防衛白書の素案判明 ロシア軍事侵攻の項目を新設 重大な懸念

ことしの防衛白書の素案が明らかになり、新たにロシアによるウクライナへの軍事侵攻に関する項目を設け、同じような事態がインド太平洋地域で起きることを許してはならないとして、重大な懸念を持って注視していく姿勢を強調しています。

素案では、新たに設けたロシアによるウクライナへの軍事侵攻に関する項目で、力による一方的な現状変更は断じて認められず、国際秩序の根幹を揺るがす行為で、同じような事態がインド太平洋地域で起きることを決して許してはならないとしています。

そのうえで、ロシアの国際的な影響力や中国との協力に変化が生じる可能性があり、アメリカと中国の関係にも影響を与えかねないとして、重大な懸念を持って注視していく姿勢を強調しています。

また、台湾をめぐり、中国との軍事バランスが中国側に有利な方向に変化しており、一層の緊張感を持って動向を注視するとしています。

北朝鮮については、ことしに入ってICBM=大陸間弾道ミサイル級を含む弾道ミサイルの発射を極めて高い頻度で繰り返し、挑発を一方的にエスカレートさせているとして、重大かつ差し迫った脅威と位置づけています。

一方、年末までに改定する方針の国家安全保障戦略などについてはいわゆる「敵基地攻撃能力」も含め、あらゆる選択肢を議論するとともに、防衛関係費を増やすなど防衛力強化の加速に向けた取り組みを進めているとの記述にとどめています。

防衛白書は、ことし7月にも閣議で報告されて公表されます。

ロシア軍 南部や黒海でも攻勢強める 経済に打撃与えるねらいか

ロシア軍は、ウクライナ東部2州で攻勢を強める一方、南部の港や黒海の島をめぐり、ウクライナ軍との間で激しい攻防を繰り広げています。軍事侵攻が長期化する見通しが強まる中、ロシアがウクライナ南部の黒海沿岸の支配も広げ、ウクライナの海上輸送路を断ち切ることで、経済に打撃を与えるねらいもあるとみられます。

ロシア国防省は10日、ウクライナ各地の武器庫や指揮所など74か所の軍事施設を空爆して破壊したとするとともに、ウクライナ東部のルハンシク州ポパスナをロシア軍の支援を受けた親ロシア派の武装勢力が掌握し、支配地域をルハンシク州の境界線まで拡大したとしています。

さらにロシア軍は、黒海に面した南部の港湾都市オデーサにも9日、ミサイルで攻撃するなど、南部や黒海でも攻勢を強めています。

オデーサ州の沖合30キロ余りに位置するズミイヌイ島では、ことし2月から占拠を続けるロシア軍と奪還を目指すウクライナ軍との攻防が激しさを増しており、ロシア国防省のコナシェンコフ報道官は10日、「ウクライナ軍が島を奪還しようとしたが、戦闘機4機やヘリコプター10機、無人機30機などを失い、大失敗に終わった」と主張しています。

ロシア軍としては、東部2州でウクライナ側の抵抗を受け戦闘が長期化する中、南部にも支配地域を広げることで、ウクライナの海上輸送路を断ち切り、経済的な打撃を与えるねらいもあると見られています。

さらにロシア軍は、ウクライナの隣国のモルドバから一方的に分離独立を宣言しロシア軍が駐留する沿ドニエストル地方にまで、支配地域を広げることも視野に入れているとみられ、ロシア軍の動きにモルドバ政府も警戒を強めています。