「デジタル時代のNHK懇談会」中間報告
 
1.懇談会設立の経緯
2.「デジタル時代のNHK懇談会」の基本的立場
3.公共放送NHKへの提言
4.最終報告に向けて

 

2 ■「デジタル時代のNHK懇談会」の基本的立場
(1)公共放送と民主主義
 公共放送は、健全で、多様・多彩な活力のある民主主義社会には不可欠であり、NHKがそうした公共放送として再生することが何より大切である。
 外部からの不当な干渉を排し(自主)、みずからを律すること(自律)は、公共放送NHKの生命線であり、組織・制度や職能を明確にするとともに、常に点検を怠らない努力が必要である。

(2)NHKの公共性
 受信料を主財源とするNHKは、視聴率や話題性を優先し、結局は画一化に陥る競争に与することなく、人々の暮らしと社会参加に必要な有意義で多彩な情報を、社会全体に公平に伝える公共的役割を担っている。
 放送の公共性は、ニュースや報道番組ばかりではなく、娯楽番組、教育番組、教養番組においても強く自覚されなければならない。人々をつなぎ、地域や社会の一体感を醸成し、また多様な価値観や文化の形成に寄与する公共放送の役割は、経済的・地理的・文化的格差が深刻な社会問題となる現在、ますます重要になっている。

(3)受信料の意義
 NHKの受信料は、個々の番組やサービスの単なる「対価」ではない。
 視聴者が受信料を支払うのは、NHKに質が高く楽しく、災害時などでも信頼できる放送を望むと同時に、このようなさまざまな番組が多様な意見や価値観の行き交う公共空間の形成と育成につながり、ひいてはそのことが社会や文化の成熟をもたらすと期待するからである。
 NHKはこうした社会的コストを担う視聴者の期待を真摯に受け止め、何よりもまず目に見える改革と番組の質的向上を通じて信頼を回復するとともに、受信料の意義を視聴者とのあいだで再確認し、その契約率と収受率を高めていくべきである。

(4)デジタル時代の放送と通信
 近年の放送と通信の接近は「伝送容量の拡大」と「端末機器の多様化・高機能化」に象徴的に見て取ることができるが、これを公共性を旨とする放送の本質や使命の変化と見誤ってはならない。
 公共放送NHKはその技術的物珍しさや短期的収益性に惑わされることなく、直接的効果より間接的効果、経済的効果より社会的効果を担う役割を自覚し、より確かな放送技術や番組・放送サービスの開発と普及を使命としなければならない。