高熱や結膜炎などの症状が出る「咽頭結膜熱」=いわゆるプール熱。
主に子どもが感染しますが、その患者が過去10年で最も多くなっています。
子どもの感染症に詳しい国立病院機構三重病院の谷口清州院長は「ことしはさまざまなウイルスが同時に流行し、以前の流行状況のパターンと変わってきている」と話しています。
子どもの感染症の増加に伴い、東京・港区にある病児保育施設にも「熱を出した子どもを預かってほしい」といった問い合わせが増えていて、「キャンセル待ち」の状態になっているということです。
8月下旬ごろから新型コロナに感染した子どもは減る一方で、インフルエンザや「プール熱」を引き起こす可能性もあるアデノウイルスに感染した子どもが増えているということです。
この施設で預かることができる子どもの定員は6人で、ふだんは3日間から4日間続けて預けることも可能でしたが、「キャンセル待ち」の状態になっていることなどから、今は「2日間まで」に制限しているということです。
病児保育施設「チャイルドケアばんびぃに」の時田章史院長
「例年の9月は体制がひっ迫する時期ではありませんが、最近になって感染が増加しています。行政とも相談しながら定員数を増やすことも視野に入れて対応していきたい」
主に子どもが感染し高熱や結膜炎などの症状が出る「咽頭結膜熱」=いわゆるプール熱の患者数が、過去10年で最も多くなっていることが国立感染症研究所のまとめでわかりました。
国立感染症研究所によりますと、9月17日までの1週間に全国およそ3000の小児科の医療機関から報告された患者の数は、前の週から570人あまり増え4539人でした。
1医療機関あたりでは1.45人で過去10年で最も多かった前の週をさらに上回りました。
都道府県別では、福岡県が4.65人、大阪府が4.09人と国の警報レベルの目安となる「3」人を超えていて、次いで京都府が2.95人、奈良県が2.88人などとなっています。
プール熱は、夏に多いウイルス性の感染症ですが、1年中かかるおそれがあります。
プールで感染しやすいことからプール熱と呼ばれていますが、プール以外でも感染することが多くあります。
大人も発症しますが、子どもに多い感染症で、発病すると法律で通学や通園が禁止となる「学校保健法第二種伝染病」に指定されています。
命に関わる病気ではありませんが、子どもの場合は、まれに重症化することがあるため、十分な観察が必要です。
◇主な症状◇
主な症状は「目の充血」「高熱」「のどの痛み」です。
おおよそ5~7日間の潜伏期間を経て発症します。
◇感染経路は◇
主な感染経路は、飛沫(ひまつ)感染、接触感染、経口感染です。
飛沫感染
感染した人のせきやくしゃみ、会話などで飛び散った飛沫(しぶき)を吸い込むことで感染します。
接触感染
感染した人や、ウイルスが付着した物と接触することで感染します。タオルの共用や、プールの水が目の結膜に触れることでも感染します。
経口感染
ウイルスが、手や指を介して口に入って感染します。排便後や乳幼児のおむつ交換したあとなどに、手洗いや手指の消毒をしっかり行わなかったり、不十分な場合に、感染するおそれがあります。
◇対策は◇
プール熱の原因となるウイルスは、感染力が非常に強く、あっという間に周囲に感染を広げてしまいます。近所でプール熱の流行がわかった場合は特に注意が必要です。また、プール熱にかかった場合は「手洗い」「消毒」「排便後の適切な処理」をしっかりおこない、感染を広げないようにすることが大切です。
ことしの子どもの感染症の流行状況について、感染症に詳しい国立病院機構三重病院の谷口清州院長は次のように話しています。
国立病院機構三重病院 谷口清州院長
「新型コロナウイルスの感染対策が取られる前は、いろいろなウイルスが交互に流行していたが、ことしはさまざまなウイルスが同時に流行し、以前の流行状況のパターンと変わってきている。こうした状況では同時に別のウイルスに感染したり、次々と連続して感染したりして、発熱する回数が増えてしまうので患者もしんどいと思う」
また、家庭でできる対策としては、「基本的にはよく寝て、食事をしっかりとって、体調に気をつけることが大事だ。その上で手洗いやマスクなどの対策や体調がおかしいと思ったら保育園や学校を休むなどの対応を取ってほしい。ワクチンで予防できるものはあらかじめ打っておくと感染しても症状が軽くおさまることが期待できる」と話していました。