冬の避難所 命を守るポイントは?(前編)

冬の寒い時期。
もし災害が起きて、避難をすることになったら、
あなたは安全に避難できますか?その備えはできていますか?
災害から命を守るため。
そして、災害から守った命を、その後の避難生活で決して失わないため。
NHK仙台放送局では「みんなで冬の避難シミュレーション(ふゆひな)」という
キャンペーンを展開して、皆さんに冬の避難のリスクや注意点をお伝えしています。

2023年12月、白石市の協力のもと、「冬場の避難所」を想定し、避難所を運営するワークショップを行いました。
会場となった宮城県白石市の東中学校は、災害が起きた際、避難所に指定されています。この日は中学校の生徒や市の職員、自主防災組織のメンバーなど24人が参加。各地で冬の避難所運営の訓練を行っている根本昌宏さんの監修のもと、「冬の避難」を体験しました。

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冬の避難に室内履きは必須
まず、自宅から避難所への持ち物で、意外と忘れがちなものがあると言います。

(手嶌真吾アナウンサー)
避難する時を想定して体育館にやってきましたが、
私の格好・持ち物で足りない物があります。
それは何だと思いますか?

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(参加者)
時計。毛布とか。
(手嶌アナウンサー)
実は私いま、足がとても寒いです。かなりしびれています。

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(根本さん)
室内履きを脱いで、足を床につけると体感いただけると思います。

冬の避難の際、 室内履きを持参し、 床の冷たさから 足元をしっかり守る。
室内履きがないと、体育館の床に付着しているウイルスや細菌を自分の足につけてしまいます。これが感染症の原因になることも。
室内履きは避難グッズとして持ち込んでいただきたいと思います。

避難所でまず取り組むべきは“トイレ”
次に停電・断水の状況を想定し、避難所を立ち上げることにしました。

(手嶌アナウンサー)
避難所を作るにあたって、何を準備しなくてはいけない?
(参加者)
ブルーシートとか。温かい食べ物とか。
(根本さん)
寝る所は少し我慢できます。食べるものもちょっと我慢できます。
しかしトイレは我慢できますか?できないですよね。
ですので、全員が安全に安心して使えるトイレを作りたい。実はこれが一番初めに考えたいことです。

生徒たちは、実際に学校に備蓄してある簡易トイレを組み立て、吸水シートにペットボトルの水を垂らして、効果を確かめました。

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出来上がった簡易トイレは、どこに設置すればよいのでしょうか。参加者ひとりひとりに考えてもらいます。

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(参加者)
誰からも見えない所がいいのでは?

体育館の隅や体育館の渡り廊下など、いくつかの場所が上がった中で、いちばん多かった意見が、体育館からすぐの男子更衣室。実際に設置してみました。

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この場所について、根本さんの評価は?

(根本さん)
この避難所の配置だと、そこをトイレにするのはとてもいいと思います。
体育館から移動距離が少なく、ある程度視線が隠れる。
また、段差がないため、入口までは、車いすの方でも行くことができると思います。

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トイレに関して、根本さんは、冬の避難で知っておきたい「2つのリスク」があると言います。

(根本さん)
エコノミークラス症候群に注意です。
トイレに行きたくないとき、人が一番我慢するのは水を飲むこと。

まず指摘した「エコノミークラス症候群」。
水分を十分に取らず、長時間足を動かさないでいると、
足の深部で血液が固まり、それが血流にのって肺に詰まることで、
胸の痛みや呼吸困難を引き起こします。

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じっとしている人もいる避難所。
トイレの環境が悪いと、「トイレに行きたくない」と感じるようになり、
水分をとらなくなります。
ただでさえ冬は水分摂取を控えがちになる中で、エコノミークラス症候群のリスクが高まるそうです。

(根本さん)
誰もが行けるトイレを作る。
誰もが水を飲めるようにする。
これはエコノミークラス症候群の予防に直結します。

また、冬場の避難所では、氷点下の屋外に簡易トイレを設置する場合、「ヒートショック」のリスクも指摘されています。
「ヒートショック」とは、急激な温度変化によって脳卒中や心筋梗塞などを引き起こす現象です。
簡易トイレの設置場所を考える際、これらのリスクも考慮する必要があります。

“冬の避難”をキーワードに備えを
根本さんは、「冬」という寒さが厳しい季節の災害を想定し、備えを見直してほしいと訴えています。

(根本さん)
冬の避難をキーワードにして、単に寒さだけでなく、何に苦労するのだろうと体験から感じていただき、今できることを進めてほしい。

「冬の避難に必要な備え」は、こちらのWEBページでも紹介しています。
非常用持ち出し袋 冬の避難に必要な備えは? | 知っトク東北|NHK

 

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