宮城県内の住宅の耐震化は?補助制度も活用を

今月1日に発生した能登半島地震の被災地では、多くの住宅が倒壊しました。宮城県内では、東日本大震災を受けて、津波の対策に目を向けていた人も多いかもしれません。今回は県内の住宅の耐震化がどのような状況になっているのか、取材しました。

(仙台放送局 内山太介)

宮城県沖地震踏まえ耐震基準見直し
住宅の耐震基準は、昭和53年に起きた宮城県沖地震を踏まえて、昭和56年に法律が改正され見直しが行われました。耐震基準を満たしている住宅の割合を示すのが耐震化率で、マンションやアパートなども含まれます。

住宅の耐震化率に地域差
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県内の各市町村の耐震化率を示した表です。最も高いのは仙台市で95%。次いで富谷市、塩釜市、名取市となっています。一方、50%台と低いのが丸森町、大衡村、大郷町で、七ヶ宿町は30%となっています。都市部やその周辺で耐震化率が高いですが、人口が少ない地域で耐震化が進んでいません。

耐震化 進まない理由は
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耐震化率が最も低い七ヶ宿町を訪ねました。山形と福島を結ぶ街道として、江戸時代に参勤交代の大名が泊まる宿場もあった「山中七ヶ宿街道」には、古い木造の建物が並んでいます。

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町の最新の統計でも住宅の耐震化率は38%。耐震化が必要な木造住宅は472棟にのぼります。なぜ、耐震化は進まないのでしょうか。

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町民
「費用がかかる、金銭的な面があるんじゃないか」

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町民
「この間の地震でも大丈夫だったから次も大丈夫だという考え方もあるので」

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町の担当者は、耐震化がなかなか進まない理由の一つに高齢化率が高いことをあげています。

七ヶ宿町 農林建設課 東根一課長
「耐震化が進まないのは、高齢者が多いことと、高齢化率が44.8%と高いということがあげられます。跡継ぎがおらず、自分たちの世代で終わりだという人も結構いますので」

町では、耐震基準が強化される前の昭和56年5月以前に建てられた木造住宅を対象にした支援制度の利用を呼びかけています。
七ヶ宿町の場合、8400円の自己負担で耐震診断ができ、改修工事には110万円まで補助を受けられます。

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耐震改修工事は100万円から300万円程度が一般的で、支援制度を使えば、費用を抑えることができます。
しかし、補助金を使って診断をしても改修までに至った件数は1件もなく、今年度は耐震診断すら1件も行われていません。

七ヶ宿町 農林建設課 東根一課長
「いままでが大丈夫だから今後も大丈夫ということでなく、耐震診断や耐震改修の補助事業をもっと町としてもPRしていかないといけないと思っています」

なぜ住宅の耐震化は必要か
一方、建物の耐震化に詳しい専門家は、昭和56年の耐震基準を満たしている住宅でも決して油断できないといいます。

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東北大大学院 前田匡樹教授
「繰り返す地震で建物にダメージが蓄積していて、どんどん弱っていく可能性があるので、決して安心してはいけない」

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前田教授は、東日本大震災のあと、県内では、おととしと3年前にも最大震度6強を観測する地震が起きていることを改めて思い返してほしいとしています。
そのうえで前田教授は、住宅の耐震化は地域を守ることにもつながると指摘します。

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東北大大学院 前田匡樹教授
「能登半島地震の被災地では、建物が倒壊したことが原因で緊急車両が通れなくなり、救助活動が難航し、地域全体に影響を及ぼすというようなことが起きています。
だから自分一人だけではなく、地域の皆さんの仲間、あるいは町、村を守る、みんなで災害を乗り越えられるような地域をぜひつくっていただきたいと思います」

耐震改修で利用可能な融資も
住民の声にもあったように、耐震改修工事をしたくても費用がかかるので、家を継ぐ人がいないとなると、二の足を踏む人もいると思います。
そういった費用負担の面で悩んでいる人向けの融資もあります。「住宅金融支援機構」や機構と提携している金融機関が設けている、60歳以上の人が耐震改修をする際に返済の特例がある融資です。機構に問い合わせると具体的な内容を確認することができます。
また、各自治体でも七ヶ宿町と同様の耐震診断、耐震改修の支援制度を用意しているほか、「宮城県建築士事務所協会」でも相談を受け付けているということです。
この機会にご家族で話し合ってみてはいかがでしょうか。


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仙台放送局 記者 内山太介
1996年入局
静岡局、名古屋局、福井局、新潟局、科学・文化部を経験
2022年8月から8年ぶりに仙台放送局
地震直後の輪島市で4日間取材しました。