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横浜中華街支える協同組合が振り返る50年“コロナ禍乗り越える”

  • 2022年1月26日

多くの店舗が建ち並ぶ横浜中華街。横浜中華街を支えてきた街の協同組合「発展会」は、去年、設立から50年を迎えました。新型コロナの長期化が、街にも大きな影響を及ぼす中、「発展会」が横浜中華街とともに歩んだ半世紀を振り返り、1冊の本にまとめようという取り組みが進められています。本に込められた思いを取材しました。
(横浜放送局/記者 古市悠)

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横浜中華街の歴史をひもとく50年誌

完成間近の50年誌です。460ページ近い原稿用紙には、明治以降に撮られた街の写真やそこで働く人たちの声が集められています。

こちらは1950年代の中華街大通りで披露されていた獅子舞の写真です。50年誌では、こうした横浜中華街の文化の歴史やなりわいを知ることができます。

50年誌の編集は地元の華僑や華人、それに市の学芸員など12人が集まって4年前から進められてきました。
編集委員のひとり、山下耕司さん(48)は、ふだんは横浜中華街の駐車場管理会社で働くサラリーマンで、祖父の代から横浜中華街で働き「発展会」では理事を務めています。街が新型コロナの影響を受けている今こそ、この半世紀を振り返ることに意味があると感じています。

横浜中華街発展会協同組合 理事 山下耕司さん
「過去いろいろな思いをしながら街を盛り上げたり、復興したりしている人たちの歴史に今回、携わらせてもらっています。自分はその歴史を正しく編集していかないといけない」

コロナ禍で危機を迎える中華街

緊急事態宣言中の横浜中華街

ふだん多くの観光客で賑わう横浜中華街ですが、新型コロナの長期化などによってこの1年間で、およそ40の店が閉店しました。第5波が収まった去年秋以降、観光客は戻りつつありましたが、オミクロン株が急激に感染拡大するなど、依然先行きは不透明です。

歴史から新型コロナを乗り越えるヒントを得たい

バブルの崩壊や東日本大震災など、数々の危機を街がどう乗り越えたのかを知りたいと、山下さんは50年誌の取材で集めた1000枚もの街の写真の中に、そのヒントを探しました。

気付いたのが、街の人たちのつながりを表す集合写真の多さでした。

横浜中華街発展会協同組合 理事 山下耕司さん
「コロナでとても厳しい状況下というのは、みんな横のつながりがとても強くて、ちょっとした相談なんかも、かなりやられていると聞いているんですね。そんなにつらいんだったら『こういうところに相談してみなよ』とか『ちょっと銀行に一緒に行ってあげよう』とか。みんな仲がいい。横のつながりの強さっていうのは感じます」

危機を乗り越えてきた中華街の重鎮たちの教訓

50年誌では、数々の困難を乗り越え、街の礎を築いてきた人たちの声も紹介しています。

この日、山下さんは発展会の理事長を20年近く務めた林兼正さん(80)に話を聞きました。
林さんは、厳しいときこそ萎縮せず、未来を見据えて挑戦することが大事だと伝えました。

 

横浜中華街発展会協同組合 理事 山下耕司さん
「本当にいろいろな危機があったと思いますが、どうやって越えてきたんですか?」

 

横浜中華街発展会協同組合 元理事長 林兼正さん
「その時にベストのことを考えて、これから次にどうなるか。自分がいる間は、給料もらって安泰に終わらせようとする。それでは次の世代がかわいそうです。リーダーがちゃんとした意思をもって、信念をもってやらないとだめですよ」

コロナ禍でも挑戦続ける中華街

50年誌では、コロナ禍でも挑戦を続ける人たちのことも取り上げました。

おととし3月にオープンしたこの店では、ペットのためのチャイナドレスなどをオーダーメードで販売しています。
中国や台湾をはじめ、海外に進出する足がかりを作る新たな挑戦の場として横浜中華街を選んでいました。山下さんは、こうした新しい動きに希望を感じるといいます。

横浜中華街発展会協同組合 理事 山下耕司さん
「やはり挑戦する心を忘れないことだと思いますね。挑戦していかないと衰退していってしまう。ほんのちょっと先の未来の中華街で働いている人たちや、街作りしている人たちに読んでもらえたらうれしいなと思います」

取材後記

50年誌には明治時代から続く老舗の経営者から、日中国交正常化以降に日本にやってきて事業を始めた、いわゆる新華僑まで、27人の奮闘記が掲載されています。実は当初、この部分は予定されておらず編集の途中で急遽追加され、インタビューを行ったということです。
新型コロナウイルス、そして国連が掲げる持続可能な開発目標「SDGs」への対応など、今日の横浜中華街にとって街作りの課題は少なくありません。そうしたなかで50年誌には、これまで街を形作ってきた人たちのことを、将来この街に関わる人たちに知ってもらい、街作りに生かしてほしいという編集委員の思いが込められています。
私も今後、横浜中華街がどのように変わっていくのか、注目して取材を続けたいと思います。

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  • 古市 悠

    横浜放送局 記者

    古市 悠

    2010年入局。水戸放送局、大阪放送局、科学文化部を経て2021年から横浜放送局。神奈川県内の医療や文化、在日米軍基地をめぐる課題など幅広く取材。

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