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静岡 市の検査で住宅の井戸水からPFAS検出 調査拡大 相談窓口設置へ

  • 2023年11月15日

静岡市清水区の化学工場で有機フッ素化合物の「PFAS」のうち有害性が指摘されている物質が10年前まで使われていたことを受け、静岡市が10月に工場付近にある住宅の井戸の地下水を検査した結果、最大で国の暫定目標値の26倍にあたる濃度が検出されたことがわかりました。市は調査範囲を広げるなどして継続して水質検査を行うとともに、相談窓口を設置して、井戸水の検査の希望などを受け付けることにしています。

工場付近の水路で 5.4倍の濃度検出

アメリカの化学メーカー「デュポン」社が出資する会社が静岡市清水区で運営していた化学工場では、フッ素樹脂を製造する過程で「PFAS」のうち発がん性などの影響が指摘されている「PFOA」が2013年まで使われていました。

これを受けて静岡市は10月から工場周辺で水質検査を進めていて、このうち工場付近の水路で採取した水からは、国の目標値の5.4倍にあたる濃度のPFOAが検出されています。

住宅の井戸でも検出 目標値の26倍

静岡市の難波市長は11月8日に臨時の記者会見を開き、工場から250m圏内にある三保地区の5か所の住宅の井戸を対象に行った、地下水の検査結果の速報値を公表しました。

それによりますと、このうち1か所の井戸ではPFOAが1リットルあたり1300ナノグラム検出され、国の値の26倍の濃度に達していたということです。また、そのほか3か所でも国の値の7倍から14倍の濃度が検出されたということです。

静岡市 難波喬司市長
26倍という値はなんとも言いがたいが、健康被害が直ちに発生するような状況ではないと考えている。この値をまずは受け止めて、迅速に対応していくことが必要だ。

工場付近の住宅の井戸水から国の値を大きく上回る濃度のPFOAが検出されたことを受けて、市の調査に協力した住民からは驚きの声などが聞かれました。

井戸水を庭の水まきや洗車に使う 女性
工場から家が近いのでどうかなと思っていましたが、数値を見てびっくりしました。すぐには濃度は下がらないと思いますが、ほかのところもよく調べてもらいたい。

井戸水を庭の水まきや金魚の飼育に使う 男性
飲み水に使っているわけではないので心配はしていませんが、工場で使わなくなってもいまだに消えないのは恐ろしいと思いました。市からは『毎日大量に飲まなければ大丈夫』と説明されましたが、夏になったら孫がプール遊びもするので、国の目標値以下に収まってほしいです。

検査した5か所の井戸水は庭の水まきなどに使われ、飲み水には使われていないということですが、難波市長は当面、三保地区の井戸については飲むのを控えるよう注意を呼びかけました。また、影響の広がりを詳しく調べるため、周辺の地区の井戸にも範囲を広げて、地下水の検査を進める方針を示しました。

静岡市「PFAS相談窓口」設置へ

三井・ケマーズフロロプロダクツ 清水工場

一方、難波市長は、現在工場を運営している三井・ケマーズフロロプロダクツから、「ことし9月に工場の敷地内にある複数の井戸で検査をした結果、すべてから国の値を上回る濃度が検出された」という説明を受けたものの、具体的な数値は示されなかったことを明らかにしました。

難波市長
11月末までに追加の調査結果をふまえて新たな対応方針を示したいと考えているので、会社側にはそれまでにデータの提供を求めたい。

工場を運営する 三井・ケマーズフロロプロダクツ
(静岡市の検査結果について)近隣住民や行政機関など関係者の皆様にご心配をおかけしていることをおわび申し上げます。因果関係については引き続き調査してまいります。

難波市長は、市の環境保全課に「PFAS相談窓口」を設け、三保地区で井戸水の検査を希望する住民からの相談などを受け付ける考えを示しました。

静岡市PFAS相談窓口 
電話番号:054-221-1359

専門家「全国的に見ても極めて高い」

静岡市の検査結果について、PFASの環境省専門家会議のメンバーでもある京都大学大学院の原田浩二准教授に話を聞きました。

京都大学大学院 原田浩二准教授
環境省がとりまとめを行っている全国的な検査でも1リットル中1000ナノグラムを超える地点はほとんどなく、極めて高い状況だと思う。
PFOAは土壌中を極めてゆっくり動くことが分かっていて、完全に除去されるまでに相当の時間がかかると想定されている。(工場がPFOAの使用をとりやめてから)10年がたっているが、まだ広がっている途中だと考えてよいと思う。
周辺の住民が井戸水を使用する際には、飲み水として使わないことが重要だが、直接口にしなければ影響はそれほど大きくないと考えられる。農業用に使う場合には一定の影響を考慮する必要があり、今後、農作物の調査はしっかりと進めるべきだ。

静岡市 新たに18の井戸を調査へ

検査結果を受けて、静岡市は工場付近の水路で10月31日から毎日、モニタリング調査を行っています。また、地下水については、どの範囲まで影響が広がっているかを確認するため、三保地区や隣接する地区にある計18か所の井戸で新たに検査を行うほか、今回調べた5か所の井戸で継続的に検査を行うことにしています。
その上で、PFOAの濃度を国の値以下にすることを目標に、三井・ケマーズフロロプロダクツと対策を協議することにしています。

静岡市の水質検査は、市が運営する「環境保健研究所」で行われています。11月9日には、工場の前の水路で採取した水を専用の装置を使って濃縮するなどして、PFOAの値を詳しく分析していました。

静岡市環境保健研究所 中川美乃里係長
市民の皆さんも不安な気持ちだと思うので、できるだけ早く正確な検査結果を出すことを頑張っていきたい。どこまで濃度の高い地域が広がっているかを調べ、市としての方針決定に貢献していきたい。

静岡市では検査結果がまとまりしだい、市のホームページで随時、公表することにしています。

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