ユネスコの諮問機関「イコモス」は明治神宮外苑の再開発に対して中止を求める警告の文書を東京都や事業者などに送っています。この再開発についてイコモスが警告を出した経緯や求めている対応、東京都や事業者の動きなど、QA形式でまとめました。
Q. イコモスが求めた対応とは
イコモスは警告の中で、再開発を行う事業者に対しては事業の撤回を、事業を認可した都には環境アセスメントのやり直しなどを求めました。
これについて都は、「条例に従って適切に手続きを進めている」と環境アセスメントをやり直さない方針を示していました。
Q. 神宮外苑をどう評価したのか
「ヘリテージアラート」と呼ばれ「文化的資産が直面している危機に対して、保全と継承のために出される声明」です。
この中では神宮外苑について、近代化が進む東京で緑地を確保するために整備され都市公園や庭園の中核を担ってきたこと、多くの国民の献木などによって作られたことなどを理由に「世界の公園の歴史においても例のない文化的資産」と評価しています。
Q. イコモスの考え方や警告を出す経緯は
再開発に対して、中止を求める警告を出したユネスコの諮問機関「イコモス」の国内委員会は15日、都内の日本記者クラブで会見を開きました。
イコモス「文化的景観委員会」エリザベス・ブラベック会長
「成熟した樹木が破壊されるのは受け入れられない。今や全世界は気候変動を意識して都市の開かれた空間をいかに維持していくか、その重要性を認識しているからだ。東京のような世界の主要都市では、公園は大きく不足していてその公園で再開発を行うことは聞いたことがない」
警告は環境アセスメントの方法に誤りがあるなどとして、再開発に反対してきたイコモスの日本国内の委員会の情報に基づくものです。イコモスはこの情報をもとに本部の委員会でおよそ40か国の委員を交えて審査し、警告を出したということです。
ただ、事業者側からは話しは聞いていないということで、15日の記者会見で小池知事が「一方的な情報しか入っていないのではないか」と指摘したとみられます。
Q. 都はどう対応したのか
イコモスの警告には法的な強制力はありません。ただ、都は警告が出された5日後、事業者に対し、9月以降予定されている樹木の伐採が始まる前に、極力、保存、移植できないか、具体的な保全案を示すよう求めました。
事業を認可した都ですが、警告に対する対応は事業者に任せた形とも言えます。
Q. 再開発の焦点は
事業者は都の要請について「真摯に受け止めている」とコメントしています。今後、事業者側から具体的な保全策が示されるのかが焦点となります。