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「原稿代筆」問題 現職議員が証言~千葉県の袖ケ浦市議会~

地方議会のリアル(8)
  • 2023年10月20日

1)袖ケ浦市の原稿代筆問題とは
2)市議会議員の証言「代筆は議会の“当たり前”だった」
3)慣例が続いた理由は・・・「議会と市側の利害が一致した」
4)元幹部の証言「議会ともめ事避けたい」
5)ほかの議会でも同様の事例か

議員が議会で読み上げる原稿を市の職員が代筆していた…。
千葉県の袖ケ浦市議会で長年続いていたこの「慣例」について、地方議会のリアルで取り上げたところ、現職の市議会議員からSNSで反応がありました。

「オカシイことがオカシイと認識できなかった」

いったいどういうことなのでしょうか?
早速連絡をとったところ、市議は実名で取材に応じました。
(首都圏局/記者 眞野敏幸)

袖ケ浦市の原稿代筆問題とは

左/市が作成の資料 右/議員の実際の発言(会議録より)

まず、この「慣例」について、簡単に説明させてください。
議員が議会で読み上げる原稿は、通常、みずから準備するものですが、千葉県の袖ケ浦市議会では長年、市側が、議員が議会で発言する「賛成討論」の原稿を作成し、「参考資料」という名目で提供していました。
この「慣例」は地元の市民団体が調査したことをきっかけに明るみになり、議会側は「誤解を招くおそれがある」として、9月議会から見直すと表明したのです。

私たちは、このことを10月10日に「地方議会のリアル」で紹介しました。

すると、袖ケ浦市議会の関係者が実名で新たな情報を寄せてくれたのです。

市議会議員の証言「代筆は議会の“当たり前”だった」

それは笹生猛議員(52)でした。自民党に所属する当選5回のベテランです。
「議会としては恥ずかしい話題ではあるが、実態を知ってもらいたい」として、今回、私たちの取材にも応じました。

早速、「自身にも原稿は提供されたんですか?」と尋ねると、「初当選した2007年、賛成討論の原稿が先輩議員を通じて提供されました」という答えが返ってきました。

笹生猛 議員
「『ん?』と思いましたが、こんなものなのかなとも思いましたね。議案が出てくると賛成討論が回ってくると。じゃあその時に、まだ議会の全容が見えてないので、年配というか先輩議員が『賛成討論※1をこれってね』と渡すようなふうでした。で、私も実際に回してた事もありますし、それが議会の当たり前だなというふうに思ってたんです。賛成討論と議案がセットで回ってくるという状況でした」

※1 議会が議案を可決するか否決するかを決める前に、議員が行う演説のこと。議案に賛成の立場で話す場合は「賛成討論」。反対の立場で話す場合は「反対討論」と言う。

慣例が続いた理由は…「議会と市側の利害が一致した」

袖ケ浦市議会の議場

しかし、議員活動や議会制度について勉強する中で、次第に、この状況はおかしいと考えるようになり、市の幹部などに見直すよう働きかけたこともあったといいます。

それでも、変えることができなかったのはなぜなのか?改めて問いました。

「議員と市側の利害が一致したという要素があると思います。どういう事かというと、市側はやっぱり議会をコントロール下に置きたいと思っている。そのため賛成討論をしっかり余分なこと言わないように書くことで、市側にメリットがあった。さらに議会としてもやっぱり考えなくていいんでしょうね。そのところが利害が一致したということが、長年続けてきたことになってるんじゃないかなと思ってます」

袖ケ浦議会は、ことしの9月議会から、ようやくこの慣例を見直しました。
笹生議員も、今後は議会本来の役割を果たしていきたいと、決意を口にしました。

「反省の上に立つと議会側が執行部とのなれ合いみたいに思われるのは適切ではない。みっともなかった話だけど、私たち(議会側)が見直したことなので、今後は期待してみていてほしいと思ってます」

元幹部の証言「議会ともめ事避けたい」

この議員側と市側の“なれ合い”による慣例。もう一方の、市側の元幹部も匿名を条件に取材に応じました。
元幹部によると、賛成討論を職員が書く「慣例」は、袖ケ浦市が、まだ市に移行する前の袖ケ浦「町」だった約40年前からすでに続いていたと言うのです。
そして、議会側と同様に、市側にも、この「慣例」を問題視する声があったといいますが、見直すことができなかったということでした。

元市幹部
「職員の本来業務から外れた仕事だとは思っていたが、市側からこの『慣例』をやめると言うと、議会側ともめ事になる可能性があると感じ、見直すことができなかった。議会ともめれば、議案を採決してもらいにくくなると考えていた。当時は、議案を採決してほしいとの思いから、原稿を書いていたため、議案の課題を指摘するなど都合の悪いことを盛り込むことはなかった」

ほかの議会でも同様の事例か

こうした代筆の慣例は「賛成討論」だったから、でしょうか。
さらに、そもそも袖ケ浦市だけで行われたことだったのでしょうか。
NHKの投稿サイトには、うちの議会でも、職員が原稿を代筆しているという意見が相次いで寄せられています。

県職員

こんなの当たり前のことです。やってます。なんなら自民の県議のために質問書も作成します。

元議員

これは多くの地方議会では日常茶飯事です。執行部側に喋らせられているという事になるので、執行部側としては、これ以上の議会操作はないという事にもなるわけです。

「地方議会のリアル」では、引き続き、この問題について取材を続けます。
皆さんが日頃、議会について思うこと、または経験したことを、ぜひこちらまでお寄せください。
  • 眞野敏幸

    首都圏局 記者

    眞野敏幸

    新聞記者を経験し、2019年入局。札幌局を経て、首都圏局。遊軍記者として行政・事件事故を担当。

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