WEBリポート
  1. NHK
  2. 首都圏ナビ
  3. WEBリポート
  4. 【後編】後藤記者が徹底解説 JRダイヤ改正2024 新幹線・京葉線・各地の在来線など

【後編】後藤記者が徹底解説 JRダイヤ改正2024 新幹線・京葉線・各地の在来線など

  • 2024年1月15日

※1月16日 京葉線のダイヤ改正見直しについて記事更新しました。

ことし(2024年)3月16日に予定されているJR各社のダイヤ改正。この記事の前編では、北陸新幹線や消えゆく自由席など、全般的に見てきました。後編では、JR東日本・JR北海道・JR東海・JR西日本・JR四国・JR九州各社の主なポイントを見ていきます。(前編はこちら

(首都圏局/記者 後藤茂文《鉄分超濃いめ》) 

前編に引き続き…

編集長

引き続き後藤記者に解説してもらおうと思うけど、後編ではJR各社ごとに、細かく紹介してくれるとのことですが…。

後藤記者

首都圏局なので、まずは身近なJR東日本から。その後一気に北へ行って、再び南下していきます。

 

ダイヤだけでなく、新型車両、あるいは廃止の動きなどさまざまありますね。スペース全部あげるので、思う存分お願いします!

JR東日本

(1) 山形新幹線に新型車両E8系投入

山形新幹線に新型車両のE8系が順次投入されることになりました。この新車導入によって、宇都宮~福島間の最高速度が時速275キロから時速300キロにアップ。東京~山形間の所要時間を最大4分短縮し、最短2時間22分で結ぶことになります。

(2)新幹線は増便
・利用が回復しつつあるとして、各方面の新幹線の定期列車を増発します。
主なものだと、東京と新青森、盛岡、秋田を結ぶ「はやぶさ」「こまち」が計9便、
東京と仙台を結ぶ「やまびこ」が10便、それぞれ増発されます。

・増発のほか、上越新幹線では、夜間工事の時間確保のため、東京から新潟、高崎行きの終電がそれぞれ20分繰り上がります。

(3)房総方面の特急が便利に
全席指定席となる房総の特急のうち「しおさい」に、成田エクスプレスで使われている「E259系」を投入します。E259系はWi-Fiや電源コンセントのある車両で、より快適な移動ができそうです。
また、成田エクスプレスで成田空港駅や空港第2ビル駅を利用区間に含まない場合、「しおさい」などの房総特急と同じ料金体系となります。

例えば、東京~千葉間に乗車すると、特急料金が1290円なのが、改正後は760円になり、530円安くなります。ネット予約を使うとさらに100円引きになるということで、空港アクセスだけでなく、東京~千葉県内の移動でも気軽に特急利用できそうです。

こうしたメリットもある一方で、利用状況を踏まえて、しおさい・さざなみ・わかしおについては、最大で10両による運行だったのが、5両または6両による運行となり、提供する座席数は削減されることになっています。

(4)その他の変更点
・神奈川県内を走る鶴見線や、常磐線(土浦~水戸、いわき~原ノ町)などで、車掌が乗務せず運転士のみで運行する「ワンマン運転」が実施されます。

・在来線の普通・快速列車について、本数や時刻、停車駅の見直しが多々あります。
たとえば首都圏では、東京と千葉を結ぶ京葉線で、朝と夕方以降の時間帯で快速と通勤快速の運行をやめ、すべて各駅停車にする予定です。この改正について千葉県知事や千葉市長が「容認できない」などと反発し、去年12月28日には、千葉市長が撤回と再考を申し入れたほか、ことしにかけて、経済界からも発言が相次ぎました。詳しくは千葉局のこちらの記事をご覧ください。

・その後1月15日、JR東日本の幹部が千葉市の神谷市長と面会し、要望への対応を説明し、現在、平日の午前7時半前後に東京駅に到着している上りの快速列車2本については、各駅停車とせず、引き続き快速として運行するということです。(上総一ノ宮 午前6時3分発 東京 午前7時25分着、君津 午前6時12分発 東京 午前7時35分着)
説明を受けて神谷市長は、「申し出を受け止めて、検討いただいたことはありがたいが、反映はごく一部にとどまっていて依然納得できるものではない」と述べました。
JR東日本千葉支社の土澤壇支社長は「影響について考えが至らなかった。ダイヤの見直しは異例だが、要望すべてに応えられたとは思っていない。今後は年に一度のダイヤ改正にとらわれず、運行のあり方を柔軟に検討していきたい」と話していました。

JR北海道

(1)札幌~新千歳空港の「エアポート」輸送力増強
札幌と新千歳空港を結ぶ列車「エアポート」について、日中に1往復増発し、1時間6往復となりました。
日中の「エアポート」には、特別快速、快速、区間快速と3つの種別がありますが、すべて「先発・先着」です。つまり、後からの列車が、先の列車を追い越すことがないので、乗客にとって分かりやすいダイヤとなっています。
この区間は国内外の観光客や地元の利用客で特に混雑しており、増発で混雑緩和に期待がかかります。
また、新千歳空港発の終電を28分のばした、午後11時21分発の便を新たに設定し、深夜に空港に到着する利用客の取り込みを狙います。

(2)根室本線、一部廃線前に増発
今年度末限りで廃線が決まっている、根室本線の富良野~新得間。
廃止区間の中には、映画「鉄道員」のロケ地にもなった駅(「幌舞駅」の看板がかかった南富良野町の幾寅駅)が含まれ、廃線を前に多くの乗客が見込まれています。
この需要に対応しようと、富良野~東鹿越間で日中に1往復増便することが決まっています。廃線を目前に運行本数を増やすというのは、興味深いですね。

(3)無人駅の廃止
経営状態の厳しいJR北海道は近年、ダイヤ改正に合わせて利用客の極めて少ない無人駅の廃止を続けています。
今回廃止対象となったのは、石勝線の滝ノ上、宗谷本線の初野・恩根内、石北本線の愛山、函館本線の中ノ沢、以上の5駅。
無人駅であっても、除雪や保守点検などのため、1駅あたり年間およそ100万円の経費がかかるということで、沿線自治体が経費を負担するかどうかや、通学利用の有無なども踏まえて、今後も無人駅の廃止検討は続くとみられます。

JR東海

(1)新幹線の改善
東海道新幹線の利用が好調なこともあって、臨時列車を増設して利用の多い時期に対応することになりました。
・具体的には、東京~新大阪間の臨時列車「のぞみ」を早朝・夜間に計3本増設します。この中には、東京行きの定期最終列車の「のぞみ」より6分遅い、新大阪午後9時半発の臨時「のぞみ」も含んでいます。
さらに、去年3月に東急・相鉄の新横浜駅が開業したことを受けて誕生した、新横浜6時3分発の新大阪行き臨時「のぞみ」を、連休の初日や繁忙期などに博多まで延長して運行することにしています。これにより、東急や相鉄の沿線から、中国・九州地方へより早く到着できるようになります。
このほか、東京から岡山に行く新幹線の終電を6分繰り下げて午後8時39分とするなどの改善を予定しています。

・「ひかり」については、夜間に静岡や浜松、豊橋に停車する下り列車を増やします。

・「こだま」では、三島や新富士の下りの始発をおよそ40分繰り上げ、関西での滞在時間を増やせるよう改善します。

JR東海の315系

(2)中央本線でスピードアップ
名古屋と岐阜県の中津川を結ぶ中央本線の全ての快速・普通列車の車両を、2022年に登場した新型「315系」に統一し、最高速度を時速110キロから130キロへ、一気にスピードアップします。
朝夕の時間帯では、名古屋~多治見間で平均1分、名古屋~中津川間で平均3分短縮します。
特急でもない在来線列車で最高時速130キロというのは、なかなか珍しい存在で、スピードアップによる在来線のダイヤ改正というのも、近年ではまれですね。
改正後にぜひ乗ってみたいところです。

JR西日本

(1)山陽新幹線の改善
・博多から東京への最終列車で、博多発車の時刻を1分繰り下げ、午後7時となります。午後7時台に東京行きの終電を設定するのは、初のことです。

・また、臨時「のぞみ」設定を増やし、午前8時台から午後7時台まで、新大阪から広島や博多方面の速達列車が1時間に最大9本運行できるようになりました。

特急「やくも」 2024年春以降運行予定の新車

(2)山陰方面の特急改善
・山陰方面の特急「やくも」(岡山~出雲市)について、岡山での山陽新幹線との乗り換えの時刻を見直し、近畿圏と米子・出雲エリアの所要時間を最大14分短縮します。

・特急「スーパーはくと」(京都・大阪~鳥取・倉吉)は、1日6往復または7往復だった大阪~鳥取間が、1日8往復に増発されます。こちらは、姫路での山陽新幹線の乗り換え時刻を見直し、首都圏と鳥取エリアの所要時間を最大27分短縮します。一方で、一部の列車は京都発着から大阪発着に変更となります

(3)  通勤時の有料座席サービス拡大
最近、首都圏や関西圏で拡大している、通勤時間帯の有料座席サービスですが、大阪周辺でも新たに設定されます。平日の朝夕に奈良と新大阪を結ぶ通勤特急「らくラクやまと」が新設されます。また、去年10月から大和路線やおおさか東線の平日朝に導入された「快速 うれしート」の設定本数を拡大し、さらには土休日にも新設されます。

JR四国

(1)パターンダイヤとタクトダイヤ
乗客の利便性向上を目指し、香川や徳島、高知の路線で「パターンダイヤ」や「タクトダイヤ」を導入します。
・「パターンダイヤ」とは

各時間の列車の発車時刻を概ね統一するというもので、JR四国は最近のダイヤ改正で積極的に導入しています。
今回の改正では、高知県の土讃線の高知~伊野間で午前11時から午後3時の間、高徳線では香川県の高松~引田間で午前10時から午後4時の間、それぞれ発車時刻がおおむね統一されます。このパターンダイヤにより、土讃線では普通列車が増発されるということです。

・「タクトダイヤ」とは

列車の到着時刻と出発時刻を同じ時間帯に集中させるというものです。「タクト」とはドイツ語で指揮棒のことで、指揮者のタクトにあわせて公共交通が連動するのをイメージしているといいます。徳島駅でタクトダイヤを新たに取り入れ、徳島駅で各方面に向かう乗り継ぎがスムーズになると見込まれています。

(2)駅の無人化
四国4県のあわせて11駅が無人駅になります。
無人化の対象となったのは、愛媛県の伊予市駅や香川県の端岡駅と高瀬駅、徳島県の板野駅など6駅、高知県の旭駅と伊野駅です。
32あった駅のみどりの窓口を半減させたり、駅旅行センターの大半を閉店させるなど、経営状態が極めて厳しいJR四国は、経費削減や省力化に注力しています。
駅の無人化を進める一方、乗車券や定期券を購入できるスマホのアプリをおととし登場させるなど、新たな鉄道利用の形を模索しています。

JR九州

特急「ソニック」

(1) 各地で輸送改善へ
・朝夕の時間帯に博多などを発着する列車の運行を見直し、利便性の向上を計ります。
博多と大分を結ぶ特急「ソニック」が一部の上り列車で停車駅を増やすほか、
朝の時間帯に運行する佐賀発博多行きの「かささぎ」を1本減らし、代わりに博多行きの「リレーかもめ」を1本増やします。

・普通列車では、鹿児島本線の福岡エリアで平日朝の時間帯に運行していた2本の臨時列車を定期列車として毎日運行し、うち1本は区間も延長します。福北ゆたか線では朝8時台の博多行きを1本増発します。

・このほか、西九州新幹線の開業に伴って在来線特急の本数が削減された、佐賀県内の長崎本線の区間では、午後10時台の下りの普通列車が1本増えることになりました。

JR九州では近年、大きなダイヤ改正が相次ぎました。
ローカル線や地方の県都周辺だけでなく、九州で最も人口が集中する福岡エリアでも、減便が続きました。おととしのダイヤ改正では、29駅で無人化、48駅できっぷの販売窓口を廃止するといった、厳しい合理化も行われました。
こうした近年の動きについては、乗客だけで無く、沿線自治体からも反発が相次いでいました。
今回のダイヤ改正では、厳しい意見が寄せられ続けた中で、一定の輸送改善がみられるものとなりました。
JR九州も本業の鉄道事業は苦境にありますが、事業の持続性と乗客の利便性を両立させる取り組みをしっかり続けてほしいところです。

おわりに

各社のダイヤ改正の変更点は膨大で、これまで紹介したもの以外にも、大小さまざまな変更点があります。時刻だけで無く、特急料金など、価格に関する変更点もあります。
詳しくは、来月(2月)下旬に発売される時刻表や各社のホームページを確認するのがよいでしょう。
ダイヤ改正は多くの利用客にとって、ふだん使う列車の時刻がどう変わるのか、料金はどうなるのか、気になるというのが一般的かと思います。
一方で鉄道ファンにとってダイヤ改正の時期は、1年の中でも特に忙しくなり、「鉄オタの正月」とも呼ばれたりしています。
新しく開業する路線や駅があれば、廃止、無人化される駅もあります。その様子を写真に収めたり、廃止予定の区間のきっぷを買ったり。あるいは開業初日の路線に乗ったりと、楽しみ方は実に様々です。
年度末で春休みにも入る3月。北陸新幹線の延伸区間や、廃線予定の富良野周辺など、各地の沿線がにぎわうはずです。
この正月休みを使って、私も3月の「鉄オタの正月」、どう過ごすか思案しています。
皆さんはダイヤ改正、どう受け止め、あるいは楽しみますか?

編集長

全国のJRの99.7%に乗ったという後藤記者。残すのはあと2つと聞いていますが、そのスケジュールを思案するのかな。

後藤記者

宮崎県の南宮崎と鹿児島県の志布志を結ぶ日南線の一部(飫肥~志布志)と、上越新幹線の越後湯沢とガーラ湯沢の間が残っているので、どう達成するか考えます。

 

首都圏局は新潟県も放送の範囲に入っているから、首都圏局の記者としては、ぜひ、ガーラ湯沢で乗りつぶしを達成してほしいな。

すでに今年度末(2023年度)にかけて、窓口がなくなる駅や新線、廃線区間の訪問と、すでにスケジュールがタイトになってきていて…来年度(2024年度)中までには、100%にしたいですね。そして、まだ75%程度にとどまっている私鉄完乗を目指すことにしています。JR線完乗の瞬間は、どこかで皆さんにお伝えしたいですね。 

ページトップに戻る