86万人がチャンネル登録 仙台在住 注目のユーチューバー「ながの社長」とは

 突然ですが、「ながの社長」をご存じでしょうか。

正直言います。
最初は私もパッと思いつきませんでした。

検索サイトで調べると…、
出てくる出てくる、おいしそうな料理、と、中年の男性の動画。

そして、お決まりのせりふおいおいおいおい

どうやら仙台在住のいま注目のユーチューバーのようです。
どんな人物なのか、なぜ人気なのか、「ながの社長」本人を直撃しました。

(仙台放送局記者 藤岡しほり)


まずは再生回数1400万回超えたという、こちらの動画をどうぞ。

「ながの社長」が出る動画投稿サイトのチャンネル登録者は86万人(2023/2/22時点)。
YouTubeが去年発表した「国内急成長クリエイター部門」で1位になりました。

【最初は失敗だった動画事業】

「ながの社長」、いったいどんな人物なのでしょうか。
さっそく連絡を取り、勤務先という仙台市の建設会社を訪ねました。

「ようこそ、いらっしゃいました」
会社で出迎えてくれたのは「ながの社長」本人です。
テンションが高い動画の印象よりも、優しくて穏やかな印象…

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“ながの社長”こと長野雅樹さん

本名は長野雅樹さん(45)

岩手県出身で大学卒業後、仙台市の設備会社に就職。
3年前に独立し、自らの建設会社を立ち上げたそうです。

確かそのころ、新型コロナの感染が急拡大した時期だったのでは?

(ユーチューバー「ながの社長」長野雅樹さん)
「そのとおりです。感染拡大で人に直接会うことが失礼とされた時でした。
 ただ会社を立ち上げたのに営業活動もせず、待っているわけにもいかず、
 SNSで自社の情報を発信していこうと考えました。
 建設業で本気でSNSに取り組んでいる会社はなく、勝てる道筋かなと」

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建設現場にはこまめに足を運ぶ

空調の専門性をアピールするため、最初は「かっこいいエアコン」や「テレワークにおすすめのエアコン」など仕事に関係する動画を投稿しましたが、反応はいまひとつ。借金して始めた肝いりの動画事業は出だしからつまずいたといいます。

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“自己満足”だったという昔の投稿

(ユーチューバー「ながの社長」長野雅樹さん)
「再生回数も増えず、自己満足だけの感覚でした。建築に興味のある人は限られているので、ヒットする人にはするが、それ以上に“バズる”要素はないと痛感させられました。借金してやっていた事業なので、まさに“お金が溶けていく”ような状況でした」


【オフィス×料理 異色のコラボ】

そこで、「退路を断つ」と一念発起。外部に任せていた動画制作を自社で行うことにし、専門の社員を新たに雇いました。多くの人の興味を引こうと目を付けたのは仕事とは直接関係ない「料理」。「オフィスの社長の目の前で部下がいきなり料理する」というコメディー調のショート動画を制作することに大きく方針転換したのです。

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定番の居酒屋メニューから中華まで幅広い

動画の中で「ながの社長」と軽妙なやりとりをする「部下」ことケイタさんは次のように当時を振り返ります。

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“部下”のケイタさん ※本人の希望により顔はイラストにしています

(「ながの社長」の“部下”ケイタさん)
「料理動画を始めたきっかけは、室内で料理をするとワクワクすると思い、その感じを視聴者にも感じてもらいたいと思ったことです。会社で料理する強烈なインパクトを続けるためには料理を過激にしていくしかない。社長の目の前で中華鍋振るくらいまで限界に挑戦したいと思います」

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視聴者からは「食べるだけで笑わせるって天才」「社長のリアクションいつ見ても飽きない」料理についても「料理が毎回、本当においしそう」など数々のコメントが寄せられています。

去年春、600人だった登録者は1年足らずで1400倍の86万人に急増しました。

【東北に根ざした企業として地域に貢献を】

ヒット動画はどのように撮影しているのでしょうか。
その裏側をのぞかせてもらいました。

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動画はスマホ1つで撮影

ふだんの撮影はスマートフォン1台。
料理に対する「ながの社長」の生の反応を大切にするため、事前の打ち合わせはほとんどしていないといいます。

(「ながの社長」の“部下”ケイタさん)
「社長がうまいの大声を出す時のレパートリーを、ものすごく考えて苦しみながら出しているところを見るとすごくおもしろい。編集しながらゲラゲラ笑っています」

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人気は本業にも波及しています。動画を見た人から仕事の依頼が急増し、会社の売り上げはすでに去年の倍に増えました。今後は動画を生かして新たなビジネスも始めたいと考えています。

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(ユーチューバー「ながの社長」長野雅樹さん)
「今後は建物×SNSというオンリーワンのビジネスを考えています。建設ってふつう、建物が完成したら終わりだと思いますが、僕らはYouTube発信ができて、集客につなげることができる。それが建設に携わったお客さんが飲食店だったり、サービス業でだったりすれば、僕らのチャンネルを見た人たちとお店をつなぐことができると思うんです。建設とSNSは離れているようで、近しいビジネスになってきたと思います」

 

【取材後記】
インタビューの最後、建設業の社長として今後の抱負を聞いた際、長野さんは次のように話してくれました。

「みんなをハッピーにすることを常に考えて、東京ではなく、仙台、東北に根づいたクリエーターとして活躍していきたい。宮城、仙台、東北にある会社なので、東北の食や建設業などでも地域貢献していければ」

「社長」としても「クリエーター」としても、常に新しいことを考えている「ながの社長」。今後どんなことで世の中をあっと言わせてくれるのか、注目してきたいと思います。



fujioka_230303.jpg【プロフィール】
仙台放送局記者 
藤岡しほり
2022年入局
経済・くらし取材を担当
ショート動画制作が趣味
得意料理はタイ料理の「カオマンガイ」

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