狭山市の大学でNHK大学セミナーを開催しました
6月8日(木)、「NHK大学セミナー in 西武文理大学」を開催しました。
「NHK大学セミナー」とは・・・
NHKの番組制作者や出演者などを講師とする講演型のイベントで、2003年度から全国の大学で実施しています。大学教育に資するNHKの専門性を活かしたセミナーを提供するとともに、学生の皆さんに公共放送NHKそして番組について知っていただこうというものです。
今回は、西武文理大学の看護学部3年生を中心とした、70人を超える学生のみなさんに参加してもらいました。
テーマは次の通りです。
100カメ“特別編”『産科病院で働く』
番組をご覧になったことがない方のために、まずは「100カメ」についてご紹介します。
「100カメ」はNHK総合テレビで火曜日の午後11時から放送している番組です。気になる場所に100台の固定カメラを設置して人々の生態を観察するドキュメンタリーで、カメラを意識しない自然な姿や、さりげないけれど決定的な瞬間を見ることができるのが魅力の番組です。
そして去年、大きな反響をよんだ100カメ「赤ちゃん誕生」。年間2,800件ものお産が行われる産科病院で、新たな命が次々に誕生する瞬間に密着しました。取材をさせていただいた病院に勤める助産師の新井さん(下の写真左)と、番組を制作したNHKの小林ディレクター(下の写真右)が登壇し、これから看護師や助産師を目指す学生の皆さんと、番組映像を活用しながらケース・スタディも交えたセミナーを行いました。司会はNHKさいたま放送局の今村キャスターです。
新井さんは助産師になって28年、職場では若手スタッフの指導役も務めています。
小林ディレクターは社会人8年目。100カメでは産科病院を舞台に1,800時間もの映像を撮影し、番組にまとめました。
まず100カメのリアルな話からトークが始まりました。
なぜ「赤ちゃん誕生」をテーマに選んだのか?
小林ディレクターはその理由を、「撮影を行った去年5月はコロナの感染対策も非常に厳しく、医療従事者の方々にとっては本当に過酷な状況が続いていました。しかしそんな大変な状況の中でも、産科病院は毎日が「おめでとう」で溢れている現場でもあります。そこで働いている人たちが今どんな思いで現場に立っているのか知りたいと思ったのが取材のきっかけでした」などと話していました。
撮影時には万全の感染対策を行いましたが、同時に撮影スタッフの現場への立ち入りを最小限に抑えられる100カメのスタイルだからこそ実現した番組かもしれないと振り返りました。
では、100台もの小型の固定カメラを、病院のどこに設置したのでしょうか。
病院を通じて患者の方々から撮影のご了承をいただき、分娩室や、生まれたばかりの赤ちゃんが入る新生児室、助産師ステーションや職員の方々の食堂、休憩室など、ありとあらゆる場所にカメラを置かせていただきました。
職場に100台ものカメラが回っている状態について、撮影された側である新井さんは「もちろん、最初はカメラが気にならないということはありませんでした。でもそのうち、気にしている余裕がなくなって、そのままの日常を撮ってもらったので本当にノンフィションなんです。」と話してくれました。
そして、新井さんからは助産師として働くリアルな話も聞きました。
仕事のやりがいについて、話したら長くなると前置きをしつつ「新しい命が育まれ、大きくなり、命がけでこの世の中に生まれてくる。そしてお母さんが命がけで出産する。それをサポートして応援し、そして心の底から“おめでとうございます”と言える助産師という仕事にやりがいを感じないはずがないと思っています。私にとっては助産師という仕事しかないと思っていて、この職業に出会えて人生や生き方が変わりました。」などと話してくれました。さらに参加した学生のみなさんに向けて、「きっとみなさんもそういう職業に出会えるはず。」とも伝えました。
また、新井さんが助産師の最大の使命は「無事に安全に、そして元気に退院していただく。そこは守らなければならなりません。」と強く語っていたのが印象的でした。
セミナーは楽しい話、心に響く話、勉強になる話など、ここには書ききれないほど盛りだくさんの内容でした。セミナーの最後に講師の2人から、看護師を目指す学生にメッセージがありました。
【小林ディレクター】
仕事をしていると色々と思うことが出てくることもあります。でも今は、「私にはこの仕事なんだ」と思って、勉強しているのだと思います。その初心を忘れずに頑張ってください。
【助産師 新井さん】
自分の心と体が健康じゃないと生きていけないし、人を応援することもできません。まずは自分自身の心と体を大事にしてください。そこが一番伝えたいことです。色んな人と出会って、色んな経験をして、色んな話をして、たくさん喜び、悲しみ、失敗して、ぶつかったり、泣いたりして、そういう心が揺さぶられるような経験をしてほしいです。そうすることで自分の進むべき道が分かってくるのではないか、未来が変わってくるのではないかと思います。もちろん、進んだところが自分の居場所っていうこともあります。そんなに気負わないで自分の道を進んでほしい。
今回の大学セミナーの様子の一部を、NHKさいたま放送局のFMラジオ番組「ひるどき!さいたま~ず」(毎週水~金 午前11時から正午まで)で6月16日(金)に放送します。参加した学生さんたちのインタビューもお伝えします。ぜひお聴きください。
(左から小林ディレクター、助産師の新井さん、今村キャスター)