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静岡県レインボーパレード 性の多様性が当たり前の社会に

  • 2023年07月13日

性的マイノリティーの人たちへの理解を深めてもらおうと世界各地で行われているパレード「レインボープライド」が、6月11日に静岡県内で初めて行われました。主催者の1人の鈴木げんさんは、女性として生まれ、男性として社会生活を送っています。鈴木さんがパレードに込めた思いは・・・?次の世代を思いやる熱い気持ちを話してくれました。(2023年6月14日「たっぷり静岡」放送 記者 牧本真由美)※映像は文末に掲載されています。

パレードの名前は「レインボープライド」

「ハッピープライド!」
静岡県内で初めて行われたパレードです。県内外からおよそ300人が浜松市に集まりました。

」は性の多様性を。「プライド」は性的マイノリティーの人たちが自信を持って生きることを表しています。

主催者の1人、浜松市の鈴木げんさんは特別な思いでパレードに臨みました。

「みんなで自分たちはここにいるって胸を張って生きられる社会にしたい」(鈴木げんさん)

幼い頃から性別に違和感が・・・

竹で編むかばんの職人である鈴木さん。女性として生まれましたが、幼い頃から自分の性別に違和感があったといいます。

「一番初めに自分の性別に諦めたのが4歳の時です。保育園のトイレから出たときに自分はこれから女の子って言われたらそっちに行かないといけないんだみたいな気持ちになったことをよく覚えていますね」(鈴木げんさん)

自分を偽らずに生きたい

長い間、諦めや葛藤を繰り返していた鈴木さんは、40歳のときに専門のクリニックで性同一性障害の診断を受けました。それからは自分を偽ることなく男性として生きることを決め、名前も「げん」に変えました。いまは月に1回から2回のペースで、男性ホルモンを投与する治療を受けています。顔にはひげが生え、声は低くなり、体は筋肉質になりました。

「すね毛が濃くなってきますね。自分が自分として生きていくためには、欠かせない必要なものなので。しっくりくるっていう感じですね」(鈴木げんさん)

男性として生きているのに、突然、女性と言われる

しかし、鈴木さんは生活の中で、突然「女性であること」を突きつけられ、悩まされるといいます。

「今度ちょっと旅行に行くんですけど、そのときのパスポートの表記だとか。普段、男性として生活をしているのに、自分のことが書かれているはずの書類の中に女って書いてある、その文字にびっくりします」(鈴木げんさん)

「夫」「妻」と呼び合っても結婚できず

鈴木さんには、浜松市が設けた「パートナーシップ宣誓制度」で、パートナーとして公的に認められた女性がいます。

國井良子さんです。2人は仕事の都合で別々に暮らしていますが、休みの日にはそれぞれの家を行き来しています。互いのことを「夫」や「妻」と呼んでいますが、戸籍では2人とも女性のため、法律上の結婚は認められていません。

「この人、戸籍、なんで女性なのかしら、という思いはあります。女性の要素はみじんもないですから。それが戸籍だけ」(國井良子さん)

“手術せずに戸籍の性別変更を!”裁判で申し立て

いまの法律では、戸籍の性別を変更するには生殖能力をなくす手術を受ける必要があると定められています。しかし、鈴木さんは手術は身体的にも金銭的にも負担が大きく、受けたくないと考えています。このため、法律の規定は「手術を事実上強制するもので人権侵害だ」と主張して、手術を受けなくても性別変更を認めるよう、おととし裁判所に審判を申し立てました。

「性別のことを気にせずに普通に生活がしたいだけなので。何か大きな事がしたいとか、そんなことはまったくないので。普通に生活が安心して普通に生活が送れるようになったらいいなというところですね」(鈴木げんさん)

性の多様性、社会全体で理解を

いま、裁判所の決定を待っている鈴木さん。性的マイノリティーの人が生きやすい社会をつくるためには、司法の判断だけでなく、性の多様性について社会の理解が深まることが重要だと訴えています。

「同じ苦しみをいまの子どもたちには味わせたくないので。自分を偽らなくても自分らしく生きていける社会ですね。変えていくのは大人の責任だと思っています」(鈴木げんさん)

『戸籍の性別を変更するには生殖能力をなくす手術を受ける必要がある』とする法律の規定をめぐっては、いま、最高裁判所での審理の行方が焦点となっています。男性として生まれ、女性として社会生活を送る人が申し立てた審判について、最高裁は去年12月、15人の裁判官全員による大法廷で審理することを決めました。
この法律の規定について、最高裁は2019年に「憲法に違反しない」とする判断を示していますが、大法廷での審理が決まったことで、判例の見直しや、新たな憲法判断が示される可能性が出ています。
鈴木さんの審判にも影響が出る可能性があり、最高裁の判断に注目が集まっています。

  • 牧本真由美

    静岡局 記者

    牧本真由美

    2002年 NHK入局
    社会部・報道局遊軍など
    トレラン大好き
    2歳児子育て奮闘中

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