放送法と「政治的公平」の解釈とは

放送法とは

放送法は1950年に制定され、放送や放送事業者に関する規定などが定められています。

最初に、法律の目的として「放送を公共の福祉に適合するよう規律し、その健全な発達を図ること」とうたわれています。

また、「放送番組は、法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人にも干渉され、または規律されることはない」 とされています。

4条では、放送事業者が番組の編集にあたって守るべきこととして、「公安及び善良な風俗を害しないこと」、「報道は 事実を曲げないですること」、「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」とともに、「政治的に公平であること」と定められています。

この「政治的公平」の解釈をめぐる政府の答弁や統一見解などが国会で議論となっています。

「政治的公平」の解釈は

放送法が定める「政治的公平」の解釈をめぐっては、2015年5月12日、当時の安倍政権で総務大臣だった高市氏が、参議院総務委員会で、「政治的公平」は1つの番組ではなく番組全体を見て判断するとした従来からの考え方を示しています。

その上で「これまでの解釈の補充的な説明」として、1つの番組のみでも▼選挙期間中などに、特定の候補者のみを相当の時間にわたり取り上げる特別番組を放送するなど、選挙の公平性に明らかに支障を及ぼす極端な場合は、一般論として 政治的に公平であることを確保しているとは認められないとしています。

また、▼国論を二分するような政治課題について、一方の政治的見解のみを取り上げ、それを支持する内容を相当な時間にわたり繰り返す番組を放送するなど、不偏不党の立場から明らかに逸脱している極端な場合にも、同様に政治的に公平であることを確保しているとは認められないと答弁しています。

こうした答弁を踏襲する形で、政府は、「政治的公平」の解釈をめぐる政府統一見解を2016年2月に示しました。
見解では、放送法4条で定められた「政治的公平」が確保されているか、どう判断するかについて、「1つの番組ではなく、放送事業者の番組全体を見て判断するとした、従来からの解釈には何ら変更はない」としています。

その上で、1つの番組のみでも、一般論として「政治的公平」を確保しているとは認められない極端なケースについて、 2つの例を挙げています。

1つ目は、▼選挙期間中などに、ことさらに特定の候補者のみを取り上げる特別番組を放送する場合のように、選挙の公平性に明らかに支障を及ぼすと認められる場合です。

2つ目は、▼国論を二分するような政治課題について、一方の政治的見解のみを取り上げ、それを支持する内容を相当の時間にわたり繰り返す番組を放送した場合のように、不偏不党の立場から明らかに逸脱していると認められる場合です。
そして「『番組全体を見て判断する』という、これまでの解釈を補充的に説明し、より明確にしたものだ」としています。

こうした政府側の解釈について、立憲民主党など野党側は、「『補充的な説明』というが、新しい意味合いが加わっている。当時の官邸が政治的圧力をかけ報道の自由を奪おうとしたのではないか」などと批判しています。

これに対して松本総務大臣は「1つの番組でも極端な場合には一般論として政治的に公平であることを確保しているとは 認められないことは、昭和39年の参議院逓信委員会で政府参考人が答弁している。高市大臣の答弁は、従来の解釈を変更するものとは考えておらず、放送行政を変えたとは認識していない」と述べました。