神奈川県鎌倉市で今、注目を集めている特産品があります。
その名も「鎌倉海藻ポーク」
海岸に流れ着く海藻をむだにしたくないという思いに地域のいろいろな人が協力し、新たな特産品が誕生しました。
(横浜放送局 鎌倉支局/記者 中村早紀)
ジューシーなメンチカツに…。
ポークジンジャー。
この料理に使われている豚肉が、地元の海藻を食べて育ったブランド豚の鎌倉海藻ポークです。
仕掛け人は料理研究家の矢野ふき子さん。きっかけは海岸に打ち上げられる海藻がゴミとして処分されると知ったことでした。
料理研究家 矢野ふき子さん
「海藻がすごくたくさん流れ着いていてもったいないなと。どうにかいかしたいと思いました」
そこで矢野さんがひらめいたのが海藻を豚の餌にすることでした。料理研究を通してさまざまな餌で育てたブランド豚が全国各地にいることを知っていたからです。
矢野さんの考えに協力してくれたのが、厚木市にある養豚場でした。
豚は出荷前の2か月間、鎌倉の海藻が混じった餌を食べて育ちます。その効果は予想以上でした。
神奈川県の畜産技術センターで調査した結果です。
オレイン酸といううまみ成分が海藻を食べていない豚に比べて多く含まれています。さらに脂の溶ける温度が低く、まろやかな味わいになることがわかりました。
臼井農産 臼井欽一さん
「脂のほんのりとした甘みと食べた時の口溶け。うまみの伝わり方がふつうの肉とは違うと思います」
肝心な海藻の餌作りを担っているのは、地域の障害者施設の人たちです。季節や天候によっていつ流れ着くかわからない海藻。日頃から海の様子を気にかけ、カジメやワカメなどを拾い集めています。今では老人ホームも含め、5つの施設が協力しています。
海藻を餌にするには、まずきれいに洗って塩を抜き乾燥させます。
そして豚が食べやすいように、はさみで切ったり機械でひいたりして粉末にします。餌作りの作業は施設にとっても貴重な仕事になっているといいます。
虹の子作業所 山口礼子さん
「関われてとても楽しいですし、わくわくする事業だと思います。地域とつながっていけるのがありがたいことですね」
地元のレストランでは鎌倉海藻ポークを使ったメニューが人気のひと品です。
おいしいです。
鎌倉の地域にあった料理で、いいサイクルになっていると思います。
廃棄される海藻から生まれた「鎌倉海藻ポーク」。地域のつながりから新たな特産品が誕生しました。
料理研究家 矢野ふき子さん
「地域のブランドは地域のものと地域の人が関わってこそブランドになると思うんですね。みなさんの力で生まれた鎌倉海藻ポークなので大事に育てていきたいです」
鎌倉海藻ポークの生産量はまだ限られていますが、去年、鎌倉市のふるさと納税の返礼品にも採用され評判も上々だということです。