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「墓友」って?同じお墓に入る人たちが生前にゆるくつながる

シリーズ「人生のしまい方 あなたは」
  • 2024年2月29日

現代日本の「人生のしまい方」について視聴者の皆さんといっしょに考えていくシリーズです。

死後、複数の遺骨を合同で納める「合葬墓」に入る予定の人たちが、生前からさまざまな交流を持とうとする動きがあります。こうしたつながり、「墓友(はかとも)」と呼ぶのだそうです。気楽な取り組みを通じて、ゆるくつながっている神戸市の「墓友」について取材してきました。

「人生のしまい方」、「お墓」、みなさんの抱えている悩みやご意見、体験談などをもとに取材を進めていきます。投稿はこちらまでお寄せください。

(千葉放送局記者・金子ひとみ)

同じ墓に入る人たちが「墓友」として交流

神戸市東灘区にある大規模な墓地、住吉霊園です。

その一角にある「永遠」と彫られた合葬墓。兵庫県内で訪問介護やデイサービスといった介護事業などを展開する兵庫県高齢者生協が設置しています。

住吉霊園の合葬墓「永遠」

兵庫県高齢者生協はこのほか、神戸市西区の神戸平和霊苑の中にも合葬墓を設置しています。納骨料や永代供養料の合計としてかかるのはひとりあたり10万円から20万円で、毎年の維持費などは必要ありません。2つの合葬墓には256人の契約者がいますが、半数以上は生前契約者、生きているうちからこの墓に入ることを決めた人です。

神戸平和霊苑の合葬墓「永遠」

生協が毎月2回開いている一般向けの終活セミナーでも、この合葬墓のことを説明しています。

兵庫県高齢者生協による終活セミナー

スライドで紹介しているのは、合同の墓参り会や食事会のイベントの写真です。これらのイベントに参加しているのは、死後、2つの合葬墓に入ることが決まっている人たちです。

契約者による生前の交流、ここでは同じ墓に入るものどうし、「墓友」と呼び合っています。

こうしたつながり、「生きているうちに顔を合わせる機会があってもいいのではないか」という声を受け、10年前から始まりました。

墓参り会で歌を歌う様子

「墓友」による年2~3回の昼食会や墓参りには、毎回30人ほどが参加しているということです。参加は任意で、してもしなくても自由です。

「墓友」に聞いてみると

昼食会や墓参りのイベントに積極的に参加している「墓友」の桂辰治さん(77)と朝川幸子さん(74)に話を聞きました。

桂辰治さん(左)、朝川幸子さん(右)

桂さんは終活セミナーに参加し、合葬墓は管理する必要がなく、自宅からも近いところにひかれ、2018年に生前契約。出身地・京都にあった桂家のお墓は墓じまいしました。昼食会の案内はがきが来て、参加してみたところ、肩肘張らずに楽しむことができたといいます。

桂辰治さん

普通、知らない人と食事すると、緊張して食べるのもおいしく食べられないという感じだけど、そうはならなかったですね。共同墓が取り持つ縁というかつながりなので、お互いを知らなくても、そんなに抵抗はないです。

2回目からは、「場を和ませたい」と昼食会のあいさつの場で川柳を披露することもあったそうです。

2つぐらい川柳を事前に用意してね。隣の方が、「リハビリ体操している」と言っていたので、それにあわせて「リハビリに 足腰鍛え 膝痛め」って言いました(笑)。高齢になると、ひとりになりがちだけど、みんなで集まって食事するというのは大事だと思いますね。

「『墓友』は深くない、気楽な関係」

一方、神戸市内の自宅を売却して、今はサービス付き高齢者向け住宅で暮らす朝川幸子さん。

合葬墓のことは、仲のいい友人から聞きました。

朝川幸子さん

職場の後輩の墓の悩み相談にのっていたときに、友人から合葬墓のことを教えてもらって、「それ、ええやん!」って。墓のお守りしなくていいし、自分の入ったあと、管理してくれる人がいるかどうかまで考えなくていいでしょ。

2022年に合葬墓を契約してからは、毎回欠かさず昼食会に参加しています。

友人の故・柿本京子さん(左)と朝川さん(右)

同じ墓に入る者どうし、やっぱりお顔くらい知ってる方がいいかなとか思うので。ただ食事してバイバイですよ。一同に集まっておいしいもの食べて、終わったらまたね、という感じ。墓友はあっさりしてます。深くはないですよ、気楽ですよ。

夫や、合葬墓のことを教えてくれた友人はすでに亡くなり、ここに納骨されています。朝川さんは、同じ死後のすみかを選んだという縁を大事に、今後も「墓友」と無理なく関わっていきたいと考えています。

朝川幸子さん

お父さん(夫)もきっと、自分たちの家族だけのお墓よりも、こうやっていろんな人と一緒の墓に入ることを喜んだんじゃないかな。私がこの墓に入るまでは、これまでどおり「墓友」とのつながりを作っていきたいですね、ベタベタはしないけど。

交流を支えるこまやかな配慮

桂さんと朝川さんが、ともに「この人のおかげで『墓友』活動が成り立っている」として名前を挙げたのが、兵庫県高齢者生協の合葬墓担当・藤山孝さんです。

「墓友」の交流には、製薬会社で営業担当を長く務めた藤山さんの培ったノウハウが随所に生かされています。まず、昼食会や共同献花祭のイベントがある際には、往復はがきで出欠を取ります。

藤山孝さん

10年前にイベントを始めた当初は、はがきの返信率は6割ぐらいだったんですね。でも、今は9割ぐらいになっています。毎年同じ時期に同じイベントの案内を送るので、認識してもらっているのだと思います。封書だとちょっと大げさなので、はがきぐらいがちょうどいいんですよね。

欠席の方には、なにかひとこと記載してもらう形にしています。「卓球がんばっています」とか「病気の治療中です」とか、人それぞれです。

昼食会のプログラムで必ず盛り込むのが、参加者全員に近況報告をしてもらうこと。

自身のことを人前で話すという機会も少なくなってきますから、自分の存在感を確認するいいチャンスではないかなと考えています。

年4回刊行している季刊誌では、写真をふんだんに使ってイベントの開催報告をしています。

ただ、藤山さんが一番大事にしているのは、「無理強いをしない」ということです。

無理強いはしない。ご案内はみなさまに差し上げますけれども、決して強制はしない。お墓に入ることだけを目的と考えておられる方は、その意思をもちろん尊重します。

契約には動機があり、それは個々それぞれです。それぞれの契約者の気持ちを大切にして、決して無理強いはしない、無理なお誘いはしないということでやっています。

「墓友」について専門家は

お墓や終活に詳しいシニア生活文化研究所代表理事 小谷みどりさんは、「墓友」という関係があると、血縁関係のない人と同じお墓に入ることへの安心感につながると指摘します。

小谷みどりさん

血縁をこえて墓に入る、赤の他人どうしの遺骨を一緒に納めるというのに抵抗がある方もすごく多いと思うんです。それはどんな人か分からないからです。まったく見ず知らずは嫌なので、顔見知り程度の人だと安心ねという方がいらっしゃると思います。「墓友」には、元気なときに一緒にお話をしたり、一緒にお茶を飲んだり、ゆるく支え合える仲間ができるというメリットがあるんじゃないかなと思います。

「墓友」は、血縁ではない横のつながり、社会による弔いのひとつの姿と言えそうです。

知らない人が、同じ墓に入るから、生前に仲良くなっておく「墓友」というケースもあれば、もともと生前に仲良かった人どうしが血縁を超えて同じ墓に入ることを約束する「墓友」もあり、決まった形があるわけではないと思います。「どんなお墓に入りたいか」というのが合致する方というのは、ライフスタイルやバックグラウンドが似ているというケースがすごく多いですよ。

生前のコミュニティーの延長として合葬墓が作られる例はほかにもあり、関東では、栃木県那須町にある高齢者向け住宅で、入居者が利用できる合葬墓が設置されています。

ご意見・ご感想をお寄せください 

現代日本の「人生のしまい方」について視聴者の皆さんといっしょに考えていくシリーズ。

ご意見も募集しています。投稿はこちらからお願いします。

「首都圏ネットワーク」での放送は、「NHKプラス」で3月7日(木)午後6時30分までご覧いただけます。

  • 金子ひとみ

    千葉放送局 記者

    金子ひとみ

    墓友のゆるさがいいなと思い、神戸まで取材に行きました。

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