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物価上昇で広がる節約傾向にどう対応 7月の消費者物価指数や今後の見通しは?

  • 2023年8月22日

物価上昇に歯止めがかかりません。

8月18日に公表された7月の消費者物価指数の「生鮮食品を除く食料」は、1975年10月以来47年7か月ぶりの高い水準となった5月から横ばいが続いています。

消費者のあいだでは節約傾向が広がる中、企業やお店はあの手この手でアピールしています。
今後の物価の見通しについても専門家に聞いてきました。

生鮮食品を除く「食料」は9.2%上昇

総務省によりますと、7月の消費者物価指数は、生鮮食品を除いた指数が2020年の平均を100として去年7月の102.2から105.4に上昇し、上昇率は3.1%となりました。上昇率は6月から0点2ポイント下がりましたが、3%以上となったのは11か月連続です。

このうち「生鮮食品を除く食料」は9.2%上がりました。

具体的には次のようになっています。

○鶏卵 36.2%
○炭酸飲料 16.4%
○外食「ハンバーガー」 14%
○乾燥スープ 13.7%
○キャットフード 28.6%
○宿泊料 15.1%
○携帯電話の通信料 10.2%
※料金プランの変更などを受けて比較可能な2001年1月以降最も高くなっています。

値上げも暑さで氷需要増加

こうした中、連日続く厳しい暑さを追い風に飛ぶように売れているのが氷です。

東京・渋谷にある従業員20人あまりの氷の販売会社では、飲食店やイベント会場向けに業務用の氷を販売しています。この会社では製氷会社からの仕入れ価格の上昇や氷の冷凍や加工にかかる電気代が上がったことなどを受けて、ことし4月に販売価格をおよそ10%値上げしました。

このため、値上げの影響で氷の出荷量が落ち込むのではないかと懸念していました。

ただ、この夏の猛暑と新型コロナが5類に移行されたことを受けて、飲食店で飲料やお酒に使う氷をはじめ、かき氷用の氷やイベントや祭りで使用する氷などの需要が大幅に増えました。

会社によりますと、この夏の売り上げは去年よりもおよそ30%増えると見込まれるほか、感染拡大前の2019年の夏を10%ほど上回る見通しです。

冨士氷室 植松寛 社長
「メーカーから仕入れる氷の価格が上がっているため値上げはやむを得ない状況だ。この夏の売り上げは猛暑で大幅に増えたが、これ以上値上げをすることはできないと考えていてそういった状況の中だがなんとかやってきたい」

値上げと暑さで売り上げに影響も

一方、焼きたてが人気の都内のパン屋では、仕入れ価格のたび重なる上昇で4回にわたって値上を行い、この暑さで客が減ったことで売り上げに影響がでています。

東京・三鷹市にある創業70年あまりのパンの販売店は1日6000個あまりのパンを製造・販売していて、客は多い時には1日におよそ700人が訪れます。

この店では7月に去年1月以降で4度目となる値上げに踏み切り、一部の商品を除いて販売価格を2%から14%ほど引き上げました。

店によりますと、小麦や油、砂糖などの仕入れ価格の上昇が続いていて値上がりした原材料の数や上昇の幅は、いずれも去年の同じ時期を上回るペースで値上げの影響で販売数が減少した商品もあるということです。

さらに、この夏の暑さで外出を控えた客も多かったことから7月の来店客数は前の月と比べておよそ10%減少し売り上げにも影響が出ています。

このため、この店では7月からパンだけでなくかき氷を販売しているほか、暑くても食欲がわくように辛い味付けの鶏肉入りのパンを期間限定で販売するなど集客につなげようと取り組んでいます。

「トーホーベーカリー」 松井成和 代表取締役
「ことし6月までの半年間に値上げされた原材料の数はすでに去年1年間での数に達しています。1年に2回も値上げしたくなかったのですがやむを得ないです。ことしの夏は暑さと値上げと、厳しい状況にあると感じていますが、これからの秋から冬にかけてはパン屋にとって繁忙期なので客の需要をみながら喜んでもらえる商品、そして付加価値のある商品をできるだけ多く提供したい」

あえて値下げするスーパーも

こうしたなか、あえて値下げを行うことで、客や売り上げの増加につなげようという動きも出ています。

東京都と埼玉県、千葉県でおよそ60店舗を展開するスーパーではすべての店舗で8月1日から一部の商品を値下げしています。

対象は冷凍食品や飲料菓子や調味料など168品目で、1%ほどから最大でおよそ32%値下げをしています。

スーパーによりますと、円安や原材料費の高騰、物流コストの上昇などで商品の仕入れ値が上がり、去年から多くの商品で店頭での販売価格の値上げが続いていて、再値上げなども相次いでいます。

値上げの影響で店を訪れる客の数は減っていませんが、1人の客が1回の買い物で購入する商品の数「購入点数」は、ことし7月の時点で去年の同じ月より5%ほど少なくなっています。

スーパーでは、物価の上昇が続く中、消費者は必要な商品だけ購入するという節約の意識が強くなり、買い控えが起きているとしています。

 

3人の子どもがいる30代の女性
「毎日、買い物しているとやはり高いなと感じます。子どもたちが夏休みで家にいるのでこういう値下げはありがたいです」

スーパーによりますと、すべての店舗を対象に訪れた客の数をまとめた結果、8月1日から8月10日までの客の数は去年の同じ時期より2%増加しています。

また「購入点数」も7月と比べて増加の傾向だということで値下げの取り組みで客の購入意欲が高まり客や売り上げの増加につながっていると分析しています。

スーパーでは、年内は一部の商品の値下げを続ける予定で、客の需要や季節などに応じて対象の商品も変えていきたいとしています。

東武ストア 浦野浩治郎 商品本部長
「少しでも家計に貢献できるよう今回の値下げを決断しました。客からの反応も良いと聞いているので今後もこの取り組みを続けていきたい」

今後の物価の見通しは?

7月の消費者物価指数が公表され「生鮮食品を除く食料」は、1975年10月以来47年7か月ぶりの高い水準となった5月から横ばいが続いています。
今後の物価の見通しなどについて民間のシンクタンク「ニッセイ基礎研究所」の斎藤太郎経済調査部長に聞きました。

Q. 上昇率が3%以上の高止まりが続いているがその要因は?

価格転嫁する動きが一番顕著に出ているのが食料品だ。輸入物価自体が下がり、今後、価格転嫁の動きが徐々に落ち着いていくのではないか。ことしは30年ぶりの賃上げが実現され、それに応じて企業もサービス価格を上げ始めている。企業が長い間値上げを我慢していたという側面もあり、値上げをしやすい環境になっている。

Q. 物価の上昇で個人消費はどういう状況か?

個人消費は物価上昇の影響をかなり受けていると思う。これまではコロナ禍で積み上がった過剰貯蓄を消費に回してきたが、貯蓄のレベルが新型コロナの感染拡大前の水準に戻ってきている。このため物価高で増えた負担を貯蓄で吸収できなくなり、物価高のマイナスの部分が大きくなってきている。実質的には収入が減ってるので、消費の量を減らさざるを得ないという状況だ。

Q. 物価の上昇はいつまで続く?

生鮮食品を除いた指数の上昇率は秋以降におそらく3%を少し割り込み、年末にかけて2%台後半くらいの水準となるのではないか。「食料」は今がピークで、少しずつ上昇率が下がる。一方で、「サービス」の価格は人件費の増加を転嫁する動きがこれから本格化する思うので、いまの2%から3%近いところまで上がっていくと思う。

Q. 電気代と都市ガス代の負担軽減策をどうみる?

電気代やガス代というのは家計にとっての大きな負担になりますが、政府の政策によって負担が軽減された。負担軽減策は物価を1%くらい押し下げていたので、これがことしの秋以降になくなるとすると、その分負担が増えることになるので1世帯あたり月平均で3700円負担が増える計算になる。

Q. 賃上げの課題は?

賃上げ率が物価上昇率を追い越す水準まで上がることが望ましく、いまはその途中段階だと思う。先に物価が上がってしまったというマイナスの面はあるが、賃上げがある程度ついてきている状況だ。これを続けていくと、物価上昇率が落ち着いてきたときに賃上げ率が物価上昇率を上回り望ましいかたちになる。ことしは30年ぶりの高い賃上げ率が実現し、来年や再来年になるかもしれないが、賃上げ率が物価上昇を上回る可能性は徐々に高まっていると考える。

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