5年半の間、ありがとうございました。

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