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1人暮らしの終活 やり方は?エンディングノートは?東京都豊島区などが支援

  • 2023年7月7日

亡くなった後に引き取り手のない人が、およそ4年で10万人を超えていることが国の調査で初めて分かりました。
引き取り手のない遺骨を保管している自治体の担当者によると、「95%以上が身元のわかる遺骨」(横須賀市終活支援センター)。家族や親族に連絡しても、引き取ることを拒否されるケースが相次いでいるのです。

夫婦の離婚や、核家族化、結婚しない人の増加によって、1人で亡くなる人が増えています。そうした中で、いま求められているのが「1人で死を迎えるための終活」です。準備を始めた1人暮らしの人たちを取材し、納得して人生を閉じるためのヒントを探りました。

(首都圏局/ディレクター  阿部和弘・山根拓樹・竹前麻里子)

終活の支援を始めた自治体

東京都豊島区のマンションで1人暮らしをしている女性(62歳)は、4年前、30年連れ添った夫を亡くしました。

生前、亡くなったあとのことについて夫とほとんど話したことはなく、どんな葬儀にすればいいかわからず苦労したといいます。

1人暮らしの女性
「1年間、ほとんど事務手続きに追われました。主人が亡くなったあと、すごく大変な思いをしたので、息子やお嫁さんにはそういう思いをさせたくないです。突然逝く人もいるので、やっぱり早め早めに終活をやっておいたほうがいいかなと思いました」

女性は誰にも迷惑をかけず、1人で死を迎える準備をすすめるため、「豊島区終活あんしんセンター」を利用することにしました。豊島区は1人暮らしの高齢者の割合が日本一高く、終活を支援する新たな取り組みを去年から始めています。

女性が利用したのは、終活に関する情報を区に登録する事業です。エンディングノートや遺言書の保管場所、緊急連絡先などを登録。病気や死亡などで意思表示ができなくなったとき、必要に応じて、区から家族や警察などに伝え、本人が希望の最期をとげられるようになっています。

女性は、希望する葬儀の方法や、墓をどうしたいかなど、エンディングノートに細かく記入。遺骨は故郷、沖縄の海にまいてほしいと希望しました。

1人暮らしの女性
「夫の骨つぼを自宅で保管しています。夫も生前『沖縄の海に散骨でいいよ』と言っていたので、私が亡くなったときに一緒に沖縄の海にまいてもらおうと思っています。

整理がつきますよね。亡くなってからこうやって、こうやってという運びが大体わかるので、ちょっと安心しました」

さらに豊島区は、外出が難しい高齢者の自宅を訪問し、登録者を増やす取り組みもはじめました。

80代女性の家を訪れた 豊島区民社会福祉協議会の職員(左)

1人暮らしなど、孤立しがちな高齢者を定期的に訪ね、見守り、支援につなげる担当者がこの日訪れたのは、1人暮らしをする80代の女性。3年ほど前に足を悪くし、外に出歩くことが難しくなっていました。区の担当者は、もしものときに備え、女性の意思を親族などに伝えられるよう、区に情報登録することをすすめました。

80代女性
「登録したほうがいいかもしれない、私1人だからさ。登録しておくだけでも安心感がありますよね」

区では、葬儀や墓をどうしたいかなど、エンディングノートの書き方を伝える講座も開催しています。5月に開かれた講座には60代から80代まで定員いっぱいの40人が参加しました。

参加者からは、「70歳になったら終活をしようと考えていたのでタイムリーでよかった」「エンディングノートを書こうという気になった」という声が聞かれました。

豊島区 高齢者福祉課主査 滝田 智也さん
ひとりでも多くの方に、エンディングノートなど終活に関する登録をしていただくことが、まずは大きなミッションだと思っています。その人らしい終活とかそういった取り組みにつなげていきたいです」

自分が住んでいる自治体が終活の支援を行っているかどうかは、自治体のホームページをご覧いただくか、市区町村にお問い合わせください。

支援受けず自ら終活するには…

さらにいま、行政などのサポートを受けずに、自ら「1人で死を迎える準備」を始めている人もいます。

茨城県に住む男性(83歳)は、妻と11年前に死別。がんとの長い闘病のすえだったこともあり、妻に死に際の意向を十分に聞くことはできませんでした。

1人暮らしの男性
「妻への供養のために、庭を花いっぱいにしようと思ったときはバラが浮かんだね。一番華やかだからね、バラは」

男性は、自分の死後のことは責任を持って自ら決めたいと考えてきました。葬儀会社は自分で探し、葬儀のプランも決め、費用も全て支払いました。自身の遺影を用意するだけでなく、葬儀場の入り口がさみしくないようにと、丹誠(たんせい)込めて育てた庭の花や、旅行などの思い出がつまった写真集も準備しました。

棺(ひつぎ)に入れる愛読書は、若い頃から繰り返し読んできたえりすぐりの2冊。葬儀で読んでもらう「お別れの言葉」まで自分で用意しました。

1人暮らしの男性
「喪主は代読すればいいんだから楽だろ。だから自分で書いたんだよ。あまり中身見せられないけどよ。『ここに感謝と反省を込めて私の生涯を閉じたいと思います。本日は本当にありがとうございました』と最後に書いてある」

おととし、前立腺にがんが見つかった男性。衰えを感じる中にあっても、趣味の日本画を描いたり、庭の手入れをしたりして、充実した毎日を過ごしています。

1人暮らしの男性
「痛いのや苦しいのは嫌だけど、自分の人生に対して不満はもうないよ。もう十分」

地域とのつながりも大切

1人暮らしの人が終活をする上で押さえておくべきポイントを、高齢者の死の備え方に詳しい小谷みどりさんに聞きました。小谷さんも12年前に夫を亡くし、1人暮らしをしています。

シニア生活文化研究所代表理事 小谷みどりさん
「みとる家族がいる、葬式を出す家族がいることが当たり前、という価値観を見直す時期に来ています。家族がいても、家族が要介護で死に立ち会えないケースも散見されています。

死について漠然と不安を抱えている人は少なくありません。その不安の正体が何かを整理してみると、自分が自立できなくなったときにどうするか、という問題であることが多いようです。

ならば、万が一の時に助けてくれる人がいるという安心を得ることも大切です。エンディングノートを書いて、自分の意思を伝えておく、SOSを出せる仕組みを整えておく、地域活動を通じて立ち話できる知り合いを作る。こうして安心できる環境が整えば、残りの人生を楽しむことができるのではないでしょうか」

小谷さんは毎朝、地域のゴミ拾いを行い、地域とのつながりを作っています。

記事の最初に紹介した、豊島区で1人暮らしをしている60代の女性も、同じマンションに住む女性と毎日のように連絡を取り合っています。2人は、夫を亡くし共に1人暮らしという共通点から意気投合。互いに頼りあう存在になりました。

お互いに助け合って生きています。

非常に心強いです。私は彼女がいることに。結局遠くの親戚より近くの他人ということですね。

そうだよね。

ささいなことでも、前向きになれることを通して誰かとつながる。そんなつながりがいざという時の支えになり、今をより豊かにしてくれるのではないでしょうか。

  • 阿部和弘

    首都圏局 ディレクター

    阿部和弘

    2010年入局。秋田局、報道局、名古屋局を経て2020年から首都圏局。 これまで震災や災害、人生最終盤を生きる人たちなどを取材。

  • 山根拓樹

    首都圏局 ディレクター

    山根拓樹

    2016年入局。ドラマ、静岡局を経て、2021年から首都圏局。 主に子どもの貧困問題について取材。

  • 竹前麻里子

    首都圏局 ディレクター

    竹前麻里子

    2008年入局。旭川局、おはよう日本、クローズアップ現代などを経て2021年より首都圏局。福祉、労働、性暴力の取材や、デジタル展開を担当。

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