面積の9割以上を森が占める東京 檜原村。かつて林業が盛んでしたが、木材価格の低迷や人手不足などのため、荒れる森も少なくありません。
“森を元気にしたい”と間伐材で作った太鼓を使って演奏会が開かれました。
檜原村の森の中で開かれた演奏会を企画したのは、江戸時代から太鼓や神輿などをつくる老舗の8代目、宮本芳彦さんです。
店では代々、太く育った木をくりぬいて大きな太鼓を作ってきました。しかし近年、太い木の入手は困難になっているといいます。
そこで宮本さんは2年前、森を手入れする際に出る「間伐材」を使った太鼓づくりを始めました。
間伐とは
間伐とは、森林の混み具合に応じて、樹木の一部を伐採し、残った木の成長を促す作業です。間伐を行うと、光が地表に届くようになり、下層植生の発達が促進され、森林の持つ水源涵養機能、土砂災害防止機能、生物多様性保全機能などが増進します。また、残った木の成長が促されることにより、木材としての価値が高まります。
「林野庁のホームページ」より
宮本さんは、積極的に間伐材を使って需要を増やし、森を守ることにつなげたいと考えたのです。
宮本卯之助商店 宮本芳彦さん
「いつかケヤキの木とかが枯渇をしてしまうという危機感がある。太鼓が使われるお祭りや芸能っていうのは自然との共生とか五穀豊じょうとかを願って行われるわけです。そこで使われる楽器が、きちんと循環をしていないサステイナブルになっていないとおかしいのではというのがあって」
演奏会に先だって、参加者たちは地元の林業者から、成長の悪い木や曲がった木があると、森のなかにどのような影響が及ぶのか、間伐の重要性について学びました。
檜原村で林業を営む 青木亮輔さん
「ちょっと見上げていただくと葉っぱがふれあっていますよね。隣どうしがぶつかっているので支えあっているみたいになる。そうすると木は“隣どうしで支え合っているから根っこを張らなくていいや”となって、根っこが張れなくなる。そうすると、バランスの悪い木になってしまって、例えば台風が来たときに、みんな倒れてしまう。そのため間伐という作業がどうしても必要になってくるんです」
演奏会は間伐作業からスタートしました。“木が倒れる音や風圧も体感してほしい”という思いからです。
そして始まった太鼓の演奏。
最後はお客さんも加わって森を練り歩きました。
太鼓がこういったところの自然の中で生まれて、それを太鼓にして自分たちで演奏していることをうれしく思う。
宮本卯之助商店 宮本芳彦さん
「木を育ててくれる方と、われわれのような、物をつくっていく会社、また太鼓を演奏してくれるかたの、大きな循環を作っていきたい」
宮本さんは、今後、東京だけでなく、各地の森林の間伐材で太鼓をつくっていくのが夢だということです。