傘下の大手デパートそごう・西武について、セブン&アイ・ホールディングスは、アメリカの投資ファンドへの売却が完了したと発表しました。雇用への懸念などから反発している労働組合との協議が平行線のまま、ストライキの翌日に売却が完了した形です。売却額のほか、各地の店舗の扱いなど今後の焦点、ストライキについての専門家の見方についてまとめました。
大手デパート、そごう・西武の売却をめぐって、雇用などへの懸念から反発している労働組合は、31日ストライキを実施し、西武池袋本店の全館で営業を取りやめました。
西武池袋本店では、翌日の1日から通常通り営業を再開していて、多くの利用客が店内へと入っていきました。
早速、食料品を買いに来ました。長年利用しているので、このまま残ってほしいし、従業員の雇用を守ってあげてほしいです。
再開されてよかったです。なんでもそろっているので、これからも利用し続けたいです。
発表によりますと、セブン&アイは、1日、傘下のそごう・西武のすべての株式をアメリカの投資ファンド、「フォートレス・インベストメント・グループ」に売却しました。
企業の価値として見た売却額は2200億円となりますが、そごう・西武の有利子負債、およそ2900億円などを差し引きした結果、実際の譲渡価格は8500万円を見込んでいるとしています。
売却にあたって、そごう・西武への貸付金の一部を放棄することなどから、セブン&アイ単体でおよそ1457億円の特別損失を計上する見通しです。
西武池袋本店 | 東京 |
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西武渋谷店 | 東京 |
西武所沢S.C. | 埼玉 |
そごう大宮店 | 埼玉 |
そごう千葉店 | 千葉 |
そごう横浜店 | 神奈川 |
西武東戸塚S.C. | 神奈川 |
西武秋田店 | 秋田 |
西武福井店 | 福井 |
そごう広島店 | 広島 |
そごう・西武は「西武」と「そごう」の2つのデパートを首都圏のほか、全国に10店舗展開しています。
関係者によりますと、このうち旗艦店の西武池袋本店は、ヨドバシホールディングスが投資ファンドから店舗を取得したうえで、一部のフロアに家電量販店を展開する方針です。
また、ヨドバシは、西武渋谷店やそごう千葉店にも出店する計画ですが、そのほかの首都圏の店舗や地方の都市にある店舗については出店しない方針です。
西武福井店や西武秋田店など、街の中心部や駅前に立地する店舗は、地元にとって欠かせないデパートとして存在感を示してきました。こうした店舗は地域経済にも影響を与えかねないだけに、売却後の取り扱いが今後の大きな焦点になります。
そごう・西武は買収した投資ファンドのもとで事業の黒字化に向けて経営の効率化と収益の改善を進めることになります。
ファンド側は、「事業継続を実現することに尽力し、最大限の雇用の維持に向け支援していく」としていて、今後、雇用の維持をしながら業績をどう立て直すかが課題となります。
パートナーとなるヨドバシホールディングスが出店を計画している西武池袋本店などの売り場の構成や、地域に根ざしたそのほかの店舗の取り扱いも焦点になります。
一方、そごう・西武のストライキの実施は、主な大手デパート6社では61年ぶりとなります。労使関係に詳しい立教大学の首藤若菜教授は、そごう・西武の労働組合は、経営側の考えを受け入れてきた協調的な労働組合だとして、売却前に組合側が納得できる形で十分な話し合いが行われてこなかった結果だとしています。
立教大学 首藤若菜教授
「1社の事例ではあるが、十分な話し合いがされず、強引に企業再編を進めようとすると、大きなリスクになりえることを示したという意味で、ほかの企業の経営層にとってもインパクトは大きかったのではないか。労働者にとっても、労働条件に納得できない場合に声を上げて行動に移した組合の動きに勇気づけられた人も多かったのではないか。企業再編で労働条件が低下しても労働者側がそれをのんできたケースが多い中で、社会的な意義は大きい」