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「8回目」の年男は凄腕アーティスト!? 95歳 若さの秘密は

静岡県菊川市 から届いた1枚の絵手紙 差出人は「8回目の年男」!?いったいどんな人?会いに行ってきました! 取材 NHK静岡 末永万智キャスター
  • 2023年02月02日

    きっかけは1枚の絵手紙 「8回目」の年男って!?

    末永キャスターと 絵手紙を送ってくれた横山海夫さん

    2023年1月。NHK静岡放送局の「絵手紙コーナー」に1枚のはがきが届きました。
    自宅近くの堤防から家族で初日の出を見たときの様子が描かれています。
    差出人は、菊川市にお住まいの横山海夫さん、とありました。

     

    菊川市 横山海夫さんからの絵手紙

    色鮮やかなハガキの裏には、メッセージも。
    「家の前の堤防で、地区の皆さんと威勢よく世界の平和、人々の多幸を祝してバンザイ三唱しました」。
    お正月からバンザイ三唱、楽しそうですね~。

    ふと見ると、こんな一言に、目が釘付けになりました。
    「本年、96歳。卯年・年男です」。
    今年96歳ということは、12歳を1回目と数えると「8回目」の年男!

    絵手紙からもパワーが伝わってくる横山さんとはどんな方なのか。
    会いに行ってみると「芸術や表現活動が、長い人生を生きぬく力を与えてくれた」という独自の哲学にもふれることができました。

    「8回目の年男」横山海夫さんをたずね 菊川へ

    菊川市に初めてやってきました! 

    静岡市から車で50分。みぞれまじりの寒い日でした。
    静岡県西部の菊川市。お茶の栽培が盛んで、あちこちに製茶工場がありました。
    住所をたよりに、市内を流れる菊川沿いの住宅街を歩いていきます。
    これがもしかして、初日の出を眺めた堤防かしら・・・?
     

    菊川沿いの住宅街を歩いていく

    すると、銀髪にオールバックの男性が、道の途中に立っていました。
    「もしかして、海夫さんですか?」
    「そうだよー!迷ったかと思ってここで待っていたんだよ!」 
    寒いなか、すっと背筋を伸ばして外で待ってくれていた横山海夫さん。
    本当に90代!? と思わずびっくりしました。

    「8回目の年男」横山海夫さん 昭和2年(1927年)6月生まれ

    横山海夫さんは、昭和2年(1927年)6月に、いまの菊川市に生まれました。
    妻の久枝さんは隣同士の家で育った幼馴染だとか。
    一学年下の久枝さんは満94歳!
    ご夫婦そろってとてもお元気です。

    結婚して今年で75年!  仲良しご夫婦です

    満95歳 肉体を鍛えるルーティーンとは

    横山さんに、さっそく、若さを保つ秘密を根掘り葉掘り聞きました。
    「それはね、毎日こんな体操をしてるんだよ」
    筋力を維持するため、毎日欠かさずエクササイズを行っているといいます。

    スクワットをする横山さん

    ①体をかがめて深呼吸
    ②体を反らす運動
    ③スクワット
    ④首の運動
    ⑤耳とあごのマッサージ
    これらをセットでおこないます。

    そして、朝のウォーキングも欠かしません!
    まずは、近所のお宮にお参り。

    近所にある船見山太郎坊大権現

    そのあと、必ず菊川の堤防を上り下り。
    遠くに見える富士山を眺めながら深呼吸。帰りはつま先立ちで軽くジョギング。
    20代の私よりも速いテンポで前に進んでいきます。
    実は、横山さんが本格的に運動に取り組み始めたのは3年前、92歳のとき。
    体力の衰えを感じて始めたそうです。

    「どうせ長生きするなら健康でいたいから始めたんだよ。やってみたら、身体の調子はどんどん良くなるし、これが健康の源になってるね。寒いからと言って家にへばりついたら、どんどん身体は動かなくなっちゃう。体が動くうちに動かすのは大事だと実感したよ。」

    力強い足取りで登る横山さん

    「創造」が活力の源

    どこまでもアグレッシブな横山さん。その活力はどこから来ているのか尋ねると、
    原点は少年時代にありました。

    旧制県立掛川中学校 (現・掛川西高校)時代の横山さん

    幼いころから、絵を描いたり工作をしたりすることが大好きだった横山さん。
    当時の尋常高等小学校時代には、美術クラブに所属。絵を描くたびにコンクールでは入選するなど才能を発揮しました。

    「小さい頃から、私には見たものを絵とか工作とかで作ってみたくなるという不思議な性質があってね。農家の人が田植えをしたらすぐ描いたり、衣紋かけを見たら針金で作ってみたり。それが先生からもほめられて、社会からも評価されて、自信がついたね。」

    終戦後は地元の公立学校の教師になった横山さんは、ひときわ美術や図工の授業には力を入れたといいます。

    小学校教諭時代の横山さん

    自分自身を表現したいーその思いは、教師を引退したいまも燃え続けています。
    ご自宅の一室は、まるでギャラリー。
    絵画や置物、陶芸など、横山さんの作品でいっぱいでした。

    自宅の壁を埋め尽くす作品

    鶴やたぬきの置き物もご自身で作ったんだそうです!
    木で骨組みを作り、粘土や新聞紙を使って肉付けしていくんだとか。

    横山さん手作りの鶴の置き物
    玄関前には 自作の巨大なたぬきの置き物 

     今は穏やかな生活を送っている横山さんですが、1世紀近い人生の間には、「荒波にもまれたこと」も何度もあったといいます。
     昭和19年の東南海地震ではご自宅が全壊。
     太平洋戦争で軍需工場に動員され、空襲による火の海から、命からがら逃げたこと。
     結婚後、結核にかかり、家族とも会えずに過ごした半年間。
     そして、退職後も投資に失敗し数千万円を失ったことなど、落ち込んだり、不安になったことが幾度もあったと語ってくれました。そのうえで。

    「いま、自分が生きていられるのは、何かを表現する場があったからだと思うね。不安や孤独を感じたとき、ひとりぼっちでもできるのは、作品を創ること。孤独に耐えるように自分の意志を絵にぶつける。そうすることが、心の健康につながっているんだね。いざとなったときに、自分の力で生きていく力をつけられたと思うよ。」

    地元・菊川は創作意欲の源

    最後に…
    96年近く菊川市で暮らしている横山さんに、菊川の好きなところを聞きました。

    「このまちの風景が好きだね。高い建物がなく、遠くまでよく見えること。」

    家の前の堤防から見える景色

    天気がいいと、橋のむこうに富士山も見えるんだそう。
    絵にも描くほど、自宅前のこの景色が一番のお気に入り。
    寒空にぽっかり浮かぶ雲と菊川沿いの広々とした風景は、昔と、変わりません。
    この場所が、新たな創造力をかき立ててくれるそうです。

    2時間半 たっぷりお話をしてくれた横山さんと

    一緒に「ブイサイン」をしてくれた、チャーミングな横山さん。
    これからも創作活動はまだまだ続きます!
    ご協力ありがとうございました!

      • 末永万智(すえながまち)

        NHK静岡放送局 キャスター

        末永万智(すえながまち)

        岐阜県揖斐川町出身。
        「ひるしず」キャスター、「たっぷり静岡」リポーターとして中継などを担当。
        趣味はお笑いラジオを聴くこと。特技は英語。

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