官邸“難色”おととしにも
学術会議人事への関与の経緯

「日本学術会議」の会員人事をめぐり、おととしの会員補充人事の際にも、総理大臣官邸から学術会議が挙げた候補者に難色が示され、2年にわたり欠員の状態になっていたことが学術会議の複数の元幹部への取材で分かりました。

「日本学術会議」の会員の補充人事をめぐっては、4年前の平成28年夏、選考の過程で学術会議側が挙げた候補者に総理大臣官邸から難色が示され、3人が欠員の状態になっていたことが明らかになっています。

その後、おととし平成30年の補充人事の際にも同じように官邸が難色を示していたことが、会議の複数の元幹部への取材で新たに分かりました。

それによりますと、おととし9月、会員の1人が70歳の定年を迎えたため欠員の補充が必要になり、学術会議側が候補者の名前を伝えたところ、官邸から難色を示され、ことし秋まで2年にわたって欠員の状態になったということです。

会員人事をめぐっては3年前の平成29年、新たに会員となる105人の候補者を決める前の段階で官邸から選考状況について説明を求められ、学術会議の当時の会長だった東京大学の大西隆 名誉教授が定員の105人を上回る110人余りの名簿を官邸に示していたことも明らかになっています。

一方で元幹部によりますと、京都大学の山極壽一前総長が会長だったことしの会員人事の際には、3年前と同じように官邸から定員を上回る候補者の名簿を示すよう求められましたが、学術会議側が応じなかったことが分かりました。

学術会議側はことし8月31日に定員と同じ105人の候補者を推薦しましたが、菅総理大臣はこのうち6人を任命しませんでした。

元幹部の1人は「4年前の補充人事の対応をきっかけに官邸が学術会議の人事に介入するようになった。選考状況を説明するのは官邸の顔を立てるための対応だったと思うが、それがうまいように使われ官邸が権限を行使する事態になった。あってはならないことだ」とと話しています。

学術会議人事への官邸の関与の経緯

「日本学術会議」の会員人事をめぐっては今回の任命拒否以外にも少なくとも4回、総理大臣官邸が関与していたことが学術会議の複数の元幹部への取材で明らかになっています。

1 平成28年の補充人事

4年前の平成28年夏、3人の会員が70歳の定年を迎えたため、欠員の補充が必要になり、幹部らでつくる選考委員会で候補者を選んだということです。

その選考過程で総理大臣官邸からの求めに応じ、学術会議側が、推薦することが有力になっていた3人だけではなく、1つのポストに2人ずつ合わせて6人の候補者を示したところ、このうち会議側が推していた2人について、官邸から難色が示されたということです。

会議側は候補者の差し替えに応じず3人が欠員の状態になったということです。

これについて元幹部の1人は「官邸が選べるように複数の候補者を挙げることについて当初から疑問を感じていた」と述べました。

当時の学術会議の会長だった東京大学の大西隆名誉教授は「官邸側に難色を示され驚いた。候補者は人物的に申し分ない人だと思っていた。苦い経験だ」と述べました。

2 平成29年の交代人事

「日本学術会議」は210人の会員からなり、任期は6年で3年ごとに半数が交代します。

3年前の平成29年、新たに会員となる105人の候補者を決める前の段階で、官邸から選考状況について説明を求められ、当時の会長だった大西名誉教授が定員の105人を上回る110人余りの名簿を官邸に示したということです。

官邸からは候補者について質問や意見が出されましたが、最終的には学術会議側が希望していた105人の候補者を推薦し、全員が任命されました。

これについて大西名誉教授は「選考過程で官邸側に説明するのは適切ではないという意見もあるが、それによって推薦する候補者を変えることにはならない。学術会議は政府機関であり、任命権者への説明は必要だったと考えている」と述べました。

3 平成30年の補充人事

平成29年10月からは大西名誉教授に代わって京都大学の山極壽一 前総長が学術会議の会長を務めました。

そして、おととし9月(平成30年)、会員の1人が70歳の定年を迎えたため再び欠員の補充が必要になり、学術会議側が候補者の名前を伝えたところ、4年前と同じように官邸から難色を示されたということです。その理由について説明はなく、ことし秋まで2年にわたって欠員の状態になったということです。

4 ことしの交代人事

ことしの会員人事の際にも3年前と同じように官邸から105人の定員を上回る候補者の名簿を示すよう求められましたが、学術会議側は応じなかったということです。

そして学術会議側はことし8月31日に定員と同じ105人の候補者を推薦しましたが、菅総理大臣はこのうち6人を任命しませんでした。

元幹部の1人は「4年前の補充人事の対応をきっかけに官邸が学術会議の人事に介入するようになった。選考状況を説明するのは官邸の顔を立てるための対応だったと思うが、それがうまいように使われ官邸が権限を行使する事態になった。あってはならないことだ」とと話しています。