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春闘2024賃上げどうなる 経団連や連合は? 専門家の見方を詳しく

  • 2023年10月30日

「ことし以上の意気込みと決意で賃金引き上げを求めたい」。来年の春闘に向けて企業の経営側の指針となる経団連の基本方針の原案が明らかになりました。ことしの春闘ではおよそ30年ぶりの高い賃上げ水準となりましたが、この勢いは続くのか。連合の方針とあわせ、専門家の見方を詳しくまとめました。

“賃金引き上げの積極的な検討と実施を”

27日に明らかになった経団連が検討を進める基本方針の原案の中では、「来年以降も賃金引き上げのモメンタムを維持・強化し、構造的な賃金引き上げの実現に貢献していくことが経団連・企業の社会的な責務」だとして、来年は、物価高への対応にとどまらない重要な年だとしています。
そのうえで、来年の春闘に向けた経団連の方針として、「ことし以上の意気込みと決意をもって賃金引き上げの積極的な検討と実施を求めたい」として、各企業に継続的な賃上げを求めています。

春闘 連合は5%以上の賃上げ要求方針

来年の春闘をめぐっては、労働団体の連合が定期昇給分を含めてことしを上回る5%以上の賃上げを要求する方針を決定しています。

来年の春闘では、記録的な物価上昇を受けて賃上げ率がおよそ30年ぶりの高水準となったことしの春闘の賃上げの勢いを持続させられるかどうかが最大の焦点となっています。

来年度の賃上げを決定した企業も

大手企業では早くも来年度の賃上げを決めたところもあります。生命保険大手の明治安田生命は、来年4月から社員およそ1万人の賃金を年収ベースで平均7%引き上げます。
年齢や勤務年数などに応じた年功の要素を廃止して、実績や役職をより反映した賃金体系に移行し、特別手当を支給するなどして本格的な賃上げに踏み切ることにしています。

明治安田生命 永島英器社長
「働く人の処遇が上がれば、より一層活力をもってやる気を持って仕事に励んでくれる。そのことがお客様満足度や生産性の向上につながって、さらなる賃上げにつながる循環をつくっていきたい。従業員は消費者でもあるのでいろんなものが買いやすくなることがほかのいろいろな業種、会社の生産性向上や賃上げにもつながっていく可能性もあると思っている」

春闘の見通し 持続的な賃上げの課題 専門家は

来年の春闘の見通しや持続的な賃上げの課題について、三菱総合研究所の菊池紘平研究員に聞きました。

〇春闘 賃上げの見通し
物価の影響を考慮した実質賃金でいうとマイナスの状況が続いていて、来年の春闘が極めて重要だと考えている。来年の春闘でもことしに匹敵する高い賃上げ率となるのではないかとみている。

〇高い賃上げ率の理由
中長期のトレンドでみても深刻な人手不足の状況がより加速し、賃金の上昇圧力になっていくと考えている。また、労働側と経営側の双方で賃上げに対する認識の変化が広がってきている。家計の間でも賃金はこれから少しずつ上がっていき、そして物価もこれに伴って上がっていくものだという認識が広がっていくと思う。さらに、最も大きいのが価格転嫁の状況だと考えている。企業の状況を試算したところ、大企業だけでなく中小企業でも価格転嫁ができているという状況が広がりつつあるとみている。

〇価格転嫁 定着のポイント
全体としては価格転嫁が十分にできていない中小企業の製造業にポイントがあると考えている。大手企業が物価と賃金を継続的に上げるプラスの面を認識し始めている中で、中小企業にとっても交渉の余地が拡大していると考えている。また、原価に占める人件費の比率が高いサービス業がしっかりと価格転嫁できるかということも重要だ。

〇価格転嫁に必要なこと
これまでの商品やサービスに付加価値を加えるとともに値段の上昇分を上回るような付加価値を加えることができれば価格転嫁が進められるのではないかとみている。これ以上の新たな付加価値を加えるのが難しい業種もあるかもしれないが、従来は扱っていなかった業種に進出したり、業種の転換を考えたりするなど、より積極的な企業の動きが求められている局面だと考えている。

〇賃上げできていない企業は
大企業では賃金をきちんと上げながら人材を確保して新しいビジネスをおこしていく。さらに自分たちのサプライチェーン全体で賃上げや物価上昇、生産性向上という循環を作っていくという姿勢が求められる。中小企業はこれだけ経済の不確実性が高い状況の中で賃上げを行うことにおよび腰になる人も多いかと思うが、大きな転換期こそ自分たちから積極的に新しい付加価値を生み、価格に転嫁して賃金を引き上げて好循環を作っていくという気概を持つことも重要だと考えている。

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