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バス路線廃止 運転手不足 利用者減 どう支援 関東地方では3000キロ余

“届出書”を情報開示請求
  • 2023年11月29日

バス路線の廃止が相次ぐなか、廃止の際に会社が国に提出する「届出書」をNHKが情報開示請求をして調べたところ、ことし8月までの1年5か月で、関東ではおよそ3100キロ、全国で合計8600キロあまりの路線が廃止されたことがわかりました。届出書に記載された廃止の理由やバスの運転手をめぐる状況などについてまとめました。

路線廃止の届出書 NHKが情報開示請求

NHKは、全国9つの運輸局と沖縄総合事務局に情報開示請求を行い、文書が保存されている昨年度と、今年度の8月末までに提出された、路線バスや高速バスなどの乗り合いバスの「事業計画変更事前届出書」を入手し、その内容を調べました。

その結果、道路工事などによる運行ルートの変更での廃止の場合を除いて、1年5か月の間に全国であわせて8667キロの路線が廃止されていたことがわかりました。別の会社によって運行が続けられるケースもありますが、これは、直線距離で、東京から西に向かってポーランドの首都ワルシャワに到達する距離に相当します。

【運行をすべて取りやめる道路がある場合】
バス会社は、事前に国に対し、路線廃止のための「事業計画変更事前届出書」を提出することが義務づけられています。

廃止された路線 関東では3129キロ

廃止されたおよそ8667キロの路線を地域別でみた場合、関東と九州が突出しています。

全国9つの運輸局と沖縄総合事務局に出された「事業計画変更事前届出書」の提出先別では、総距離のうち、北海道がおよそ7%、東北がおよそ8%、関東がおよそ36%、北陸信越がおよそ7%、中部がおよそ4%、近畿がおよそ3%、中国がおよそ2%、四国がおよそ6%、九州がおよそ27%、沖縄がおよそ0%となっています。

最も割合の多い36%の関東はおよそ3129キロ、次いで多い27%の九州はおよそ2341キロでした。

“利用者の減少” “運転手不足”

廃止の理由については複数挙げる会社が多く、具体的に明記されたものでは最も多いのが利用者の減少で、廃止された総距離の66%で要因とされていて、新型コロナが影響したとするものが目立ちました。

2番目に多いのは運転手不足で41%にのぼり、来年4月から時間外労働の規制が強化されるいわゆる2024年問題に関係するとしたバス会社もありました。

開示文書で読み取れること

開示された文書には、人口減少や人手不足で現状の形態では事業を維持できなくなるとか、将来に対する不安感から大量の退職者が発生し、生活路線の運行に支障をきたす状況になっているなどと書かれています。

また、法令改正を伴う労働状況改善を控えるなか、需要により即した運行が求められているという記述もありました。

運転手不足で増える負担

バスの運転手不足が課題となるなか、ここ数年、運転手1人あたりの負担が増え課題がより深刻化しています。乗り合いバスの運転手は2011年度には8万1811人いましたが、2021年度には7万4340人と、10年間でおよそ7500人減りました。

この間、運転手1人あたりの負担は増していて、運転手の人数を10万キロあたりでみた場合、2011年度は2.7人で、この状態が2019年度まで続きますが、2020年度が2.6人、2021年度は2.4人となっています。

“バス業界の構造的問題”

この問題について公共交通の問題に詳しい東京都市大学の西山敏樹准教授は次のように指摘しています。

○バス業界の構造的問題
4割が運転手不足だというのは深刻な状況だ。背景には、賃金が低いため人生設計が難しく、20代から40代の若い世代が入らないというバス業界の構造的な問題がある。今後、運転手不足で廃止になる路線が加速度的に増えると考えられ、いま手を打たないといけない。

○支援の方法は?
ここ1年間で高速バスの廃止が顕著になっている。高速バスで利益を出して地方のローカル路線を維持するというバス事業の一般的な経営モデルが崩れてきていると言える。若い世代を定着させるために運転手の給料を公的に支援するというやり方もあると思う。また、支援によってどれだけ運転手が増えて、どれだけ路線を維持できたかを可視化することも大切だ。

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