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養殖ヒレナマズ!育てて食べて役に立つ?!(湖西市)

湖西市の住宅街で始まった、ちょっと変わった魚の養殖。「しず♡LOVE」中継リポートからの報告です。
  • 2024年04月19日

湖西市の住宅街にある小さな養殖場で、あまりなじみのない生き物が元気に育っています。その名も「ヒレナマズ」。どんな人たちが、なぜこの魚を養殖しているのでしょうか?平日夕方6時10分に放送している「NHKニュース たっぷり静岡」で中継リポートしました。

↓↓ 記事の最後には動画もあります! ↓↓

住宅街で、およげ!ヒレナマズ

養殖場ができたのは去年の秋。湖西市新居町の住宅街にある、空いていた古い倉庫を利用しています。銀色に見えるのが、1000匹近いヒレナマズが泳ぐ水槽です。

いかにもナマズらしい立派なひげをたくわえた魚影がゆらり。ガラス水槽でもっとよく見てみると…

これがヒレナマズの全貌です。去年12月から稚魚の飼育を始め、このときの体長は30センチあまりでした。丈夫で病気になりにくく、たくさん食べてどんどん成長するので、養殖にぴったり。東南アジアなどでは一般的に食べられたり養殖されたりしている魚なんだそうです。

ナマズと聞くと、泥臭い?といったイメージもあるかもしれませんが、この養殖場で育ったヒレナマズは臭みなどのクセは出ないといいます。

ヒレナマズを育てる陸上養殖のシステムは、岡山県の企業が開発

住宅街にあるこの養殖場、川や海とも浜名湖ともつながっていません。使う水はカルキをとばした水道水。ろ過装置や微生物の働きできれいにして循環させていて、排水は出ません。養殖場内だけで完結した「閉鎖循環式陸上養殖」というシステムです。

養殖場は、障害者支援の現場

ではどんな人たちが、なぜヒレナマズの養殖を始めたんでしょうか。責任者の渡邊実輝宏さんです。

注目すべきは、その職業。
渡邊さん、お仕事は何か教えてください!

渡邊さん

浜松市にある医療法人の理事長です。

病院の経営者が、異業種参入で養殖場を作ったんです。
医療法人がヒレナマズの養殖を手がける狙いとは?

渡邊さん

私たちの医療法人グループでは、精神や発達に障害がある人たちが就労訓練などを行う、福祉事業所を運営しています。利用者の方々が自立を目指す上での就労訓練の一環として、このヒレナマズの養殖事業がとても魅力的な仕事だと考えているんです。

この養殖場、障害のある人たちが働く福祉事業所として運営されているのが大きな特徴なんです。ナマズ養殖が魅力的な仕事だというのはなぜでしょう?エサやりを見せてくれた利用者の方に聞いてみました。

ヒレナマズに与えるのはマダイ養殖用のエサ。丁寧に分量を量ります

ヒレナマズ養殖のやりがいって、どんなところですか?

事業所の利用者

稚魚から育てているので、大きくなっているのを見ると、自分たちで育てているという実感がわいて、とてもうれしくなります。達成感があります!

利用者の皆さんが口をそろえるのは、「生き物を相手にする仕事ならではのやりがいがある」ということ。
皆さんは障害の特性上、積極的に働けるときとそうでないときがあったり、コミュニケーションに難しさがあったりするそうです。そんな中、ここではヒレナマズの世話への責任感も芽生えて、自然に会話も生まれ、より安定して働くことができるといいます。障害者の自立につなげる上で魅力的な仕事だ、というわけなんです。

「生き物の世話」という仕事を通じて、障害のある人たちの働く力を引き出し、社会進出を支援しようというこの養殖場。とてもユニークな福祉事業所だったんです。

ただおいしいだけじゃなく…

で、気になるのはヒレナマズのお味ですよね。
出荷するのはさらに大きく成長させてからですが、この日は特別に、ここで育ったヒレナマズを使った料理を用意していただきました。それも2品!

ご紹介します。湖西産ヒレナマズの…


フライ! そして…

バターソテー!

ヒレナマズの身は淡泊で、油との相性が良いそうです。試食したフライは分厚く、肉付きのいいヒレナマズならではのリッチな食べ応え。風味にクセはまったく感じません。食感は滑らかでありつつも、どこか鶏肉を思わせるような舌触りもあり、新鮮な味わいでした。おいしい魚です!

そして、ヒレナマズの最初の出荷先は、病院給食を作る給食センターになる予定です。もちろん、渡邊さんたちの病院で提供される給食に使うためです。その意義について、渡邊さんはこのように考えています。

理事長 渡邊さん

病院給食は、食料価格の高騰などによって、維持することが大変になっています。給食を患者さんや職員に安定して届けるのは、喫緊の経営課題です。
そこでこのヒレナマズの陸上養殖が、障害者を支援しながら、食料自給にもつながれば理想的だと思っています。

身近な場所で養殖できて、おいしいだけでなく、さまざまな社会課題に対して役に立つ。そんな存在になってほしいという期待が、このヒレナマズには込められています。

↓↓ 放送動画はこちら!(期間限定で公開) ↓↓

  • 堀越将伸

    静岡放送局アナウンサー

    堀越将伸

    生まれ故郷の群馬には「ナマズの天ぷら」という郷土料理があります。食べたことはありません。ナマズのおいしさを知った今、これは行かねば…

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