ヘルパンギーナって何?
夏かぜの1つで、幼い子どもがかかりやすい「ヘルパンギーナ」について、宮城県内では感染が急拡大しています。
6月25日までの1週間では、県全体の1医療機関あたりの患者数は14人。国の警報基準の6人を大幅に超えていて、過去5年間では最大の流行となっています。
ヘルパンギーナはどのような症状で、注意点はなんなのか。小児科医に詳しく聞きました。
(仙台局 伊藤奨記者)
川村和久 医師
仙台市青葉区の小児科医、川村和久さん。最近、発熱があって受診する子どもたちが、例年に比べてかなり多いといいます。その中でも、特にヘルパンギーナの患者が一番目立っているというのです。
ヘルパンギーナの症例
(どんな病気?)
Q。ではまず「ヘルパンギーナ」という病気は、どんな症状なのでしょうか。
A。ヘルパンギーナは喉に水ぶくれができるという病気なんです。喉がウイルスによって影響を受けて、水泡みたいものが出て、それによって喉の痛みが強くなるほか、高熱が出るというのが特徴です。普通の風邪のように、鼻水やせきはあまり出ません。
(大人は?)
Q。かかりやすい年齢としては何歳ぐらいでしょうか。
A。生まれてまもなくの子どもは免疫を持ってないわけですから、特に乳幼児がかかりやすいです。1歳ぐらいが最も多いと思います。一方、大人は既にどこかでヘルパンギーナにかかり、免疫を持っている場合が多く、症状が出にくいと一般的には考えられています。ただ、大人でもヘルパンギーナにかかったことがなければ症状が出ることはあります。
(症状はどれくらい続く?)
Q。症状の経過は?
A。個人差はありますが、熱は2、3日ほどで治まることが多いです。のどの痛みは、少なくても4、5日続き、あとは痛みが減ってくるというのが普通の経過です。
(リスクは脱水)
Q。ヘルパンギーナにかかることでどんなことが懸念されるのでしょうか。
A。のどが痛くて水分が取れず、脱水になるということが懸念されます。特に小さい子は母乳などが飲めなくなり、水分が足りなくなることがあります。夏に流行る病気ですが、気温が上がっている状況も水分を失う原因となります。
だから心配であれば、ともかく早めに病院を受診すると考えてもらうといいと思います。
ヘルパンギーナのウイルス
(感染経路は?)
Q。ヘルパンギーナの感染経路は何でしょうか?
A。飛まつ感染と接触感染です。しゃべったり泣いたりしてウイルスが飛んで、近くの子どもにうつるケースが多く、たとえば保育園や幼稚園といった子供たちの集団で広がるというのが特徴です。
(どうすれば防げる?)
Q。求められる感染対策はどういったことでしょうか。
A。新型コロナの感染が拡大していた時代と同じで、手洗い、そしてある程度の年齢の子どもならマスクの着用で防ぐという考え方になります。
Q。幼い子も同じ対策になりますか。
A。年齢が幼くてマスクを付けることが現実的には難しいこともあります。ですから、子どもの体調が悪くならないうちに、早めに小児科を受診するということを心がけていてもらえればと思います。
(もし感染したら?)
Q。感染した場合、どう対応すればいいでしょうか。
A。ヘルパンギーナのウイルスを直接殺すような治療薬はなく、対症療法になります。ですから、熱が高いときには過ごしやすい環境にする。状況によっては解熱剤を使うというのも1つの方法です。
それから、のどの痛みを訴えられないような幼い子どもについては、保護者が早く察知して、対応する必要があります。少なくても水分の補給に気をつけることが重要だと思います。
Q。感染した子どもがミルクや母乳を飲まない場合は、どう対応したらいいでしょうか。
A。のどが痛くて飲めない場合、家庭で工夫するというのは非常に難しいものがあります。そういう兆候が出たら早めに医療機関を受診することを考えてもらえばいいと思います。
(RSウイルス感染症も増加)
「ヘルパンギーナ」のほか、一般的には冬に流行するとされる「RSウイルス感染症」も患者が増加傾向にあります。
Q。「RSウイルス感染症」とはどんな病気なのでしょうか。
A。RSウイルスというのは、気管支炎を起こすウイルスというふうに考えてもらえばいいですね。普通のかぜの症状から始まり、せきがひどくなって熱が高く上がります。幼い赤ちゃんであれば、呼吸が苦しくなって、哺乳ができないこともあり、状況によっては入院するケースもあります。
感染対策ですが、ウイルスに対する対策はすべて同じで、手洗いやマスクの着用で防いでいくということになります。
【対応に困ったら・・・】
県は、夜間に子どもが発熱などの症状を訴え対応に困ったときに、看護師が電話で相談にあたる「県こども夜間安心コール」を設置しています。
電話番号は「#8000」または「022ー212ー9390」で毎日、午後7時から午前8時まで受け付けています。
仙台局記者 伊藤奨
2016年入局。
福井局を経て仙台局。現在は経済や文化などを担当。
自分も2人の子どもを育てていて、体調が大丈夫か心配です。