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子どもの原因不明の肝炎 アデノウイルスは?症状などわかっていること

  • 2022年5月6日

イギリスやアメリカなどで幼い子どもを中心に報告が相次いでいる原因不明の急性肝炎は、国内でもこの肝炎の可能性がある患者が報告されています。原因はまだはっきりせず、肝臓移植が必要となるケースもあるということです。新型コロナやアデノウイルスの関連はどうなのか。症状や原因究明の状況など、わかっていることをまとめました。

原因不明の急性肝炎か 国内でも報告

厚生労働省は原因不明の肝炎で16歳以下の子ども1人が入院していたことを4月25日に明らかにしました。
原因不明というのは、A型からE型まで5種類ある肝炎ウイルスが検出されないのに、子どもが肝炎になっているためで、イギリスやアメリカなどで幼い子どもを中心に報告が相次いでいる原因不明の急性肝炎の可能性がある患者が国内で確認されたのは初めてでした。可能性がある患者は、5月13日の時点で国内では、あわせて7人となっています。

幼い子ども中心に12か国169人が症状

WHO=世界保健機関によりますと、4月21日までに欧米を中心に12か国から169人で症状が出たと報告されているということです。内訳は、イギリスが114人、スペイン13人、イスラエルで12人、アメリカで9人、デンマークで6人などとなっています。
患者からは一般的な肝炎ウイルスは検出されておらず、原因は分かっていないとしています。

原因不明の肝炎 わかっている症状は

原因不明の肝炎について、これまでわかっている症状です。WHO=世界保健機関によりますと、肝臓の酵素の値が高くなっていて、尿の色が濃くなったり、便の色が薄くなったりするほか、皮膚などが黄色くなる「おうだん」や下痢、おう吐、腹痛、関節痛や筋肉痛といった症状が出る一方、発熱した子どもはほとんどいないということです。

〇原因不明の肝炎 わかっている症状
・肝臓の酵素の値が高い
・尿の色が濃くなる・便の色が薄くなる
・「おうだん」
・下痢・おう吐・腹痛
・関節痛や筋肉痛

イギリスやアメリカの詳細な症例報告では、患者の多くはおう吐や下痢、それにおうだんの症状が出ていて、重症になった子どもでは肝臓の移植が必要になったケースも複数報告されています。

WHOによりますと、症状が出ているのは、生後1か月から16歳までの子どもだとしています。患者の年齢は10歳未満が大多数で、およそ半数は3歳から5歳だということです。
 

アデノウイルスの関与は 新型コロナとの関連は

WHOの専門家は、症状が出た子どもたちから、A型からE型まで5種類ある肝炎のウイルスや、細菌や毒物、薬物など、通常、原因になると考えられるものは見つかっていないとしています。

この中で、関与が指摘されているのが、のどの痛みや下痢などを起こす「アデノウイルス」です。

WHOが4月23日に出した報告によりますと、この時点で症状が出たと報告された子ども169人のうち、少なくとも74人からアデノウイルスが検出されていて、18人がアデノウイルスのうち、41型と呼ばれるウイルスに感染していたということです。
また、19人についてはアデノウイルスとともに新型コロナにも感染していました。

〇ウイルスの状況は
・A~E型 肝炎ウイルス 検出されず
・アデノウイルス 74人
・アデノウイルス41型 18人
・アデノウイルスと新型コロナ 19人

 一般にアデノウイルスは接触や飛まつを通じて感染し、主に、喉の痛みなど呼吸器の症状が出ますが、アデノウイルス41型は呼吸器の症状とともに下痢やおう吐などの症状が出るということです。

〇アデノウイルス
 喉の痛みなど呼吸器の症状
〇アデノウイルス41型
 呼吸器症状ともに下痢やおう吐など

ただ、免疫の状態が落ちている子どもたちが感染した場合に肝炎になったとする報告はあるものの、健康な子どもたちに肝炎の症状が出るという報告はないとしています。

WHOは、新型コロナの感染が世界的に拡大して以降、アデノウイルスの感染が減っていたため、アデノウイルスに感染しやすくなっていることや、新たなタイプのアデノウイルスの可能性などを調べる必要があるとしています。
一方で、症状が出た子どもの大多数は新型コロナのワクチンを接種していないため、ワクチンの副反応だとは考えにくいとしています。
 

国立感染症研究所 症例があるか調べる段階

原因不明の肝炎について国立感染症研究所は5月9日の時点で、いまは症例があるか調べる段階だとしています。

国立感染症研究所(4月25日時点)
「報告のあった各国で症例が著しく増加している兆候はなく、患者の周囲に容易に感染し、急速に感染者が増加するような状況ではない。国内でも小児の重症肝炎が増加している兆候はない。また、可能性のある原因の1つとして挙げられているアデノウイルスが国内で通常想定される以上に流行している兆候もない」

“手洗いをしっかり 症状が出たらすぐに医療機関に”

茨城県立こども病院 須磨崎亮名誉院長
「子どもではA型からE型の肝炎には該当せず、原因がはっきりしない急性肝炎がしばしば起きるので、実際に件数が増えているのか、国や専門家がよく調べる必要はあるが、いまの時点では、一般の保護者が過度に心配する必要はないのではないか。
子どもに『おうだん』の症状が出たり、おう吐や下痢で元気がなくて、水分が取れない状態になったりすれば、すぐに医療機関を受診してほしい。アデノウイルスはありふれたウイルスなので、すぐには原因だとは断定できないと思うが、飛まつを通じてだけでなく接触感染で広がることも多いので、手洗いはしっかりしてほしい」

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