緊急事態宣言8道県追加
重点措置4県適用へ

新型コロナウイルス対策で、政府は、緊急事態宣言の対象地域に、北海道、宮城、岐阜、愛知、三重、滋賀、岡山、広島の8道県を追加するほか、まん延防止等重点措置を、高知、佐賀、長崎、宮崎の4県に新たに適用する方針で、25日、専門家に諮ったうえで、正式に決定することにしています。

政府は、合わせて29の都道府県に、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置を出して、新型コロナウイルス対策を強化していますが、各地で感染状況が悪化しています。

菅総理大臣は24日、関係閣僚と対応を協議したあと「『デルタ株』の強い感染力の中で感染を抑えることができるように徹底して対応していきたい」と述べました。

政府は、東京や大阪など13都府県に出されている宣言の対象地域に、北海道、宮城、岐阜、愛知、三重、滋賀、岡山、広島の8道県を追加するほか、まん延防止等重点措置を、高知、佐賀、長崎、宮崎の4県に新たに適用する方針です。

期間は、いずれも27日から、これまで対象となっている地域と同じく、来月12日までとする方針で、25日、感染症などの専門家でつくる「基本的対処方針分科会」に諮ることにしています。

そして、了承が得られれば、国会への事前の報告と質疑を経て、対策本部で正式に決定することにしています。

政府の方針通り決定されれば、宣言の対象地域は21都道府県に、重点措置の適用地域は12県となります。

菅首相 夜9時めどに会見

新型コロナウイルス対策をめぐり、政府は25日、午後6時から、対策本部を開き、その後、午後9時をめどに、菅総理大臣が記者会見を行うと発表しました。

菅総理大臣は、記者会見で、感染状況の悪化を受けて、緊急事態宣言の対象地域を拡大することなどを説明し、国民に理解と協力を呼びかける見通しです。

8道県 宣言や重点措置適用を要請

加藤官房長官は、24日の記者会見で「まん延防止等重点措置を実施している16道県のうち、今月19日に北海道から、20日に愛知県から、21日に三重県、岐阜県から、きのう広島県から、きょう滋賀県から、政府に対し、緊急事態措置の適用について検討するよう要請がなされた。また、18日に宮崎県から、きのう岩手県から、まん延防止等重点措置の適用の要請がされている」と述べました。


広島 湯崎知事「医療提供体制 危機的な状況」

広島県の湯崎知事は24日の記者会見で「お盆休みでの県外往来などの人流を抑制することができなかった。このことに起因すると考えられる感染の急拡大が先週より起こっていて、本県の医療提供体制が今後、危機的な状況になることが懸念される」と述べました。
そのうえで、「さらなる人流の抑制を実施し、感染拡大を防止する必要がある。そのための法的な実行力を含めたさらなる強い対策を早急に実施する必要がある」と述べました。

滋賀 三日月知事「重点措置 効果見えない」

滋賀県の三日月知事は、24日県庁で開いた会見で「『まん延防止等重点措置』が滋賀県に適用されて2週間以上たつがいまだ効果が見えない。重点措置の対象地域を越えて全県的な対応が必要だ」と述べました。
さらに「県内ではすでに1000人を超える自宅療養者が出ており、これ以上感染が拡大し医療提供体制が崩壊しないようより強い措置が必要だ」と述べ、今後、宣言の対象地域に含まれれば県内の商業施設などに対して休業の要請なども含めて対応を検討する方針です。

専門家 “感染 減少局面に入らず 都道府県主体となり対策を”

東京都内では24日、新たに4220人が新型コロナウイルスに感染していることが確認され、1週間前の火曜日より157人減り、2日連続で前の週の同じ曜日を下回りました。

これについて、厚生労働省の専門家会合のメンバーで国際医療福祉大学の和田耕治教授は「東京都では、さらなる急増ということはある程度抑えられているが、今も減少局面には入っていない。検査の陽性率も2割を超えて高いままで、検査ができていない感染者も多くいると思われる。横ばいのような状況が続いても、感染者や重症者の数が多数積み上がってきて、医療の状況は改善しないので、感染者を減少傾向に持っていかないといけない」と指摘しました。

また、全国の状況については「これまで感染状況が比較的落ち着き、対策のガードが下がっていた地方で、お盆の帰省の影響が出始め、急速に感染が広がっている。医療機関の資材が不足しているところも出るなど、医療体制が厳しくなっているが、全国で拡大している中で、ほかの県から支援をもらうことは難しい。知事のリーダーシップによって、早めに接触機会を減らすための強い対策を打つことが重要だ」と述べました。

協力には なぜ“宣言”なのか伝えること重要

こうした中で、緊急事態宣言などの対象地域の拡大が検討されていることについて、和田教授は「納得をえて対策に協力してもらうため、ただ緊急事態宣言を出すのではなく、なぜ対策を取らなければならないのか伝えることが重要だ。医療体制の拡充には限界があるため、都道府県が主体になって、1日も早く感染自体を減らしていくことが何より求められている」と指摘しました。

“デルタ株”登場で変わった感染対策 改めて確認を

そして、個人に求められる対策について「感染が広がってからの1年半で各個人で感染対策のルールを決めている部分があると思うが、デルタ株の登場でそうしたルールが変わってしまった。他の人とマスク無しで話すような場面や、集まる場面、食事をする場面などを徹底的に避けられているのか、改めて確認してほしい」と訴えました。

自宅療養者が急増の危機的状況

都内では新型コロナウイルスの医療体制が危機的な状況になり、自宅療養者が急増しています。
往診にあたる医師のグループでは、先週から酸素の投与を行う医療機器が、一時的に足りなくなり、往診を断らざるをえないケースも出てきています。

パラリンピックが開催される東京では、感染拡大に歯止めがかからず、入院患者は23日時点で初めて4000人を超え、自宅療養者も2万5000人に上っています。

首都圏を中心に多くの医師が登録する「ファストドクター」では、都の委託を受けて自宅療養者の往診を行っています。

このうち、都内の20代の男性は、同居する女性とともに感染し、保健所から体調確認の電話がかかってくるものの、電話のあとに血液中の酸素の数値が90%前半に低下することもあるということです。

男性は「保健所からの電話は安心できるが、それ以外の時間に異変が起きないか不安だ」と話していました。

また、50代の妻と60代の夫は家庭内で感染し、妻は酸素の値が90%前半に低下し、肺炎の疑いもあり、保健所が入院の調整を進めています。

1週間余りたっても入院先は見つからず、往診した医師が医療機器を使って酸素を投与する対応を行っていました。

このように自宅療養者への対応を続けていますが、先週からは酸素の投与を行う医療機器が一時的に足りなくなり、往診を断らざるをえないケースも出てきているということです。

こうした際、命を守るため、救急車を呼んで緊急の対応を依頼しているということです。

「ファストドクター」の代表、菊池亮医師は「本来入院すべきなのに自宅での生活となることで、肺炎を起こしている人を診る機会が増えています。一方で、酸素濃縮装置が不足していて、在庫件数までしか対応できず、非常に厳しい状況です。オリンピック・パラリンピックで人流が増えることを懸念していて、感染を抑えるために協力してほしい」と話しています。

20代男性 血中酸素の数値低下でとても不安な思いに

東京都内に住む20代の男性は、今月13日に新型コロナウイルスに感染していることが分かったということです。

同居する女性も感染が確認され、1週間前から自宅療養を続けています。

男性は39度近くまで発熱し、解熱剤を使って37度台にまで下げたものの、せきや息苦しさがあるということです。

男性の元には、保健所から体調を確認する電話が定期的にかかってくるものの、電話のあとに血液中の酸素の数値が90%前半に低下したこともあるということです。

男性は「保健所からの連絡を基本的に待つしかなく、24時間後に連絡すると言われても、その間に血液中の酸素の数値が低下してくると、とても不安な思いになります」と話していました。

50代の妻と60代の夫が家庭内感染

東京都内に住む50代の女性は、今月12日に新型コロナウイルスに感染していることが確認されました。

血液中の酸素の数値が90%前半に低下し、肺炎の疑いもあることから、保健所が入院の調整を進めていますが、1週間余りたっても入院先は見つかっていないということです。

女性は時折、激しくせきこんでいて、往診した医師が医療機器を使って酸素を投与する対応を行っていました。

また同居する60代の夫も、のどの痛みやけん怠感、味覚の異常を訴えていました。

このため、医師が抗原検査を行ったところ、夫も陽性の結果となり、保健所に連絡を行ったということです。

家庭内で夫婦がともに感染した形となり、その後も体調の異変を見逃さないよう、看護師が数時間おきに電話などで確認することになりました。