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球界一アツい応援 ~スタンドに帰ってきた“美爆音”~

  • 2023年7月7日

千葉県の市立習志野高校の吹奏楽部。生徒たちが奏でる大迫力の演奏は “美爆音”とも言われます。
そんな吹奏楽部の演奏の舞台の一つに、地元のプロ野球球団・千葉ロッテマリーンズの応援があります。コロナで多くの制限を受けながらも、応援演奏に青春をささげた高校生たちを追いました! 
(フィールドリポーター 押尾駿吾)

ファンも選手も待ちかねた “美爆音”応援!

6月23日、千葉市のZOZOマリンスタジアムで行われたロッテと日本ハムの試合。
そこで、観客とともに、選手を鼓舞していたのが、習志野高校吹奏楽部の演奏です。
大迫力の演奏 “美爆音” とファンの声援は、スタジアム全体を震わせました。

ロッテ
ファン

本当に感動、心に響きました。

ロッテ
ファン

また来年も、これからも千葉ロッテの応援を一緒にしてほしい。

コロナ禍でストップ 地元高校生による応援演奏

私たち取材班が、生徒たちの元を訪ねたのは、試合本番の半月前。
校内では、部員およそ170人が、ロッテの応援練習に励んでいました。

練習するのは、選手ごとの応援歌やチャンステーマなど、およそ40曲。
なんと曲は、顧問の先生が一曲一曲、譜面を作っているんだそうです! 
ことしのロッテの応援歌は、活躍する若手選手の新曲が増えたため、先生も苦労したと言います。

そんな譜面を元に、部員たちは演奏、さらに、声出し、手拍子、楽器パフォーマンスなど、応援演奏ならではの練習を重ねていました。

習志野高校吹奏楽部のスタンド応援は年に1回。
いまから5年前、球団と学校が協力して始まり、2018年と19年のシーズンは盛り上がりを見せ、ロッテファンの間で人気イベントになっていました。

しかし、2020年からコロナが国内でまん延。プロ野球の試合で声出し応援ができなくなり、吹奏楽部のスタンド演奏も3年間中止を余儀なくされました。

成功させたい応援演奏 その理由は…

そんなスタンド演奏が、ことしは、4年ぶりに復活! 
部員全員が、初の舞台となる中で、人一倍意気込んでいたのが、部長の上杉照さん高校3年生です。担当の楽器は、低音で曲を支える“チューバ”。
中学生の時、球場で聞いた“美爆音”に憧れて、入部したと言います。

入学から2年間できなかったロッテの応援演奏。
高校生活、最後のことし、ようやく憧れの舞台に立てることになりました。

上杉照さん
「一瞬、一瞬を大切にして、悔いのないように、応援できればと思う」

照さんには、もうひとつ、今回の応援演奏を成し遂げたい理由がありました。
それは、大学3年生で、兄の晴さんの存在です。

実は兄・晴さんも習志野高校吹奏楽部の出身。
ロッテの応援演奏が始まった2018年に入学し、1年生・2年生の時は、地元ロッテのために、スタンドでの応援演奏を行いました。
しかし、部長として迎えた3年次に、新型コロナの感染が拡大。
高校生活最後に集大成を飾るはずだったスタンドでの応援は中止となってしまいました。

晴さん

最後の舞台では、指揮者を務める予定だった。いつ思い出しても悔しい。
いろんな人にかわいそうって言われて、正直何よりも、それが嫌だった。

照さん

兄の分もしっかり気持ちを継いで、演奏をしたいと思う!

 

思いっきり吹いて、楽しんできてください!

試合当日 ~ひとつになった演奏~​​​​​​

そんな兄からのエールを胸に、迎えた応援演奏、当日。
スタジアムは、満席となるおよそ3万人の観客で埋め尽くされ、球場が一体となった応援が始まります。

この日、“美爆音”の本領発揮となる演奏が聞けたのは日本ハムの4点リードで迎えた7回。
チャンステーマが鳴り響く中、ロッテ・山口航輝選手のタイムリーヒットでチーム初得点。
スタンドは大盛り上がりです。

試合は、ロッテ3点ビハインドで9回へ。
1点を返し、さらに2アウト3塁。ホームランが出れば同点の場面。
ここで演奏されたのが…『レッツゴー習志野』です。
吹奏楽部の代表曲でもあり、野球部の応援で半世紀近く、先輩から受け継がれ演奏されてきた曲です。
上杉照さんも、楽器に精一杯息を吹き込み、演奏を行っていました。

しかし、試合は、あと一歩届きませんでした。

上杉照さん
「試合には負けましたが、悔いなく出来たかなって。この舞台に立つのが一つの夢だったので、
非常に良い思い出になったし、次につながる1歩になりました!」

4年ぶりに応援演奏を届けた高校生たちには、選手からも感謝の言葉が贈られました。

千葉ロッテマリーンズ 池田来翔選手(習志野高校出身)
「今日の打席は、今までの野球人生の中で一番興奮しました。今日のような、試合を決めるチャンスの場面で打てるバッターになるために日々練習に取り組んでいきたいなと思います。後輩たちの応援については、感無量です。最高に素晴らしかったです」

取材後記

部員たちの演奏に触れながら、コロナ禍で多くの“我慢”を経験した世代のエネルギーの強さのようなものを肌で感じました。部活動を含め学校生活で多くの制限を受けてきた部員たち。話を聞くと、そうした経験を悲観的に捉えず、前向きに考えながら、今を目一杯楽しんでいる印象を受けました。その思いを乗せて復活したことしの“美爆音”は、ロッテファンに限らず、多くのプロ野球ファンの心に届いたと思います。夏の高校野球に帰ってくる各校の応援にも注目したいと思います。

  • 押尾駿吾

    フィールドリポーター

    押尾駿吾

    平成28年入局 千葉県出身のロッテファン。 前任の和歌山局では、佐々木朗希投手の完全試合を支えた捕手の市立和歌山高校出身の松川虎生選手の活躍を取材

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