大型連休中に行楽地などの混雑が予想される中、課題となっているのが宿泊施設での人手不足です。こうした中、旅行者に宿泊場所を提供し、報酬を支払う代わりに業務を手伝ってもらう「お手伝い」と「旅」をかけあわせた、新たなサービスが注目されています。
どういったサービスなのか、探ってきました。
栃木県日光市の鬼怒川温泉にある観光旅館では、客が戻ってきたことし1月ごろから人手不足が課題となっていました。
新型コロナの感染拡大前には、従業員は45人ほどいましたが、宿泊客の減少に伴う業務の縮小や体調不安などから退職者が相次いで30人ほどにまで減少し、客の出迎えや準備など業務に影響が出ることが心配されました。
このため、従業員を募集しましたが、高齢者が多い地域であることもあって配膳や清掃などの仕事を担ってもらう若い従業員は集まらなかったといいます。
こうした中、頼りにしているのが、「お手伝い」と「旅」をかけあわせた新たなサービスです。
旅行者には宿泊場所を提供し、そのうえで報酬を支払って業務を手伝ってもらいます。
4月からこれまでに仲介会社を通じて大学生などの若者15人を集めることができ、フロント業務や食事の配膳、客室の清掃などを行ってもらっています。
群馬県の大学生、小田千晶さん(22)は、4月1日から1か月間の日程で参加しています。
小田千晶さん
「もともと旅が好きで新しいことに挑戦したかったので、いろいろな仕事を体験しつつ暮らすように旅をするという理想の生活が叶えられると思って参加しました」
小田さんは、朝はチェックアウトなどに対応するフロント業務を担当し、日中は周辺を散歩したり、食事を楽しむなどしたあと夕方から再びフロント業務に従事します。
小田千晶さん
「仕事先の人が地元を案内してくれたり、もらった給料で旅をもっと充実させたりできるうえ、『助かってる』と直接伝えられたり、接客する中で自分が助けることができていると思ったりする瞬間もあるので、来てよかったと思います」
この観光旅館では大型連休中はすでに客室の8割が予約で埋まっていて、新たに若者9人が手伝いに来ることが決まっているということです。
観光旅館「花千郷」 井上輔さん
「人手が少ないとサービスが行き届かなかったりする可能性があるので非常にリスクだと考えていました。お手伝いに来る人は未経験者が多いので教え込まなければいけませんが活動的、意欲的な人が多く助かっています。大型連休はコロナが落ち着いてから初めての繁忙期なのでドキドキしていますが、若い力を活用させてもらいしっかりやり遂げたい。将来的には就職につながったり改めて旅行に来てもらったりと二次的、三次的な効果も期待したい」
このサービスは、東京の仲介会社が提供しているもので、宿泊施設や農家などにとっては人手が確保できるメリットがあるほか、利用者にとっては報酬のほかに空き時間などで旅行ができるメリットもあります。
大型連休を前に人手を確保したいと問い合わせが増えているということで、連休期間中の求人は去年のおよそ1.4倍に増えていて、このうちの半数以上を宿泊施設が占めているということです。
また、大型連休中に利用を予定している人も去年のおよそ2倍に増えていて、双方の需要が高まっているとしています。
サービスを提供する「おてつたび」 永岡里菜 代表取締役
「客室は空いていても、人手が足りず予約を取ることができない宿泊施設など、観光業では人手不足が課題となっている。新型コロナの影響で国内に目を向ける人が増えてきているので、こうした人材をうまく活用して、人手不足を解消してほしい」